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【株式・為替相場展望】

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■米利上げ開始時期を巡る思惑が交錯してモミ合い

「8月10日〜14日」


8月10日〜14日の株式・為替相場は引き続きモミ合い展開を想定する。前週末7日の米7月雇用統計を通過して日本株は年初来高値更新の期待も高まるが、米7月雇用統計を受けて米国株は下落、為替はドル安・円高方向とやや悩ましい展開となった。国内主要企業の4〜6月期業績発表がほぼ一巡し、多くの投資家が盆休みに入ることもあり、米利上げ開始時期を巡る思惑が交錯して様子見ムードを強めそうだ。

 前週6日の取引時間中に日経平均株価が2万817円48銭まで上昇し、6月24日の2万952円71銭に接近した。そして7日の米7月雇用統計という重要イベントを通過したことで、今週は日経平均株価の年初来高値更新への期待が高まる。日経平均株価が年初来高値を更新すれば、売り方の買い戻しを誘って上げ足に弾みがつく可能性もあるだろう。

 しかし米7月雇用統計を受けて米国市場はやや悩ましい展開となった。米国株はダウ工業株30種平均株価、S&P500指数、ナスダック総合指数とも揃って下落した。ダウ工業株30種平均株価はほぼ4年ぶりの7日続落となった。

 米7月雇用統計で非農業部門雇用者増加数は前月比21.5万人増加と市場予想をやや下回ったものの、9月の利上げ開始が意識された形で調整色を一段と強めた。

 一方で米10年債利回りは2.1%台に低下し、外国為替市場のドル・円相場は米7月雇用統計発表直後に1ドル=125円台に円が下落する場面があったが、その後は一転してドル売り・円買いが優勢になり1ドル=124円台前半までドル安・円高方向に傾いた。NY原油先物価格も下落した。

 そしてCME日経225先物(円建て)は2万650円に下落した。このため週初の日本株はやや軟調なスタートとなりそうだ。国内主要企業の4〜6月期業績発表がほぼ一巡し、投資家の多くが盆休みに入ることもあり、米利上げ開始時期を巡る思惑が交錯して様子見ムードを強めそうだ。日経平均株価は6日の高値を抜けなければレンジ相場が一段と意識されることになる。

 その他のリスク要因として、国内では安保法案問題や戦後70年談話を巡る安倍内閣の支持率低下、海外では中国経済の減速や中国・上海株の動き、そして原油価格を中心とする商品価格の下落などにも注意が必要となる。

 株式市場での物色動向としては、市場予想を上回る4〜6月業績や通期予想増額修正を発表した銘柄に対する個別物色が強まりそうだ。そしてスマホ関連が急速に減速感を強めただけに、引き続きインバウンド需要関連やマイナンバー制度・サイバーセキュリティ関連などが注目されそうだ。また7日に発表されたJPX400構成銘柄入れ替えに関連した売買も活発化しそうだ。

 為替に関しては、日米欧の金融政策の方向性の違いを背景に、大勢としてドル高・円安方向の流れに変化はないが、引き続き米国の主要経済指標や要人発言も睨みながら利上げ開始時期を巡る思惑が交錯し、ドル・円相場もモミ合い展開だろう。

 その他の注目スケジュールとしては、10日の日本6月国際収支、7月景気ウォッチャー調査、11日のドイツ8月ZEW景況感指数、12日の中国7月小売売上高・鉱工業生産・固定資産投資、13日の日本6月機械受注、米7月小売売上高、14日のユーロ圏4〜6月期GDPなどがあるだろう。

(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR=アナリスト 水田雅展)

  michi.jpg 《Eimei「みちしるべ」》


(8月10日から8月14日の週)

米雇用統計通過。
非農業部門雇用者数は21,5万人増で着地。
事前予想は22万人程度だったのでやや下回ったが、20万人台は確保。
失業率は5.3%で悪くない。
背景は小売り関連の増加。
これを受けて9月利上げ観測が復活。
株式市場は嫌気した格好だが、悪くはない筈。
そして、あまり雇用統計を気にしなくなった傾向も悪くはない筈。
一方で全体の84.7%が通過した日本企業の4〜6月決算。
第1四半期売上高は前年同期比4.8%増、経常利益は同23.7%増、純利益は同27.7%増。
通期売上高は前期比2.7%増、経常利益は同7.7%増、純利益は同14.0%増。
相変わらず2ケタ増益で推移。
第1四半期は突出して良いように見えるのは気のせいだろうか。
あるいはいつものように慎重な気分を通期は反映しているに過ぎないのだろうか。
因みに欧州企業の4〜6つj機は7.1%の増益。
特に金融関連が好調というのがやや皮肉だが悪くはない。
2015年は全体で8.5%増益の見通し。
これも悪くない。
悪そうなのはアメリカ企業の業績。
4〜6月の純利益は1%台の低い伸び。
2015年通期でも1%台との観測。
背景はエネルギー関連の軟調。
中国景気の減速での原油価格の下落の影響が大きいという。
日欧VS米中の明暗の構図は鮮明になってこようか。

マルチメディア相場、金融立国相場、債権大国国相場、IT相場。
アベノミクス相場というのもありますが、株式市場というのは、シナリオチックなネーミングを好む。
株式市場は、資本市場という場であるとともに世相を色濃く反映する場所。
だからこそ情緒的なネーミングが幅を利かせるのかも知れない。
最近、市場では「新・産業革命」という言葉が聞かれることが多くなった。
2015年4月にDIAMアセットマネジメントが「DIAMニッポン新産業革命ファンド」という投信を設定。
それによると・・・。
「新産業革命」とは、先端技術がもたらす新しい商品・サービスによって社会が大きく変化すること。
「次世代技術革命」・「エネルギー 革命」・「情報通信革命」等を総称したもの。
このファンドは「新産業革命」をリードすると考えられる先端技術や商品・サービスなどを持つ有望企業に投資するという。
株式投信は比較的先の、未来のテーマを先取りすることが多いもの。
そしてよく見てみると、日本が得意とするテーマが散りばめられたのが「新・産業革命」。
意外と良いネーミングなのかも知れません。
そして派遣や中途採用は活発化していてIT・技術系の時給は過去最高を更新。
派遣社員の時給は過去2年もの間、前年同月水準を上回って推移している。
背景は景気の回復。
そしてマイナンバー制度の導入に向けたIT技術者需要。
特にシステムエンジニアやITコンサルタントなどの求人が増加しているという。
ヒトの部分から景気を読めば明らかにIT関連主導の格好。
IoTやM2M、O2Oなどの世界の優位性は株式面ではこれから登場するに違いない。

「株式相場は景気変動に先行する」というのが株式市場の鉄則。
知ったら終という格言もあるが、株式市場はまだ見ぬ世界に期待を描いて動くもの。
だからこそ景気変動には先行する世界。
明るい未来も怪しい未来も織り込んで株価は推移していく。
2012年以降のアベノミクス相場はまさに足元現実の動きではなく未来への期待で動いてきた相場。
理想を買ってきたと言えよう。
これからの3年は理想と現実の混合した相場。
言葉を変えれば金融相場から業績相場への移行期。
2015年4〜6月期の業績は7割の企業が増益で経常利益は2割増の見通し。
まさに期待された企業業績が現実になってきた。
金融相場は理想買い、業績相場は現実買い。
現実を直視することが大切な時期。
「金融相場→中間反落→業績相場→逆金融相場→中間反騰→逆業績相場」というのが相場のサイクル。
問題は金融相場から業績相場に移行する際の中間反落があるのかどうか。
これが21世紀の相場の課題だろう。

日経平均想定レンジ

下限20548円(8月月足陽線基準)〜上限21210円(25日線の4%上方かい離)。

夏休みモードのSQ週。
荒れるような気がしない。
課題は売買エネルギーがどこまで低下するか、だろうか。
2兆円台をキープするならば明るい秋の果実にありつけるような気がする。

その秋の最大の果実はおそらく郵政の上場。
290兆円の資産を持つだけに話題性は高い。
民営化の総仕上げという意味合いもある。
総額10兆円で今年は1兆円程度の放出の予定。
この1兆円と言う額は2014年の77社のIPOと同じ金額だからかなり大きい。
その郵政の連結純利益は前年同期比2%増の1426億円。
経常利益は3%減の3兆4465億円という。
個別では日本郵便が312億円(前期比55%増)、ゆうちょ銀行が792億円(同8%減)。
かんぽ生命が232億円(同8%減)で合計1426億円となる。
郵便・物流事業とゆうちょ・かんぽの運用収益の拡大が課題だ。
ちなみにゆうちょとかんぽの国内株式保有残3.5兆円。
3月末比約3500億円の増加。
郵政上場の市場インパクトがよければ郵政の業績も向上するという難しい方程式。
この解は明るい未来をもたらしてくれると信じたいところ。


(兜町カタリスト 櫻井英明)

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