【どう見るこの相場】主流人気が長期化の海運株を追撃する

 
主流人気が長期化の海運株を追撃する二番手・三番手銘柄に有力候補
 

相場トレンドと川の流れは、似た者同士のようだ。800年以上も前に鴨長明が、「ゆく川の流れは絶えずしてもとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまるためしなし」と看破した通りである。今年の夏相場も、「サマーセール」を覚悟させられていたのに、「サマーラリー」に一変するサプライズとなり、前週末5日は、日経平均株価が、3月、6月に続き2万8000円台に乗せてきた。しかし、そのあと米国では、7月の雇用統計を受けダウ工業株30種平均(NYダウ)が、取引時間中に乱高下しており、サマーラリーの雲行きに影響しそうである。しかも、折からの決算発表が一巡してお盆休み入りとなると、例年通りの閑散・夏枯れ相場のよどみになるのかといささか心配もさせられる。
 
 しかし市場参加者は、鴨長明のように無常観に捉えられている暇はない。マーケット(流れ)に出没するうたかたは、日々、時々刻々、ハイスピードで形を変え、無常観が真逆の常住観に一変する可能性もあり、この消長に遅れを取るようなことがあれば振るい落とされてしまい兼ねない。とにかくうたかたを瞬時に判断して大きな流れ(主流)、小さな流れ(支流)、地下深く流れる伏流水などの先行きを見極めて対応に怠りなく目配りをしければ、とても市場に勝つパフォーマンスは期待できないのである。
 
 現在、この主流の一つは、ハイテク株のリターン・リバーサルと並び、高人気が長期化している海運大手3社であることは、衆目の一致するところだろう。かつて海運業界のビジネスモデルは、「十年一相場」といわれた。10年に一度は、海運市況が暴騰しその時の超過利潤を溜め込んであとの9年間の不況期を持ち堪える経営形態である。一杯船主が、世界の海を舞台にした思惑で一夜にして巨富を築いた「船成金」として海運史に名をとどめたのが、この典型であった。
 
 ところがこの海運大手3社の連続の業績上方修正、大幅増配は、例えば日本郵船<9101>(東証プライム)では、2020年1月の前々2020年3月期業績の上方修正以来もう2年半にもわたり、株式分割まで予定している。しかもこの出ずっぱりの好業績は、資本コストが荷重な装置産業的な業態のコンテナ船運航で稼ぎ出している。かつては同事業は、同じ貨物を米国までコンテナ輸送しても都内配達の宅配便料金よりも安いといわれ再編に次ぐ再編の時代が長かったから、まさに隔世の感が強い。
 
 海運業界の好業績は、大手3社に止まらない。不定期船事業のドライカーゴ、ケミカルタンカーなどを展開する海運会社にまで及び、すでにNSユナイテッド海運<9110>(東証プライム)、飯野海運<9119>(東証プライム)が、今3月期業績を上方修正し増配を発表した。海運株が、主流としたら支流と伏流水は、どこのセグメントか?インスピレーションを発揮しなければならないが、今週の当特集では、第2候補の支流株としてコンテナ船貨物や代替輸送の航空貨物を取り扱う国際複合輸送会社(フォワーダー)、第3候補の伏流水株としてコンテナ船建造ラッシュで主機関(舶用エンジン)などの受注が好調な舶用機器株に注目することにした。すでに海運株と同様に業績を上方修正済みの銘柄のほか、これから決算発表を予定している銘柄も多く、この動向をウオッチしつつ、仕掛けどころを探りたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
 


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