《マーケットストラテジーメモ》09月1週

【推移】

3日(月):週末のNY株式市場で主要3指数はマチマチの展開。NYダウは続落。S&P500は横ばい、NASDAQは小幅反発となった。期待されたカナダとのNAFTAの再交渉は合意に至らす終了。5日に再協議することとなった。
レーバーデーの3連休を控え売買は低調。8月月間では主要3指数はそろって上昇。NASDAQは月間の上昇率1月以来の大きさとなった。個別ではアマゾンが上昇。アップルは5日連続で終値ベースの過去最高値を更新。一方、テスラが5日続落。
日経平均株価は157円安の22707円と続落。底流は「世界的貿易摩擦懸念の再燃」との解釈。アジア株の下落やドル円の円高傾向も嫌気された。ファーストリテ、スタートトが上昇。ルネサス、ダイキンが下落。3日新甫はネガに荒れた。

4日(火):
NY市場はレーバーデーで休場。欧州ではロンドンが4日ぶりの反発。ドイツが3日続落。アジアでは上海が5日続落、香港が3日続落だった。NYでは「FANG」から「AAA」へと主役が移行しているとの見方。アップル・アマゾンの時価総額1兆ドルレベルの2銘柄とアルファベット(グーグル)。この3銘柄に主役は限定されてきたとの観測だ。夏のNY株をけん引してきた世界で一番高価なリンゴという表現もある。

日経平均は、10円安の22696円と3日続落。NY休場で方向感がないところに米中貿易摩擦懸念が重なり上値を追う気もなく下値もたたききれなかった。火曜日は9週ぶりの下落となった。TOPIXも小幅に下落。ファーストリテ、花王、ダイキンが上昇。TATERU、ヤマ発が下落。

5日(水):
3連休明けのNY株式市場は小幅安。「貿易を巡る懸念がくすぶった」との解釈だ。ISM製造業景気指数は61.3と前月の58.1から上昇しての着地。過去2番目の強さとなり2004年5月以来約14年ぶりの高水準となった。市場では57.7への低下が予想されていたからポジティブサプライズ。

しかし市場インパクトは限定的だった。ナイキやフェイスブックの下落が響いたというところだろう。ただアマゾンは上昇し過去最高値を更新。アップルに次いで時価総額1兆ドルを達成した。

3市場の売買高は65.6億株と過去20日平均の61.1億株を越えてきた。レーバーデーも終わり夏休みも終わり市場に人が戻ってきた証拠かも知れない。
日経朝刊でも指摘されているが「東証1部の8月の1日あたりの売買高は平均12.9億株。月間ベースで2004年11月以来14年ぶりの低水準」。陰の極だったということになる。

日経平均株価は116円安の22580円と4日続落。一時下落幅を30円程度にまで縮小した場面もあったが引けにかけてまた下落幅を拡大し8月23日以来の安値に沈んだ。
米通商政策や新興国経済の先行き不透明感での投資心理の後退を背景に売り物優勢の展開。関西国際空港の閉鎖を受け、インバウンド(訪日外国人)関連銘柄が下落。ファーストリテ、スズキが上昇。ソフトバンク、トヨタが下落。

6日(木):
NY株式市場で主要指数はマチマチの動き。フェイスブックとツイッターの幹部がコンテンツ監視の方法などを巡り米議会で証言。ソーシャルメディア・プラットフォームが自由な意見交換を意図的に抑制しているとの懸念からハイテクセクターが軟調展開。NASDAQとS&P500を押し下げた。

7月の貿易収支の赤字額は前月比9.5%増の500億8200万ドル。金額ベースで5カ月ぶりの高水準となった。中国への輸出は8.2%減。対中貿易赤字は10%増の368億3400万ドルと金額ベースで過去最高。対中関税は米国にとって輸出への影響が大きく赤字削減になっていない構図だ。これでも2000億ドルの追加関税をするのかどうかが課題ではある。

日経平均株価は92円安の22487円と5日続落。5日続落となるのは1月24〜31日以来、約7カ月ぶり。NY株式でのハイテクセクター軟調や早朝の北海道での地震の影響などを警戒し売り先行。台風と地震への懸念という格好だ。上海株式相場の下げも市場心理を冷やした。宝、オロが上昇。TATERU、古河機金が下落。

7日(金):
NY株式市場でNYダウは続伸。S&P500とNASDAQは続落となったマチマチ。前日に引き続きマイクロンテクノロジーやファイスブック、ツイッターなどハイテクセクターが足を引っ張った。トランプ大統領は2000億ドル相当の中国からの輸入品に25%の関税を上乗せする方針を示しており、中国側は報復する構え。カナダのフリーランド外相はNAFTA再交渉について「これまでのところ建設的だ」とコメント。
このあたりの不透明さが株価漂流の原因だ。週間新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比1万件減の20.3万件と1969年12月以来、約49年ぶりの低水準。ADP全米雇用レポートで民間部門雇用者数の伸びは16.3万人。

日経平均株価は180円安の22307円と6日続落。6日続落は1月24〜31日以来。台風・地震に加えて米中貿易摩擦が懸念となった。ドル円が一時110円台前半まで円高になったことから下落幅は300円を超えた場面もあった。資生堂、KDDIが上昇。トヨタ、京セラが下落。TOPIXは7日続落。


(2) 欧米動向
仮説は「8月のNY高あるいは東京の戻りの大きな要因はサウジアラムコのIPO中止」。
ロイターが世界に配信したのは8月22日だった。
もっとも観測はその前から流れていたのも事実。
発行済み株式の時価総額2兆ドルの5%の売り出し金額観測は1000億ドル。
11兆円の引き受けのために機関投資家は資金を作る必要がなくなった。
これは結構大きい。
いきなりアップルの2倍の時価総額の企業が登場するというのだから当然構えていたはず。
この延期が遠因だったと考えても荒唐無稽ではなかろう。


リーマンショック10周年。
当時のNYダウ:11421ドル→25952ドル。
NASDAQ:2261ポイント→8091ポイント。
GDP:14.8兆ドル→20.4兆ドル。
小売売上高:3667億ドル→5075億ドル。
ISM製造業:44.8→61.3。
新築住宅販売:43.3万戸→62.7万戸。
家計債務:12.86兆ドル→13.29兆ドル。

ちなみに日経平均12000円→23000円

株式の時価総額ランキング比較。

☆2018年8月末
(1)アップル(10994億ドル)
(2)アマゾン(9816億ドル)
(3)マイクロソフト(8613億ドル)
(4)アルファベット〈グーグル〉(8521億ドル)
(5)バークシャー(5171億ドル)
(6)ファイスブック(5078億ドル)
(7)アリババ(4536億ドル)
(8)テンセント(4124億ドル)
(9)JPモルガン・チェース(3850億ドル)
(10)J&J(3613億ドル)

☆2008年8月末

(1)エクソンモービル(4155億ドル)
(2)GE(2795億ドル)
(3)マイクロソフト(2491億ドル)
(4)ウォールマート(2329億ドル)
(5)中国移動(2301億ドル)
(6)P&G(2117億ドル)
(7)J&J(1968億ドル)
(8)HSBC(1902億ドル)


(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち2指数が上昇。
上位1位イタリア週間騰落率0.88%、2位トルコ0.59% 3位米国▲0.19%、
4位ブラジル▲0.34%、5位インド▲0.66%。
下位25位ロシア▲3.82%、24位ポーランド▼3.45%、23位香港▲3.28%、22位フィリピン▲3.27% 15位日本▲2.44%。


【展望】
スケジュールを見てみると・・・
10日(月):4〜6月GDP改定値、国際収支、景気ウォッチャー調査、米消費者信用残高、国際捕鯨委員会総会、中国消費者・生産者物価
11日(火):マネーストック、独ZEW景況感、東方経済フォーラム(ウラジオストック)
12日(水):法人企業統計景気予測調査、米生産者物価、アップルがイベント開催、ベージュブック、
13日(木):国内企業物価指数、機械受注、都心オフィス空室率、首都圏新規マンション販売、米消費者物価、財政収支、ECB理事会(ドラギ総裁会見)
14日(金):メジャーSQ、米鉱工業生産、小売売上高、輸出入物価、ミシガン大学消費者信頼感、中国各種経済指標

9月の勝率は一番悪く陰線になる確率が高い。
もっとも、2000年以降では10月の方が悪い。
「9月底値。秋には魔物が棲む」というアノマリーもある。
日本では「彼岸底」の格言。
5月、9月。10月はボラが高まりやすい。
レーバーデーで夏休み明け。
9月末には米国の予算が決定する。
3月高安値の信用期日となりやすい。
「9月頭のトレンドが続く」というアノマリー。
9月第1週に下げ調子なら9月末まで下落トレンド。
9月第1週に上げ調子ならそのまま9月末まで上昇トレンド。
米中間選挙の年の秋は高い。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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