《マーケットストラテジーメモ》06月01週

【推移】

4日(月):
週末のNY株式市場は反発。アップルやマイクロソフト、アルファベットなどハイテク関連セクターが牽引役。NASDAQは最高値まで約1%まで戻してきた。
イタリアでは新政権が発足。ユーロ圏離脱の是非が問われることが予想されていた再選挙は回避。トランプ大統領は米朝首脳会談を予定通り開催すると表明。もろもろの悪材料が払拭された格好となった。
恐怖(VIX)指数は13.46%まで低下。もっともG7での貿易摩擦に関する亀裂はややネガティブ視されようか。

日経平均株価は304円高の22475円と大幅に反発。NY株高や円安トレンドを背景にハイテクセクター中心に買い物優勢が一日中継続した。海外ヘッジファンドの買い戻しという見方もある。TOPIXは3日続伸。トヨタ、ヤマトが上昇。任天堂、ポーラが下落。

5日(火):
空売り比率は39.2%と2日ぶりの40%割れ。月曜に開催された「未来投資会議」での成長戦略素案は「IoT、AI、そしてフィンテック」がテーマ。市場がどう評価するかは興味深いところだ。

日経朝刊連載小説「愉楽にて」は連日の濡れ場継続で株高アノマリー継続期待。もっとも記録としては3日続伸よりも4日連続陽線の方が気にかかった。

日経平均株価は63円高の22539円と続伸。NY株式の上昇を受けて買東証一部の売買代金は2兆3824億円。値上がり銘柄数は853と全体の4割。値下がり銘柄数は1133。ソフトバンク、任天堂が上昇。シャープ、トヨタが下落。

6日(水):
NY株式市場でNASDAQは連日で過去最高値を更新。S&P500は続伸。NYダウは反落とマチマチ。ISM非製造業総合指数は58.6と前月の56.8から上昇。
市場予想の57.5も上回って着地。第2四半期も経済は堅調に成長していることを好感。イタリア上院が行ったコンテ政権に対する初の信任投票が可決されたことも好材料視された。

日経平均株価は86円高の22625円と3日続伸。「テクニカル的な上値抵抗水準とみられた25日移動平均(22561円)を上回り買いに弾みがついた」との見方だ。TOPIXは5日続伸。

東証1部の売買代金は2兆4356億円。東証1部の値上がり銘柄数は963、値下がりは1026銘柄と依然歪んだ展開。日立、ソフトバンクが上場。任天堂、三菱UFJが下落。水曜日は7週ぶり、今年5回目の上昇となった。

7日(木):
NY株式市場は金融セクター主導で大幅高。NASDAQは3日連続で終値ベースの過去最高値を更新した。「米国産品の輸入を年700億ドル増やすとする中国側の提案について政府が検討している」との報道も好感された。

G7を控えての警戒感後退という印象が醸し出されて格好だ。4月の貿易収支は、輸出増が寄与して赤字額が462億ドル(市場予想は491ドルの赤字)と7カ月ぶりの低水準で着地。第2四半期の景気加速を裏付ける格好だ。

日経平均は197円高の22823円と4日続伸。終値は5月22日以来の高値水準となった。「NY株高の流れを引き継ぎ、主力大型株に買い戻しやリスク選好の資金が入った。円安基調も投資家心理を改善。
メジャーSQに向けた先物ロールオーバーは順調で需給懸念も後退」との解釈だ。上昇幅は一時200円を超えルバ面もあった、TOPIXは6日続伸。ファーストリテ、資生堂が上昇。オリンパ、アステラスが下落。

8日(金):
NY株式市場でダウは続伸。ナスダック総合とS&P総合500は反落とマチマチの動き。G7での貿易摩擦問題の拡大を懸念した慎重な動きとの解釈。しかしG7で市場が動くことはめったにないものだ。FOMC、ECB、日銀と続く金融政策スケジュールが重いのだろう。

日経平均株価は128円安の22694円と5日ぶりの反落。利益確定売りに押された格好で下落幅を拡大。メジャーSQ祭りは終わったという印象。「来週にかけて海外で重要な政治・経済日程を控える中、先行きを見極めたいとして、積極的な買いが手控えられた」という解釈だ。
SQ値22825円20銭は終値ベースで上回れなかった。東証1部の売買代金は2兆9207億円。東証1部の値上がり銘柄数は822、値下がりは1163銘柄。シーイーシーが上昇。SUBARUが下落。

(2) 欧米動向

雇用統計は非農業部門の就業者数が前月比22.3万人増。
失業率は約18年ぶりの低水準となる3.8%に改善。
時間当たりの賃金も前月から0.3%増で着地。
労働参加率は62.7%と4月の62.8%から低下し3カ月連続のマイナス。
就職をあきらめた人や、正規雇用を望みつつもパートとして働く人を含めた広範囲の失業率は7.6%。
2001年5月以来の低水準まで改善した。
4月は7.8%だった。
「雇用主が適切な人材を見つけにくい状態で雇用の伸びは減速する見込み。
しかし賃金の伸びが著しく加速する」という見方だ。


(3)アジア・新興国動向

先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち17指数が上昇。

上位1位ベトナム週間騰落率4.65%、2位米国2.77%、3位ポーランド2.73%、
4位日本2.36%、5位メキシコ2.06% 。
下位25位ブラジル▲5.56%、24位イタリア▲3.41%、23位トルコ▲3.32%、
22位ロシア▲1.84%、21位スイス▲1.24%。


【展望】

スケジュールを見てみると・・・

11日(月):マネーストック、機械受注、H2ーAロケット打ち上げ、豪休場
12日(火):法人企業景気予測調査、国内企業物価指数、第三次産業活動指数、米朝首脳会談、FOMC(〜13日)、消費者物価、財政収支、ゲーム見本市E3(ロス)、ZEW景況感、フィリピン休場
13日(水):パウエルFRB議長会見、米生産者物価、韓国・インドネシア休場
14日(木):日銀金融政策決定会合、首都圏マンション販売、米小売売上高、輸出入物価、ECB理事会、ドラギ総裁会見、中国各種経済指標、サッカーワールドカップロシア大会開幕、ラマダン明け
15日(金):黒田日銀総裁会見、民泊法施行、米鉱工業生産、ミシガン大学消費者信頼感、NY連銀製造業景気指数

人類の叡智、英知というのはやはり地球規模では発揮されるものらしい。
北朝鮮もイタリアも、そして諸々の地政学的リスクは悪材料視されたが決定的局面の寸前で回避された。
個別案件では別かもしれないが、地球規模であるいは世界資本市場規模で考えれば寸前の回避ばかり。
リーマンショックだって決定的悪材料にはならずその後株価は回復した。
むしろ資本の世代間等の移動を当然のように促進したという解釈が可能だろう。
つまり、下げたときは買い場というのはお題目ではなく歴史が証明しているということになる。
それも局地戦ではなく総力戦の時にこそ威力を発揮するものだ。
2000年、2003年、2008年などの動きが良い例だろう。
本来、時間の経過とともに市場は拡大するもの。
そのスピードの速さ遅さが微分的に暴落とバブルの交錯となる。
しかし、いずれにしても過去の安値を下回り続けることなく、過去の上値を更新してきたのが市場の歴史だ。
この滔々たる時間と価格の流れを見誤るのは切に時間軸とタイミングの個人差の集積なのだろう。
「あらゆる市場で人類は叡智を発揮するもの」。
アダム・スミスの国富論の「神の見えざる手」の市場原理とは違った意味で結構重要なポイントである。

ある老練熟練な市場関係者のコメント。
「ベルリンの壁が崩壊した後、最も大変な目に会ったのが日本でした」。
思い起こしてみれば・・・。
1989年、年明け1月に昭和天皇が崩御。
時代は平成になった。
天安門事件が起きて、ベルリンの壁が崩壊。
社会主義国が次々と倒れ冷戦が終結。
翌年は湾岸戦争。
そしてドイツ念願の再統一。
更に一年後にはソ連の崩壊。
株価的には1989年末がバブルの絶頂。
その後の円高や金融ビッグバン、国際会計基準導入などで世界の風に晒され耐えた日本。
歴史の皮肉の反復はないとは思うが・・・。
世界で起きたことは多分「アメリカの東西冷戦勝利、そして東側の数多くの閉鎖性からの脱却」。
「ルールは不変」というのが日本的思考法。
しかし「ルールは可変で自分の都合の良いように変えられる」というのが西洋的思考法。
これは今後も問われ続けるに違いない。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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