《マーケットストラテジーメモ》01月02週

【推移】

9日(火):
週末のNY株式市場は4日続伸。ハイテクセクター中心に主要株価3指数はそろって最高値を更新。NASDAQとS&P500指数は週間で約1年ぶりの大幅な上昇となった。「年初の4日間で株価は2%上昇。第4四半期の企業決算への期待と良好な経済見通しが追い風、税制改革効果への期待も株価の押し上げ要因」との見方だ。

週間ではNYダウが2.3%、NASDAQ3.4%、S&Pが2.6%上昇した。雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比14.8万人増と、予想の19万人増を下回って着地。ただ、時間当たり賃金は0.3%増。
失業率は17年ぶりの低水準となる4.1%を維持。3月利上げ観測を後退させるほど悪くはなく、かといって急速な利上げ警戒から程遠く適温状態。

注目すべきは世界の株価の先週の動き。1位はロシアで週間騰落率5.67%。2位は日本で4.17%。以下、イタリア4.16% 、ブラジル3.49%、 ドイツ3.11%。NYは14位で2.33%。出遅れ市場への資金流入という格好だ。
週明けのNYダウは5日ぶりの小幅反落。もっとも業績期待を背景に小高く推移する場面が多かった。「4日続けて過去最高値を更新した後の一服」との解釈だ。日経平均は大発会741円高、金曜208円高。合計2日間で約950円の上昇。大発会の上昇率は3.3%と過去3番目に高かった。
しかも戻り売りや利食い売りをこなしての続伸は評価されよう。

2日間の業種別騰落では上位が証券・商品先物、海運、電気機器、精密機器、鉄鋼。一方下位は空運、ゴム製品、パルプ・紙、水産・農林、小売など。日経平均は4.2%高で週足陽線。TOPIXは3.5%高でともに2週ぶりの大幅反発。

東証マザーズ指数は1.5%高、7週続伸(累計10.4%上昇 11/20の第4週から上昇)。日経ジャスダック平均は2.0%高、7週続伸(同9.7%上昇 11/20の第4週から上昇)。東証2部指数は2.6%高、2週続伸(同4.1%上昇)。

新年相場が続伸したのは2010年以来。「国内勢が出遅れ銘柄を物色する一方で海外投資家は主力株の上値を追い8年ぶりの連勝スタート」という見方。8年ぶりで大発会から3連騰。3日間で1000円超の上昇。24000円を取りに行くよりもこの記録の方が印象深い。
因みに大発会から4連騰となれば1984年以来34年ぶりのこと。新高値銘柄355というのも相場の強さの裏返しだ。もっとも日経平均は陰線。松井証券信用評価損益率で売り方は▲17.521%(前日▲17.280%)。買い方は△0.014%(前日▲0.827%) 。とうとうプラス転換してきた。もしもプラス状態が継続するならば相当強い相場の証左になろう。マザーズ銘柄ネットストック信用評価損益率で売り方は▲10.53%。(17年9/7△0.06% 17年6/22 ▲19.47%)。買い方は▲1.51%。(18年1/5 ▲3.64% 17年9/7 ▲20.66%)。

12月29日時点の信用買い残は前週比709億円減の3兆212億円。
信用売残は1050億円減少の8921億円。Quick調査の信用評価損率は▲5.77%と6週連続の改善。裁定買い残は3兆2311億円。裁定売り残は4304億円。需給は悪くないし、売り方苦戦、買い方圧倒的有利の体制だ。

日経平均株価は135円高の23849円と3日続伸。昨年来高値を連日で更新し、1991年11月15日以来約26年ぶりの高値を付けた。大発会から3営業日連続で上昇したのは2010年以来。4日続伸となると1984年以来のこと。「日経平均は年明け後の3営業日累計で1000円を超える上昇。高値警戒感も出ている」との声も聞こえ上値は重かった。
東証1部の売買代金は3兆1112億円。年初から3日連続で3兆円を上回った。東証1部の値上がり銘柄数は1185で全57%。値下がりは795銘柄。ファストリ、東エレク、ソニー、日電産、キヤノン、花王、ユニチャーム、住友不、三井不が上昇。住友鉱、スズ キ、デンソー、トヨタ、楽天、NTTドコモが下落。

10日(水):
NYダウは反発。S&P500NASDAQは6日続伸。揃って史上最高値を更新した。「新年ラリーが続き、過去最高値水準で引けた」という見方だ。
「北朝鮮と韓国の外交交渉による朝鮮半島リスクの後退は投資家に好感される」という声も聞こえる。12日から決算発表シーズンとなるがS&P500採用企業の第4四半期利益は11.8%増の見通し。前年同期は8%増だった。2010年以来の大発会から3連騰。東証再開以来大発会からの3連騰は16回。このうち年間上昇となったのは13回。勝率8割超で平均上昇率は16%というのが歴史。

因みに大発会から4連騰となった歴史を遡ると1984年(昭和59年)になったようやく見つかった。1月4日(9927円〉→1月9日(10053円)までの5連騰。前年末に4連騰していたから合わせて9連騰だった。
1983年(昭和58年)。1月4日(8021円)→1月8日(8210円)までの5連騰。前年末に5連騰していたから合わせて10連騰だった。
それ以来の34年の歴史というのは結構重い。

考えてみれば、大きな時間軸ではバブル前の下落は1982年まで。1985年の中曽根民活からバブルがスタートしたと見る向きあるが、その前の鈴木善幸内閣で底打ちしていた。となるとそれ以来の連騰記録ということは歴史が繰り返すものならばあと5年の大相場の予兆ということもできなくはない。その意味では、3日続伸でなく4日続伸を取りに行くことは重要なことになる。

日経平均は3日ぶりの反落で今年初の下落。34年ぶりの4日続伸への挑戦権は消えた。ただ、時価総額が大きい銀行や自動車などの主力銘柄が上昇。TOPIXは4日続伸しておりマチマチの展開だった。日経平均株価は61円安の23788円と4日ぶりの反落。今年初の下落となった。大発会からの3営業日で計1085上昇しており利益確定売りが優勢となった展開。112円台前半の円高トレンドも嫌気した。

東証1部の売買代金は2兆7931億円と4日ぶりの3兆円割れ。値上がりは969銘柄で全体の46%。値下がりは107銘柄。JXTGや国際帝石、第一生命HD、三井住友FG、任天堂ホンダ、トヨタが上昇。ファストリや東エレク、アサ、キリンHD、資生堂、花王、HOYA、大東建が下落。日経ジャスダック平均株価は5日続伸。1990年7月13日以来、27年半ぶりの高値を付けた。東証マザーズ指数は5日続伸。終値は2006年9月11日以来、約11年4日月ぶりの高値。東証2部株価指数は7日ぶりの反落。

11日(木):
NY株式市場は主要3指数が下落。S&P500とNASDAQは7日ぶりの反落となった。悪材料視されたのは「中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討」というブルームバーグの報道。「中国当局者は他の資産と比べ米債市場への投資妙味は薄れている。米中貿易の緊張も背景にある」と報じられた。トランプ米大統領が北米自由貿易協定(NAFTA)離脱を表明するとの懸念も悪材料となった。
日中値幅はNYダウが約150ドルだったが終値ベースでは前日比16ドル安程度の下落。大きな下落にはならなかった。

「今週は経済指標発表が少ない。このような週は通常よりも政治的なニュースの影響力が大きくなることがある。今日の売りは行き過ぎ」という声も聞こえる。もっとも中国は世界最大の米債保有国。米財務省によると、昨年10月時点の米債保有額は1.9兆ドルと大きい。「米国との貿易を続ける限り、中国はドルを何らかの資産に投資する必要がある」との声もある。
しかし債券利回りは上昇(価格は下落)。10年国債利回りは、一時3月15日以来の水準となる2.597%まで上昇した。為替市場はドル安。特に対円での動きが大きく111円台前半まで円高ドル安トレンドとなった。米金利上昇は、本来はドル高円安要因。しかし中国の米国債問題とNAFTA離脱問題。そして日銀の金融緩和姿勢の変化の可能性という連立三元一時方程式の解を見つける動きが続こうか。

VIX(恐怖)指数は9.82まで低下している。原油先物はバレル63.40ドル。ややチグハグ感。「時間の経過で報道に根拠がないことに市場が気付き、米国債利回りは低下。中国が米国債購入をやめるなんてあり得ない」という指摘もある。
市場の常套手段として驚きを求めるなら一番動いていなかった場所がターゲット。それが今回はドル円という見方も少なからずあるに違いない。中国の米国債という外伝に依存した相場形成が正しいのかどうかは時間が解決してくれるのだろう。昨日の「利入れ」は今日の「逆行性」につながって欲しいもの。

明日のSQが「吹き値」と決め打ちすれば仕込み局面という見方もある。日経平均株価は77円安の23710円と続落。円高など外部要因もあったが「SQ算出に絡む先物売買も相場の重荷になっていたようだ」との指摘も見られる。日銀が実施した国債買い入れオペで長期国債の買い入れ額は前回と同額だったことから金融緩和姿勢に変化の可能性薄と見られた場面もあった。後場は日銀によるETF買いの思惑が拡大し下落幅を縮小。

東証1部の売買代金は2兆8021億円。東証1部の値下がり銘柄数は986、値上がりは976。TOPIXも5営業日ぶりに反落。ヤマトHDGSユアサ、古河機金、国際石開帝石。ファナック、日立建機が上昇。コロプラ、ローソン、サイゼリヤ、アドテスト、トクヤマ、大日 本住友が下落。

12日(金):
1月11日は戌年の「ワン・ワン・ワン」。「その日に七七円77銭安とは何かの因縁か」という声も聞こえた。日銀の「超長期債買い入れオペ減額」に始まったスピード調整。「2日間合計で138円安だから、まだ調整というほどの動きではない」という声。
SQを控えて売り方の逆襲という見方の方が良いだろう。ゾロ目は決して悪いサインではない筈だ。

「日銀の出口観測が為替市場で円高との反応となっているのは、この時期特有の季節要因も」と大和のレポート。「年初の円高は例年2月には終わることが多い」とも。やや後付けチックながら、これも悪くはない。SQ過ぎれば売り方の抵抗も減ってくるに違いない。

日経平均株価は56円安の23653円と3日続落。円高トレンドを嫌気した売り物優勢の展開となった。14時発表の12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)で現状判断指数(季節調整済み)が5カ月ぶりに前月比悪化。個人消費の先行きを警戒する雰囲気が拡大したとの解釈。
SQ値は、23723円19銭は下回った。東証1部の売買代金は3兆2196億円。東証1部の値下がり銘柄数は1385と全体の7割弱。値上がりは596銘柄。ファナック、安川電、ファストリテ、任天堂、SMC、オリックス、OSG、日電産、TDKが上昇。セブン&アイ、ユニファミマ、KDDI、ソフトバンク、ホン ダ、トヨタ、コスモス薬品が下落。


(2) 欧米動向
「世界的な株高が商品相場に波及」との日経記事。
原油価格が3年1カ月ぶり高値。
非鉄金属や貴金属も上昇基調。
「株高→好況→原油消費増」が市場に連想されるという。
一方「安全資産」とされ、株価が上がると下落する例が多い「金」も底堅い動き。
投機筋の買い越し幅は約16万枚とこの1年で7割増えたという。
あちらの世界とこちらの世界を一緒に見始めると、あまり良いことがなかったのが歴史なのだが・・・。

(3)アジア・新興国動向

先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち18指数が上昇。

上位1位ベトナム週間騰落率3.70%、2位ロシア3.38%、3位イタリア2.93%、
4位米国2.01%、5位香港1.94%。
下位25位トルコ▲1.71%、24位メキシコ▲1.51%、23位豪州▲0.85%、
22位ドイツ▲0.56%、21位日本▲0.26%。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・
週末:北米自動車ショー
15日(月):マネーストック、さくらレポート、NY市場休場(キング牧師生誕記念日)
16日(火):企業物価指数、訪日外客数、NY連銀製造業景気指数
17日(水):機械受注、米ベージュブック、鉱工業生産、変化日
18日(木):鉱工業生産確報値、米フィラデルフィア連銀景況指数、住宅着工、中国GDP等経済指標
19日(金):ミシガン大学消費者信頼感、米週間石油在庫、独生産者物価指数

日経ヴェリタスの特集は「2018戌に笑おう」。
円安なき「2万5000円超」のカギは「脱デフレ」。
「真水」の稼ぐ力が高まっているからという見方が多くなってきた。
18年度について経常増益予想する声がアンケートでは94%。
「10%未満の増益」58.8%、「10〜20%の増益」も35.3%。
最大の焦点は賃金の伸び。
「賃金の上昇が全国に浸透し、国内景気が本格回復する」が背景になる可能性があるという。
有望な投資テーマは、脱デフレけん引する「値上げ力」、次代を担う「イノベーション株(イノベ株)」。
「割安株」。
技術革新が起こす今年の「メガトレンド」。
特に「全固体電池」、「アグリテック」、「量子コンピューター」、「稼働ロボット」4つが有望テーマ。


2017年の投資主体別株式売買状況。
海外投資家が2014年以来3年ぶりに買い越しに転じた。
 買越額は東京・名古屋市場で7532億円。
個人投資家は6年連続で売り越し。売り越し額は5兆7934億円。
過去最大だった2013年の8兆7508億円以来の4年ぶりの大きさ。
日銀のETF買いは累計5兆9033億円。


昨年2017年(取引日247日)の、日経平均「曜日別」勝敗

・月曜日 26勝20敗(勝率 56%)
・火曜日 20勝31敗 (〃 39%)
・水曜日 31勝20敗 (〃 60%)
・木曜日 25勝25敗 (〃 50%)
・金曜日 27勝22敗 〃 55%)

意外にも、
昨年の下落幅103位を記録した「水曜日」が
( 12/6(水) −445円、3/22(水) −414円、11/15(水) −351円 )
勝率トップで前年(2016年)の雪辱を果たした
一方、
「火曜日」は唯一大幅負け越しとなりました

*ちなみに2016年は、
・月曜日 26勝21敗 (勝率 55%)
・火曜日 28勝23敗 (〃 55%)
・水曜日 23勝27敗(〃 46%)
・木曜日 25勝22敗 (〃 53%)
・金曜日 26勝24敗 (〃 52%)

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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