《マーケットストラテジーメモ》09月4週

【推移】

19日(火):
週末のNY株式は続伸。S&P500は初めて2500ポイントの大台に乗せた。
個別では半導体大手エヌビディアが6.32%高となり過去最高値を更新。アップルが1.01%、AT&Tが2.15%、ベライゾンが1.44%上昇。ボーイングも1.53%高となり、過去最高値を更新。先物決済のメジャーSQを背景に3市場の売買高は約85億株と大幅増加。
8月の小売売上高は前月比0.2%減と6カ月ぶりの大幅なマイナスで着地。市場予想は0.1%増だったが一転マイナス。ハリケーン「ハービー」の影響で自動車販売が減ったことが要因という。しかし事前には気にしていた市場はほとんど見えないフリ。「FRBはFOMCで4.2兆ドル規模の米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の保有資産を縮小し始める旨を発表する」。というのは市場からの声。「8月の小売売上高が落ち込んだことでこうした見方が変わる可能性は低い。次回の利上げは12月まで待つ」。FOMCを通過すれば数カ月は金融政策から市場の目は離れるのだろう。変わって浮上するのがトランプ政策というシナリオだろうか。

週明けのNYダウは7日続伸。NASDAQとS&P500は続伸。いずれも過去差高値を更新した。特にNYダウは5日連続で過去最高値更新となった。今年に入り40回目の過去最高値更新となる。ティラーソン国務長官は「北朝鮮問題の解決で外交努力が失敗した場合には軍事的手段だけが選択肢として残る」とコメント。

一方で「平和的な解決を目指していることをはっきりさせなければいけない」とも指摘。「当面は米朝が軍事衝突に至る可能性は低いとの見方が買い安心感につながった」との解釈。またFOMCでは資産圧縮開始の発表観測。10年国債利回りは一時2.23%と約1カ月ぶりの水準まで上昇。これを受けて金融セクターが上昇した。エヌビディアは過去最高値を更新。キャタピラ、ノースロップ・グラマン、ボーイングなども上昇した。

週末の日経平均は午後1時過ぎに19933円まで上昇。大引けは前日比102円高の19909円。13日の19865円を上回っての高値。週間の高値で週足は大陽線。売買代金が2兆8900億円と、7月31日の2兆9000億円以来の水準。3連休前の買い控えなど見られず、3連休後の高値に期待した格好だった。FOMCが19〜20日。

日経平均、TOPIXともに年初来高値更新。明るい連休明けとなった火曜日。9年前のリーマンショックの動揺など忘れた格好となった。日経平均は6月20日の年初来高値(終値で20230円、ザラバ値で20318円)を更新。東証1部の売買代金は3兆1059億円と3兆円台。今年3兆円以上の売買代金を記録したのは4日だけ。5月31日の3兆179億円からだ。「その先に果てに6月20日の高値があった。今回も同じパターンなら、この先3週間ぐらいの高値追い相場期待」という見方もある。

東証1部の時価総額は613兆7403億円と2年1か月ぶりで過去最大更新。
ココを超えるかどうかは長年の課題でもある。大引けの日経平均株価は389円高の20299円と続伸。6月20日以来、約3カ月ぶりに年初来高値を更新した。2015年8月18日以来、2年1カ月ぶりの高値水準となった。一時411円高の2万0320円まで上昇した場面もあった。1ドル=111円台後半まで円安が進んだため、自動車や電機に今期業績の上方修正を期待した買い物優勢の展開。衆議院解散総選挙実施の観測が浮上。「選挙は買い」の格言も登場した。

東証1部の売買代金は概算で3兆1059億円と6月16日以来の高水準。大引けに7000億円程度商いが膨らんだ。東証1部の値上がり銘柄数は1679と全体の83%。三菱UFJ、トヨタ、パナが上昇。石川製、ぴあ、日ライフが下落。

20日(水):
NY株式市場は主要3指数が小幅高。終値ベースの最高値を更新した。特にNYダウは8日続伸で6日連続の過去最高値更新。牽引役は金融セクター。FOMCが始まり、会合後の声明が注目される中での上昇となった。電気通信セクターなども堅調。今回のFOMCはイエレン議長の会見付き。「バランスシート、金利、フィッシャーFRB副議長の辞任などが材料。イエレン議長が記者会見で何を語るか注目。
今回初めて2020年の見通しが発表される。ボラティリティーが高まる可能性もある」という声が聞こえる。8月の輸入物価指数は前月比0.6%上昇で着地。7カ月ぶりの大幅な伸びとなった。これを受けて国債利回りは上昇。12月の利上げ観測も高まり確率は58%。為替市場もFOMCを待つ姿勢。トランプ米大統領の初の国連総会での演説を前にドルは対円で下落。「結果的にはそれほど過激でなかった」との解釈が主流となった格好。先週段階で25日線を上に抜け週末に75日線を上回っていた。

週足でも26週線と13週線を上回っていた。これは伏線だったとの後付け論も聞こえる。先週木曜から上向いた25日線(19578円)からの乖離はプラス3.68%。ほぼ第一次限界水準だが200日線からの乖離はまだプラス4.35%。25日線からプラス8%乖離は21145円だからここまで挑戦できるかどうかが課題だ。因みに日経平均のPER15倍で21255円とほぼ同水準だ。勝手雲が9月26日に白くねじれているのは好感。もっともボリンジャーのプラス3σ(20274円)を前日の終値ベースで抜けた。「一応日柄待ち」という声が聞こえないでもない。

ノーマークの日銀金融政策決定会合の結果は明日21日。サプライズがあればヒジュラの新年からの相場材料となれるのかも知れない。空売り比率の34%台は好感。日経平均やTOPIXよりも東証1部単純平均株価が3000円台に乗せたことの意味の方が大きいだろう。水曜の日経平均株価は3日続伸。「上値では戻り待ちや短期の利益確定売りが出たものの、これらを吸収。商いは引き続き高水準で衆院選に向けた経済政策への期待感が内外投資家による新規の資金流入を誘った」との解釈。

先物12月限は始値、終値ともに20140円と寄引同値足。原指数も始値20301円に対し終値20310円と実体9円幅の極小線。「ともに気迷い線とか転換線などと言われる足。マドを開けて伸び上がったところで寄引同値線となれば、いったんは調整。市場気迷いを振り切って4連騰となるようだったら、物凄い強さ」という声もある。

日経平均株価は11円高の20310円と3日続伸。終値ベースでの年初来高値を更新した。総選挙観測の浮上で安倍晋三政権の政策継続への期待が拡大。海外投資家を中心に買いが続いた。一方で高値警戒から利益確定売りもあり日経平均は小幅に下げる場面もあった。東証1部の売買代金は2兆7747億円。
東証1部の値上がり銘柄数は854、値下がりは1051、変わらずは123銘柄で、大型株の上昇が目立った。 任天堂、ソフトバンク、ファストリテ、国際帝石、JXTG、パナソニックが上昇。資生堂、第一三共、東ガスが下落。

21日(木):
NY株式市場は小動き。NYダウは7日連続で過去最高値を更新。S&P500は6日連続で過去最高値を更新。NASADQは小反落だった。FOMCは金利据え置き決定で着地。年内にあと1回の利上げを想定しているとした。約4兆2000億ドルに膨らんだバランスシートの縮小に10月から着手すると公表。ほぼ予想通りの展開でサプライズなしだった。12月の利上げ確率はFOMC発表直前の51%から発表後には約67%に上昇した。10年債利回りは一時2.29%と8月8日以来の高水準まで上昇。その後2.27%水準での推移。最近のハリケーンの影響や低調なインフレ動向を踏まえFRBが一段とハト派的な姿勢を打ち出すのではないかと予想する向きもあった。しかし結局はサプライズなし。ドル・円は一時、2カ月ぶりの高水準となる112.51円まで上昇した。

裁定買い残は1兆3742億円。前週比1203億円減少と2週ぶリに減少。裁定売り残は5422億円と前週比101億円減少で7週ぶりの減少。まったく邪魔にはならないしむしろ売り残の方が狼狽だろう。
信用売り残は973億円増加の1兆111億円と3ヶ月ぶりの高水準だ。買い残は919億円減少の2兆5939億円。信用倍率は単純に2.56倍。ここも売り方の厳しい状況だ。4月17日安値の売り方期日というのも間もなく到来する。

日経朝刊スクランブル。「セリアが代表するように安定成長株はすでに割高な水準まで舞い上げられている。米国主導で世界経済が成長する確かな手応えとともに、銀行などの大型割安株に資金が向かわなければ、日経平均が2万円を超えてさらに上昇するシナリオは描きにくい」。これは株が上がらないと言っているのか、日経平均が上がらないと言っているのかは微妙なコメント。
寄与度という不可解なものがある限り225は上がりにくいだろう。しかし単純平均株価はやっと今週3000円台に乗せてきた。体感と日経平均は全く違うというのが現実。しかも銀行・自動車の時価総額は大きくとも相場の主役ではなかろう。この錯覚は是正されれば日本の株式市場はマトモになるはずだ。

大引けの日経平均株価は37円02銭高の20347円48銭と4日続伸。円安トレンドを好感した格好での買い物優勢だった。9月8日以来1000円以上上昇したことからの高値警戒感もあり上値は重かった。日銀金融政策決定会合をは現状維持で通過したが結果発表後に上昇幅を縮小した。東証一部の売買代金は2兆8207億円。
東証一部の値上がり銘柄数は945で全体の46パーセント。値下がり銘柄数の方が974と多かった。三井不動、大塚HD.関電、マツダが上昇。任天堂、村田、花王、キーエンスが、下落。

22日(金):
NYダウは10日ぶりの小幅反落。7日連続で過去最高値を更新していただけにさすがに一服というところだろう。著名投資家のウォーレンバフェット氏は100年後のダウは100万ドルという展望を語っておりブルマインドはかなり強い。債券市場も下落。FOMCでの追加利上げの方向を消化したとの声が聞こえる。12月利上げの確率は78パーセントまで上昇した。金先物は4ヶ月ぶりの水準まで下落。
木曜の日経平均株価は年初来高値を更新。4日続伸は4月20日〜26日以来で今年2回目。FOMCと日銀金融政策決定会合を通過。あとは中間期末の権利配当取りというイベントが控えている。225先物大証夜間取引終値は日中比30円高の20250円。現物換算では20480円水準。ドル円は112円台半ば。今年初の5日続伸に期待の週末。

大引けの日経平均株価は51円03銭安の20296円45銭と5日ぶりの反落。今年初の5日続伸はならなかった。北朝鮮による地政学リスクの高まりを警戒して売り物優勢の展開。
東証一部の売買代金は2兆5296億円。値下がり銘柄数は1276と全体の63パーセント。値上がりは636銘柄だった。三井住友FG、石川製作、キリン、第一三共が上昇。鉄、資生堂、任天堂、日東電光が下落、

(2) 欧米動向

月曜のNY市場で為替ヘッジ付きの日本株ETFであるウィズダムツリー・ジャパン・ヘッジドが続伸し年初来高値を更新した。
売買高は401万株で25日移動平均(234万株)の2倍に膨らんだ。
「安倍晋三首相は臨時国会の冒頭で解散の方向」の報道を好感したとの解釈。
90年以降の衆議院解散前後の日経平均株価の値動きの調査。
「解散の5日前から15日後にかけて平均的には3.6%ほど値上がり」したというのが過去の歴史。

21日がイスラムのヒジュラ歴の新年。
過去10年間、イスラムの新年以降の10日間は株高のアノマリーが該当してこようか。
9月中間期末の中間配当取りの買いが入りやすいこと。
その翌週に発生する年金資金などのTOPIXの配当再投資。
「これらの先回りに期待」という声まで聞こえる。
9月21日イスラムのヒジュラ暦の新年。


(3)アジア・新興国動向
世界の主要25の株価指数のうち15指数が上昇。

上昇1位日本週間木曜日騰落率1.94パーセント
2位イタリア1.36パーセント
3位英国1.32パーセント
4位フランス1.23パーセント
5位フィリピン1.23パーセント
11位米国0.36パーセント

下落25位トルコ▲3.36パーセント
24位台湾▲1.24パーセント
23位インド▲1.09パーセント
22位マレーシア▲0.86パーセント
21位ポーランド▲0.70パーセント



【展望】
スケジュールを見てみると・・・
25日(月):米シカゴ連銀全米活動指数、独Ifo景況感
26日(火):企業向けサービス価格指数、9月権利付き最終日、米CB消費者信頼感、新築住宅販売
27日(水):米耐久財受注
28日(木):米GDP確定値
29日(金):消費者物価、鉱工業生産、家計調査、日中国交正常化45周年、米個人所得、シカゴ購買部協会景気指数


【9月】

21日(木)東京ゲームショー(幕張)
25日(月)茨城県知事任期満了
29日(金)変化日

【10月】

2日(月)2日新甫、日銀短観
3日(火)家電・IT見本市「シーテックジャパン」(幕張メッセ)
4日(水)ECB理事会、上げの特異日
5日(木)変化日
6日(金)満月
9日(月〉体育の日で休場、コロンブス・デーでNY為替休場
11日(水)変化日、大幅高の特異日
13日(金)オプションSQ、IMF世銀年次総会(ワシントン)
16日(月)上げの特異日
17日(火)変化日
18日(水)米ベージュブック
19日(木)EU首脳会議、ブラックマンデー30周年
20日(金)変化日
25日(水)東京モーターショー(一般公開27日)
27日(金)変化日
28日(土)プロ野球日本シリーズ開幕
29日(日)欧州サマータイム終了
30日(月)日銀金融政策決定会合
31日(火)米FOMC

【11月】

1日(水)FOMC、株安の日
3日〈金)文化の日で休場
4日(土)満月
5日(日)米サマータイム終了
6日(月)国連気候変動枠組み条約会議(COP23)
7日(火)ロシア革命から100年、下げの特異日
8日(水)ECB理事会
9日(木)変化日
10日(金)SQ、NY為替市場球場
15日(水)変化日
17日(金)広州モーターショー
18日(土)新月
22日(水)ECB理事会、変化日
23日(木)勤労感謝の日で休場、NYサンクスギビングデーで休場
24日(金)ブラックフライデーでNY半日立会、海王星順行開始
27日(月)米サイバーマンデー、変化日


水曜の日経朝刊「大機小機」は「消費税問答を採点する」。
教師の出した問題は「消費税について考えを述べなさい」。
学生Aの回答は「むしろ税率を下げるべきです。
家計所得が増え、経済が活性化して財政再建にもプラスです」。
教師のコメント。
「税率を下げれば財政赤字が減ると言ううまい話はない。
君は『ただのランチはない』という経済の大原則を理解していない。
成績はD(落第)だ」。
一方で学生Dの回答。
「予定通り2019年10月に10%に引き上げ、増収分はできるだけ財政再建に充てるべきです。
再び増税を先送りすれば財政不安は増大。
将来そのツケが自分たちに回ってくるのでは、と不安になります」。
教師のコメント。
「そのとおりだ。成績はAだ」。
そして・・・。
「これから先の財政を展望すると、消費税率を10%に引き上げても厳しい状況は変わらない。
社会保障を中心に歳出を削減するとともに少なくとも消費税率を10%に引き上げる必要がある。
そう答えれば成績はAプラスだね」。
これって財務省の口頭試問のように読めるのは気のせいだろうか。
一方的に消費増税を持ち出して「大変だ」という教師のコメント。
大体「将来ツケが回ってくるのかどうか」は定かでない。
しかも心配する学生さんってどれほどいるのだろう。
こんな声がまかり通るから株式市場は迷惑する。
ひょっとすると・・・。
学生AがD判定で学生DがA判定というのは筆者のパラドックスなのかも知れない。

そもそも安倍首相は・・・。
8%から10%への消費増税の増収分のうち1兆円超を教育などの充実策に振り向ける方向検討。
幼児教育の無償化や大学の負担軽減などの財源を大胆に確保。
教育環境整える狙いという。
「消費税収の使い道を財政健全化や社会保障以外へ拡大することは財政規律の緩みにつながる」。
そんな懸念も聞こえるものの、財政規律だけが金科玉条なのは財務省だけ。
これが巧妙なだけになかなか理解されないから困ったもの。
加えれば・・・。
日本の長い間の低金利。
このお陰で一番損をしたのは個人金融資産だろう。
概ね800兆円の預貯金に対して得られなかった利息。
2%と仮定して25年間という時間を乗じてみると400兆円。
東証の時価総額の8割、年間税収の8年分。
搾取というには巧妙すぎて合法的に見えるから不思議なものである。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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