03月2週
【推移】


6日(月):
週末のNY株式市場は反発。市場の大きかった材料はイエレン議長の講演内容。「雇用をめぐる指標とインフレが力強さを維持すればFRBは今月の会合で利上げを決定する」。FRBが3月会合で利上げを決定する確率は約85%。週初の30%近辺から大きく上昇。金利上昇トレンドを受けて金融セクターが上昇した。市場では「力強く成長している時は株式相場は利上げがあっても対応できる」という楽観的な見方が広がっている。

週末の日経平均株価は4日ぶりの反落。「高値を抜け切れなかった徒労感があった」との声も聞こえる。大発会から立会いは42日で21勝21敗と五分五分。高値での気迷い商状とはいいながら下値は着実に切り上げている。週間では約185円の上昇。週足は2週連続で陽線。

週末の日経新聞の題字が横書きになった。おまけに日曜版の全32ページの中は16ページがほぼ広告。残りの16ページのうち6ページ位全面広告でラテ欄も連載小説もある。となると実質は9ページ程度。まさに新聞の本質を具体化して見せてくれたことになる。

日経平均株価は90円安の19379円と続落。ドル円が113円台で推移したこと嫌気した格好 。(週末のメジャーSQ算出を控えた持ち高調整の売りもあり上値は追えなかった。日経平均の後場の値幅はわずか48円と狭かった。
日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)前週末比2.50ポイント低下し15.12。2014年7月25日以来2年7カ月ぶりの低水準になった。1日の下落率としては米大統領選後の16年11月10日(22.45%)以来の大きさ。「目先のイベントを警戒するリスク回避的なオプションの売買が一巡」といい指摘もある。

東証1部の売買代金は1兆7209億円と2月21日以来の低水準。コンコルディ、りそなHD、JFE、新日鉄住金が上昇。ヤマトHD、MS&AD、東京海上、SOMPOが下落。東証2部株価指数は5日続伸。マザーズ指数は11日続 伸。JASDAQ平均が17日続伸。個別は極洋が20日続伸。


7日(火):
週明けのNY株式は反落。とばっちりみたいな解釈は「北朝鮮の弾道ミサイル発射で地政学リスクの高まりを警戒した売りが先行」。確かに地政学的リスクの高まりではあるが「安全資産の円買い」同様に取ってつけたような説明に聞こえる。むしろ高値圏での利益確定売りに押されたとした方がまだスッキリしようか。トランプ大統領が移民や難民の入国を制限する新たな大統領令に署名。イスラム圏7カ国などからの入国制限への制限条件は緩和された。「国境強化が優先され、税制や規制改革といった経済政策の進展は遅れる」という警戒感も聞かれる。

大引けの日経平均株価は34円99銭安の19344円15銭と小幅に3日続落。「海外投資家などによる小口の売りと国内機関投資家による押し目買いの交錯」との声が聞こえる。日経平均の日中値幅(高値と安値の差)は約57円と2016年12月26日以来約2カ月半ぶりの小さだった。
東証1部の売買代金は1兆9866億円。ヤマトHD、アルファ、任天堂、国際石開帝石、キリンHDが上昇。三菱UFJ、三井住友FG、フジクラ、DOWA、楽天、ディーエヌエが下落。


8日(水):
NY株式市場は小幅続落。NYダウとS&P500は過去1か月で初の続落。売られたのは医薬品セクターと金融セクター。医薬品はトランプ米大統領が共和党の「オバマケア代替案」を支持したことを懸念。トランプ大統領が「製薬業界に競争をもたらす新たな制度に取り組んでいる。米国民が支払う価格は大幅に下がる」と発言。
薬価引き下げに再び意欲を示したことを嫌気した格好となった。また週末の雇用統計を通過したあとの来週のFOMCでの利上げ確率は84%まで上昇。織り込んだとはいえ様子見モードは散見される。「46年ぶり」が明治機械の復配。

1971年以来は高度成長期以来の復配。そしてキリンは28年9カ月ぶりに高値。時間軸はバブル崩壊を越えてきた。いまだに恐怖と懸念で動くのは時間軸がずれているような気がする。
大引けの日経平均株価は90円12銭安の19254円03銭と4日続落。「雇用統計やFOMC待ちでの買い手控え」との解釈。模様眺めムードが強まったことから下落幅は限定的だった。
東証1部の売買代金は2兆144億円。かろうじて2兆円を越えたが売買エネルギーは感じられない動き。TOPIXも続落し水曜連続高は9週で止った。任天堂、大成建、大林組、JR九州が上昇。トヨタ、三菱UFJ、新日鉄、JFE、住友鉱、東邦亜鉛が下落。日経ジャスダック平均は19日続伸。


9日(木):
NYダウは4日続落だったがNASDAQは3日ぶりの反発。原油在庫が市場予想以上に増加しWTI原油先物価格が5%以上下落。バレル50ドル台水準までの下落を嫌気したとの解釈。高値圏での警戒感が強いために強いて材料を見つければそういうことになるのだろう。一方、ADP全米雇用レポートで民間部門雇用者数は29.8万人増。市場予想の19万人増を大きく上回って着地した。

週末発表の雇用統計も堅調が予測され来週のFOMCでの利上げの可能性は86%とさらに上昇。10年債利回りは2.583%と一時昨年12月20日以来の高水準まで上昇した。10年債利回りは8日続落(利回りは上昇)。昨年12月の2.8%以来のもみあい過程のフシをことごとく上抜いてきた。外部材料の中国とか北朝鮮、中東などはほとんど見えないフリでの展開。ただ英国ではEU離脱の権限に対して、メイ首相に追加条件をつけると言う修正案が上院で可決。修正案では、離脱協議の最終合意案を拒否する一段の権限を議会に認めており、今後の行方は混沌としてきた。

木曜日経朝刊「スクランブル」は「ベア投信の山、株高阻む」。株価指数とは逆の動きをするベア(弱気)型投信の残高が急増しているという。背景は外債運用で損失を抱えた地銀などの運用だという。外債は損失拡大の一方で日本株投信などでは利益が拡大しているのが現実。
「2016年度は日本株に救われた」という地銀の運用担当者のコメントも登場している。そもそも株の運用なんてほとんど経験のない債券専門家ばかりが金融機関の運用担当者。それが自分の畑の債券に足をすくわれ、見下してきた株式運用に助けられるという構図。

結構奇妙に映るものである。そしてその利益を来期に持ち越すために現状でベア投資を買って利益を確定する動きが拡大。それが足もとの株価の伸び悩みの一因であるとも指摘されている。一生懸命走っているのに加速しないと思ったら後ろでドレスの裾を踏まれていた。そんな感じだろうか。

JASDAQの19連騰が話題になっている。2006年1月16日までが18連騰だったからこれを抜いた。その前が2005年11月14日までの17連騰。1990年1月5日までが18連騰だった。この先は2004年1月27日までの21連騰。そして1989年10月13日までの22連騰。
いよいよバブル越えの水準が近づいてきた。東証小型株指数は25年8カ月ぶりの高値水準。東証2部株価指数は過去最高値圏。主力はモタモタ、個別はしっかり。小型成長株に日本の未来があると読みたいところ。悪材料には「だから何」と打ち返す強さが求められようか。
日経平均株価は64円55銭高の19318円58戦と5日ぶりに反発。反発の要因は為替の円安トレンド。1ドル114円台を好感した格好で買い物優勢となった。もっとも様子見モードは継続しており上値を積極的に買う向きも限定的。売買エネルギーもメジャーSQ前にしては低調で東証1部の売買代金は1兆8791億円。東証1部の売買代金は活況の目安となる2兆円を下回った。スズキ、ブリヂストン、東エレク、パナソニック、ジャフコ、国際石開帝石、石油資源が上昇。任天堂、東芝が下落。


10日(金):
NY株式市場は4日ぶりに小幅な反発。来週の利上げを見越して10年債利回りは2.595%まで上昇した。ただVIX指数は12.25まで上昇。リスク度合いはやや高まった格好。原油先物がバレル50ドルを割れたのは警戒感。バルチック海運指数は7日続伸。

大和のレポートは彼岸底についての考察。結論は「彼岸底は近年前倒し」。年度末独特の需給の季節性を表す相場格言「節分天井、彼岸底」は有名。実際、日経平均の年間パフォーマンスを見ると、節分頃に一旦の天井があり、お彼岸の頃は上昇が始まっている。かつては実質的な同日のクロス売買・単純な値洗いが認められた。近年は実質的な売買と認められるためには、売却から買戻しまでにある程度の時間が必要。期中に買い戻すためには、売りの時期はかつてより前倒しになってきたのだろう。

最近は遅くてもメジャーSQの大商い時に紛れ込ませて、売りを終了することが多いようだ。よって、国内の需給悪はそろそろ終了。今後は買戻し要因に変わってくると期待できる」。

大引けの日経平均は286円03銭高の19604円61銭と続伸。大発会につけた終値ベースの昨年来高値19594円16銭を更新した。
メジャーSQ値19434円30銭も上回っており幻のSQ値は脱却。
来週のFOMCでの利上げ観測がドル高につながり1ドル115円台になったことを背景に終始買い物優勢の展開。SQ通過で売り圧迫感も消えた格好。証券や銀行などのセクター中心に買い戻しを交え堅調となった。東証一部の売買代金は2兆9463億円。ソニー、第一生命が上昇。住友鉱、丸紅が下落。


(2) 欧米動向
OECDの世界経済見通しが発表された。
結論は「世界経済緩やかに回復、経済ナショナリズムがリスク」となっている。
世界経済の成長率は2017年3.3%、18年3.6%(前回11月と変わらず)。
各論は 米国は17年2.4%(前回2.3%)、18年2.8%(前回3.0)。
ユーロ圏は17年1.6%(変わらず)、18年1.6%(前回1.7%)。
日本は17年1.2%(前回1.0%)、18年0.8%(変わらず)。
中国は17年6.5%(前回6.4%)、18年6.3%(前回6.1%)。
興味深いコメント。
「多くの国で景気回復は緩やかになる。
消費支出と企業投資が低迷するなか金融市場は経済実体から切り離される」。
まさにニューノーマルの到来。
経済実体と金融市場は分断されれば市場経済は苦手な日本には有利になるに違いない。
「日本は財政面が成長を支えるという理由から今年の成長率見通しを上方修正。
よくわからないコメントだが、アベノミクスに期待というところだろうか。

米商務省が発表した1月の貿易収支の赤字額は前月比9.6%増の484億9000万ドル。
2012年3月以来、4年10カ月ぶりの高水準となった。
背景は原油価格の上昇で輸入額が増えたこと。
1月のインフレ調整後の貿易赤字は653億ドル。
昨年12月の620億ドルから赤字幅を拡大した。
1月のインフレ調整後の輸出、輸入の額はともに過去最高。
「内需の回復および米国の貿易相手国の経済成長加速を示唆した」との解釈。
1月の輸入は2.3%増の2405億9000万ドル。
4年12月以来の高水準。
原油輸入は2億5900万バレルと、2013年7月以来の規模に拡大。
そして自動車の輸入は過去最高。
携帯電話や家財道具も増加した。
産業用資材・原料は15年7月以来の高水準。
中国からの輸入は5.1%増の414億ドル。
日本からの輸入は13.9%減の105億ドル。
ドイツからの輸入は9.2%減った。
「ドル高が引き続き輸出の足を引っ張っている」と言う指摘も聞かれる。
EUに対する輸出は7.3%減。
中でもドイツへの輸出は10.7%減少。
中国への輸出は13.4%減少。
メキシコに対する赤字は10.1%減少し15年7月以来の低い水準となった。
しかしロス米商務長官は「われわれは今後数カ月で有利とは言えない貿易協定の再交渉に乗り出す」とコメント。
実体とはかけ離れた場所での貿易摩擦がトランプツイッターによってクローズアップされるのだろうか。

(3)アジア・新興国動向

先週の世界の株式相場は主要25株価指数のうち7指数が上昇。
上位1位韓国週間騰落率0.89%、2位日本0.70%、3位豪州0.62%、
4位マレーシア0.54%、5位インド0.39%。
下位25位ロシア▲4.72%、24位ブラジル▲3.16%、23位タイ▲1.68%、
22位ポーランド▲1.49%、17位米国▲0.49%。

中国の外貨準備高は予想に反して増加。
3兆ドルの大台を回復したこと。
「資本の流出に歯止めがかかった」ということになる。
「中国が人民元の大幅な切り下げを再度実施。
トランプ米新政権との貿易紛争が激化するリスク」は後退したと見られる。
2月末の中国外貨準備高は69億2000万ドル増の3兆0050億ドル。
市場予想は250億ドル減の2兆9730億ドルだった。
春節という特殊要因があったのかも知れないが・・・

【展望】
スケジュールを見てみると・・・

13日(月):機械受注、第3次活動指数、インド休場
14日(火):首都圏マンション発売、FOMC(〜15日)、米生産者物価、独ZEW景況感、中国小売売上高等各種経済指標
15日(水):日銀金融政策決定会合、訪日外国人客数、春闘集中回答日、米消費者物価、小売売上高、イエレン議長会見、NY連銀製造業景気指数、オランダ議会選挙、TPP閣僚会合
16日(木):黒田日銀総裁会見、米連邦債務上限適用再開、住宅着工件数、フォラデルフィア連銀景況指数、BOE金融政策委員会
17日(金):米鉱工業生産、CB景気先行指数、ミシガン大学消費者マインド指数、G20財務相・中央銀行総裁会議(〜18日ドイツ)

【3月】
13日(月)変化日
14日 (火)米FOMC(〜15日)
15日(水)日銀金融政策決定会合(〜16日)
16日(木)米連邦債務上限適用再開
17日(金)変化日
24日(金)変化日
26日(日)欧州サマータイム開始、香港特別行政区長官選挙
28日(火)3月権利付き最終日
30日(木)変化日


公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の10〜12月期の運用実績。
10兆4973億円の黒字だった。
黒字は2四半期連続。
2001年度以降、四半期ベースの運用益としては過去最高となった。
背景は米トランプ政権に対する政策期待などによる円安・株高の進行。
2016年末時点の運用資産は144兆9038億円。
10〜12月期の運用利回りはプラス7.98%。
運用資産は昨年9月末(132751億円)を上回った。
国内株式は4兆6083億円の黒字、外国株式が4兆8213億円の黒字。
運用益は拡大。
債券よさようなら、株式よコンニチワは正解だったことになる。

ゴールドマン・サックスのレポートは「安倍政権は、最長で2021年9月までの長期政権へ」。
「欧米でポピュリスト的な機運から政治不安要素が高まる。
日本の政治・経済両面での際立った安定感は、海外投資家から、投資環境としても高く評価される可能性」と指摘された。
消費増税が再々延期される可能性も否定できないとなれば日本株高の条件は一つ揃うことになろう。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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