08月2週
【推移】

8日(月):
週末のNYダウは191ドルの18543ドルと反発。NASDAQは約1年ぶりの過去最高値更新。S&P500も今年8回目の過去最高値更新。
市場予想は18万人増だった雇用統計の非農業部門雇用者数は25.5万人増で着地。前月分は29.2人増に上方修正。失業率は4.9%。平均時給の伸び率は4月以降で最大となった。好調な雇用統計好調を受けて9月の利上げ確率は28%まで上昇した。「労働市場の順調な回復は、昨年12月以来となる利上げ再開の追い風になりそう」との声も聞かれる。前週までにS&P500採用銘柄の約75%が第2四半期決算を発表。77%の企業は利益が予想を上回った。56%の企業は売上高が予想を上回った。
市場関係者の業績見通しは5.8%減から2.7%減になり業績底打ち感を好感している面も見逃せない。NY株式市場はしばらく熱い夏となりそうな気配。

日経平均採用銘柄のPERは13.51倍。EPSは1203円。少なくとも14倍水準の16842円くらいは早々に復活して水準。「NT倍率」が急拡大しているとの指摘がある。12.69倍は2013年12月25日以来2年8ヶ月ぶりの高水準。
背景は日銀によるETF買い入れの思惑とされている。一方で東証マザーズ市場の売買代金は594億円。13営業日連続で1000億円下回っている。数日は主力中心の指数採用銘柄活況の継続になる可能性が高い。
大引けの日経平均株価は396円12銭高の16650円57銭と大幅反発。米雇用統計を受けた海外株高と円安トレンドを好感。債券市場では10年国債利回りがマイナス0.055%まで上昇する場面もあった。
東証1部の売買代金は2兆2593億円。PBRが1倍を大きく下回る地銀や海運などのセクターが上昇。一方、医薬品や食品など業績が景気動向に左右されにくい「ディフェンシブ銘柄」は下落。小野薬はストップ安。

9日(火):
週明けのNYダウは14ドル安の18529ドルと反落。S&P500は一時史上最高値を更新した。週末の雇用統計で湧いた市場も一服という印象。ゴールドマンは今年12月の利上げ確率を従来の65%→75%に引き上げた。週明けの日経平均株価は大幅反発。これで5月のGW明け以降の週明けは10勝4敗。週明け高のアノマリーとなっている。
7月雇用統計発表後の日経平均は月曜601円高、火曜386円高ときて6連勝だった。先月に比べれば「前場に下がったところでは後場から日銀のETF707億円買いが入る」というプライオリティが加わった。売り方にとってはハンディとなろう。
「高PER→低PER/PBRへの巻き戻しと追加金融緩和を好感した8000番台への買い」の図式。「これまで買われ続けてきた成長(グロース)株が売られ、売られてきた割安(バリュー)株が買われる展開きっかけは日銀のETF購入額倍増。
日銀の追加緩和以降目立っているのが、小売りや食品、医薬品などの内需株の下落。一方、商社や金融、自動車など割安に放置されていた景気敏感株は上昇」とは日経ヴェリタスの指摘。

マザーズ指数の5ヵ月ぶりの安値の一方で日経平均VIは19.89と今年初の20%割れ。木曜が山の日で休場なので既にSQまでの3日。SQ→SQのかい離が今年は7回のうち6回で1000円以上。7月SQ値は15331円。今のところ1000円以上かい離のアノマリーは成立している。

日経朝刊の「大機小機」は「GDPに30兆円のズレ?」。生産にかかわった者の所得や企業利益を合算した分配側GDP。本来は各企業が生んだ付加価値を積み上げた数字と一致する筈。しかし、日銀の研究者が税務データを使って試算してみたら分配GDPは過去20年の間、公式GDPを上回っていたという。2014年度は525兆円でマイナス0.9%成長。しかし試算値は556兆円でプラス2.4%成長。30兆円のズレがあったという。「異次元緩和が効いた」。「これで名目GDP600兆円の達成確実など」の声は歓迎。しかし「消費税引き上げの景気への打撃はそれほどでなかった」とまで言うのだろうか。

大引けの日経平均株価は114円40銭高の16764円97銭と続伸。為替の円安トレンドと金利の上昇一服を好感との解釈ながら、下値では日銀が買うという安心感がじり高につながった印象。任天堂が2000億円以上の売買代金となったことは「個別と指数の同居」という声も聞かれる。東証1部の売買代金は概算で2兆2254億円。ブラザー、日清食品が上昇。スクリン、第一生命が下落。

10日(水):
東京株式市場は「ポケモン相場」が復活。加えてTOPIXコア30を中心とした大型株の堅調継続。「下がらないことへの安心感が買い意欲を高めた」との解釈。「押し目待ちに押し目なし。夏枯れどころか夏祭り」という声まで聞かれ始めた。売買代金トップは日経レバを抑えて任天堂。2位がソフトバンク、3位が前日のストップ安から一転大幅高の小野薬品。「短期投資家好みの銘柄が商いを集めた。お盆の新規投資家参入タイミングの可能性」とも言われる。
「信用買い残の記録的な減少ぶりが注目されていたが、株価が戻りに入れば、今度は好取組銘柄の売り方の踏み上げ狙いが手掛かり」と市場関係者。日経朝刊の「大機小機」は「マイナス金利の検証」。「マイナス金利が指すのは通常の金銭貸借の金利ではない。債券を満期まで持っていたらという仮定の下で、価格を金利という言葉に翻訳しているのである。この翻訳された金利を通常の経済取引や企業社会に当てはめるとおかしなことが起きる。
誰もが違和感を感じることになる。マイナス金利に対する市場の反応が日銀の期待通りでない理由かも知れない。マイナス金利のさらなる深掘りが物価上昇目標の実現に役立つかは疑問である」。

大引けの日経平均株価は29円85銭安の16735円12銭と3日ぶりの反落。前日までの続伸で500円超上昇していたことと休日控えで売り物優勢の展開となった。後場は日銀によるETF買いへの思惑で上昇に転じた場面もあった。東証1部の売買代金は2兆906億円。ソフトバンク、ダイキン、三菱UFJ、大成建が上昇。や大林組など建設株が高い。ファストリ、KDDI、ファミリーマート、日電産、メガバンクが軟調。

12日(金):
NYダウ、NASDAQ、S&P500ともに反発し史上最高値を更新した。背景は1バレル43ドルへの原油先物価格の上昇と小売りセクターの決算の好調。特に約100店舗のリストラを発表したメーシーズの上昇が目立った。ただ売買エネルギーは低下しており3市場の売買高は約59.8億株。S&P500はこの1か月で9回目の最高値更新で6月下旬からの上昇率が7.0%に達した。過熱感への懸念は少ないものの市場関係者の間では割高感を指摘する声も出始めたという。
もっともロンドンFTは6日続伸しており、NYだけが突出している訳でもない。世界的なリスクオン思考はまだ続くと見た方がよかろう。「割高感を指摘する声が聞かれ始めると株価はさらに上昇する」。こんなマーフィーの法則のようなアノマリーもあるに違いない。

全体の95.6%が通過した4〜6月期決算は純利益で21.9%減益だった。今期純利益見通しは5.8%の増益。業績底打ち感が漂う予感を感じさせてくれている。大引けの日経平均株価は184円80銭高の16919円92銭と反発。6月1日以来およそ2カ月半ぶりの高値水準となった。ザラバ高値は16943円とSQ値16926円を上回る場面もあったが終値で上回ることはできなかった。米国市場で主要3株価指数がそろって最高値を更新したことから買いが先行。オプションSQ算出に絡む売買が買い越しになったことも好感との解釈。
「10日に日銀がETFを707億円買い入れたことも需給面での安心感につながった」との声も聞かれる。休日の谷間で市場参加者が少なかったが東証1部の売買代金は2兆1364億円超。NT倍率は一時12.80まで上昇。指数寄与度の高い銘柄 の上昇が感じられる展開となった。森永菓、DeNAが上昇。アルバック、任天堂が下落。東証マザーズ指数は3日続伸。

(2) 欧米動向
「8月26日のジャクソンホールでのイエレン議長の講演が次の掴みどころ」という声が聞かれる。
一方でジェフェリーズは「米大統領選挙は株式市場にとって追い風になる可能性」との指摘。
「両候補はインフラ投資の拡大を政策に盛り込んでいる。
インフラ投資が拡大すれば株式市場は恩恵を受ける。
インフラ投資が拡大した過去のデータではS&P500は拡大前に10%上昇。
拡大後に12%上昇する傾向。
インフラ投資拡大前にはエネルギー関連銘柄が市場を牽引。
拡大後は金融・工業セクターがアウトパフォームする傾向が強い」という。



(3)アジア・新興国動向

先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち23指数が上昇。
上位1位ベトナム週間騰落率4.51% 2位日本4.09% 3位ドイツ3.34% 4位トルコ2.84% 5位香港2.80%
下位25位インドネシア▲0.79% 24位フィリピン▲0.18% 23位米国0.18% 22位インド0.26% 21位台湾0.64%

【展望】

スケジュールを見てみると・・・

15日(月):4〜6月GDP、NY連銀製造業景気指数
16日(火):首都圏マンション販売、米消費者物価、住宅着工指数、鉱工業生産
17日(水):訪日外国人客数、BBレシオ、英国失業率
18日(木):貿易収支、CB景気先行指数
19日(金):全産業指数

夏枯れとは縁遠く推移している株式市場。
過去のパフォーマンスが悪い月とはなかなか思えない。
日経平均8月相場は16年間で6勝。
因みにTPOIXの動きを見てみると・・・。
2011年▲8.4%、2012年▲0.6%、2013年▲2.3%、
2014年▲0.9%、2015年▲7.4%。
特に2015年は8月24日にチャイナショックでNYダウが一時1000ドル安。
この歴史を人間は忘れるが機械は記憶しているところがややこしい。
一般的な8月のアノマリーは・・・。
ドル安円高株安。
株価が上下に揺れるサマーラリー。
ヘッジファンドの45日ルール(8月15日)よる軟調。
アメリカ国債の利払い(8月15日)で円安→円への換金売りで円高。
(この二律背反は結構いい加減ながら広く言われているから不思議なもの)。
お盆の週に上昇すれば8月月足陽線。
下落なら月足陰線。
因みに、今年のヒジュラ暦の新年は10月3日。
昨年は10月15日だったので約2週間早まることになる。

8月2日に閣議決定された「未来への投資を実現する経済対策」。
その中の「21世紀型のインフラ整備」。
ここの明日の材料が散りばめられている。
個別銘柄に落としていく作業は必要だが・・・。

★外国人観光客4000万人時代に向けたインフラ整備
Wi−Fiの利便性向上、カード決済環境整備、クールジャパン、
CIQ体制の整備
★農林水産物の輸出促進と競争力強化
輸出基地、加工施設などの整備
農林水産競争力強化プログラムの年内策定
★リニア新幹線と整備新幹線
低金利を利用したインフラ整備:財政投融資の手法活用
★第4次産業革命:IoTビジネス創出、AI研究拠点整備、介護へのロボット導入
★イノベーション:産学官の連携強化;医薬品・医療用機器も。
医療分野のデジタル化、ICT化
★生活密着型インフラ整備:鉄道立体交差化、ホームドア設置推進、バリアフリー化
上下水道の整備
★空き家の活用などでの地域経済活性化
★建設業の担い手確保・育成
★国家戦略特区活用→来年度末までを集中改革強化期間とする

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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