07月4週
【推移】


25日(月):
週末のNYダウは53ドル高の18570ドルと反発。S&P500は9.86ポイント高の2175ポイントと過去最高値を更新した。
S&P500種採用企業の2016年第2四半期決算は前年同期比3.0%の減益の見通し。7月当初の4%減益見通しからは好転した。
500社中125社が第2四半期決算を発表したが利益がアナリスト予想を上回った企業の割合は68%。売上高がアナリスト予想を上回った企業の比率は54%。

今週は194社が決算発表予定。中国・成都で開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議。「あらゆる政策手段を用いることで合意」というのが結論。金融政策のユーフォリアに包まれた格好で企業業績は減益ながらも悪化はしないという状況。突発的な事件でも起こらない限り指数の最高値更新は続こうか。

夏季休暇の安部首相を追ってみると・・・。7月18日富士桜カントリーで経団連の御手洗名誉会長、榊原会長、渡文明氏。19日中華料理「異彩中国菜館湖宮」で増岡鉄鋼ビル専務。20日富士桜カントリーで増岡鉄鋼ビル専務、21日焼き肉鉄庵で渋谷耕一リッキービジネスソリューション社長、加計学園理事長。22日富士ゴルフコースで渋谷耕一リッキービジネスソリューション社長、加計学園理事長。23日富士ゴルフコースで山崎学日本精神科病院協会会長。ほとんどがおともだち関連に見えるが、日本精神科病院協会会長だけが気にかかる。
日経平均株価は6円安の16620円と続落。マツダ、三菱地所が上昇。任天堂、NTTが下落。

26日(火):
NYダウは77ドル安 の18493ドルと反落。「過去最高値圏で推移しているため、利益確定売りが出やすかった」との解釈。27日にFOMCの結果発表があることに加えアップルやフェイスブックなどの決算も待ち受けていることからの様子見モード。
M&A関連でベライゾンによる米ヤフ─買収の正式発表があったが資金負担懸念からベライゾンが下落。原油先物価格が一時バレル43ドルを割れこんだことからエネルギー関連セクターが軟調だった。
小幅反発でスタートしたものの前日比6円安となった前日の日経平均株価。今年4回目の前日比10円以内の変動となった。25日線からの乖離は依然4%台であり、この上を買い上がるには何らかの材料が欲しいところ。
市場の8割は日銀金融政策決定会合での金融緩和を望んでいる。しかし、また「見送り」で売られることへの警戒感も働いている。

一部報道では「追加緩和を議論へ…28、29日に決定会合」というのも見られ始め、催促は続いている印象。
ただ「緩和に踏み切った場合でも、小幅な修正にとどまる公算が大きい」と指摘されており何でも欲しがる市場の過大な期待感は禁物だろう。
一方で7月26日は「下げの特異日」。むしろ小幅安で下がっておいて7月 29日の「上げの特異日」で上に抜けるというのがベストシナリオ。上げの特異日と下げの特異日。6月はその通りになった。7月26日下げの特異日と7月29日上げの特異日というのがスケジュール。
日経平均株価は237円安の16383円と3日続落。メルコ、ホシデンが上昇。JSR、トヨタが下落。

27日(水):
NYダウは続落、NASDAQは反発、S&P500は小動きと指数はマチマチの動き。FOMCを待つ小動きだった。新築一戸建て住宅販売は前月比で増加し、過去8年余りで最高水準。予想よりも早く9月利上げになるかどうかが課題視され始めている。政府がまとめる経済対策への警戒感を背景としてアノマリー通りに下落した7月26日。金融緩和についても8割が期待感を持っている。

しかし「現状維持」に対する警戒感から金融・不動産セクターが軟調な展開。「円高の進行や日銀金融政策会合前に売り込みづらい銘柄群が弱かったことは警戒を強める材料」。こういう声も聞かれる。
もっとも日経朝刊では「日銀に追加緩和論、政府との連携を重視」の見出し。「市場は追加緩和を織り込んでおり、緩和見送りなら円高・株安が一気に進む可能性」と脅迫状のような書き方。また「見落とされているかもしれない政策手段の一つはフォワードガイダンス」と指摘をする市場関係者もいる。
4月の外資系ベンダーの見通しよりもさらに突っ込んだコメントが増えてきた印象。企業業績という点では米アップルの動向が焦点だった。決算発表後の同社株は5%超上昇しており電子部品セクターの悪材料出尽くし感につながろうか。
市場を支配する雰囲気あるいは市場心理というのは猫の目のようにコロコロ変わるもの。前日は日銀の「現状維持」を警戒した心理が支配的だった。しかしたぶん今日は追加緩和期待の復活。日経の見出しに結構左右される面は否めない。
前日は「財政支出6兆円に」が主食で「ただ今回の対策は2017年度予算を含めた総額。直後の2次補正案は1.3兆円程度の公共事業を中心とした2兆円程度の規模」。これに幻滅感を表してより多くを催促した下落だったとも考えられる。
(1)1億総活躍の関連施策
(2)21世紀のインフラ投資
(3)英国のEU離脱対策
(4)復興・防災対策
などには見向きもしなかった印象だ。

そして今日は「最低賃金24円上げ」の横に「日銀内に追加金融緩和論」の見出し。ほぼ3%の賃上げを実現する方向で有言実行の世界。それでも、市場は「追加緩和」に猫じゃらしのようにまとわりつくのだろう。
「正副総裁らが検討作業にはいった」というのが妙に現実感を伴っている。
(1)年マイナス0.1%のマイナス金利の引き下げ
(2)年80兆円の国債購入額の増額
(3)ETFなどの資産購入枠拡大
「複数の委員が反対に回る可能性もある」と逃げの記載もある。しかし「見送りで円高・株安は一気に進む可能性」と迫ったむすび。市場の無制限の催促の代弁者という気がする。確かに市場は森羅万象を織り込んだ世界。
だから市場は神聖という見方は存在する。しかし、この「一気に進む」は市場至上主義どころか市場独裁主義の様相だ。活字や映像が国家を脅迫する構図に見えなくもない。市場関係者として、確かに緩和も政策も過大な要求にいくらでも応えてほしいとは願う。
どうも違うような気がする。
マイナス金利で本当に社会や国家が良くなるのかどうか。ETFを中央銀行が買うことで齟齬はきたさないのか。無尽蔵な中央銀行の国債購入が財政規律の問題はいいとして将来の円安超インフレへの導線にならないのか。節度と自制のある要求なのかどうか。目先の小手先にこだわり過ぎて未来への禍根はないのかどうか。ここは結構重要だろう。猫じゃらしで遊んでいずれマタタビで寝てしまうのでは元も子もない。
日経平均株価は281円高の16664円と4日ぶりの反発。信越化学、カゴメが上昇。伊藤忠、サノヤスが下落。

28日(木):
NYダウは1ドル安の18472ドルと小幅に3日続落。ナスダックは上昇しておりマチマチの動き。FOMCは年内利上げの可能性を示唆したものの9月はなさそうな気配で通過した。アップル、ボーイングが上昇。コーラが下落。3市場の売買高は73億株と拡大した。リズムという観点で市場を見てみると今年は1月2月が大幅下落だったが、その後は上昇下落の反復。順番からいくと7月は上昇の順番。となると8月は下落?という見方をするか、4月下落だったから8月上昇のアノマリーと見るか。ポジとネガで同じものが違って見えるのもマーケット。
加えれば今年の日経平均の連続記録。6連騰2回、5連騰1回、4連騰3回、3連騰3回。7日続落1回、6日続落2回、5日続落0、4日続落4回、3日続落3回。3と4のリズムがやはり多い。
5や6はイレギュラーだったと言えよう。日経平均株価は年初来13%程度の下落。
4月25日高値17613円。7月21日高値16938円。どうも17000円の地帯が重いことだけは間違いない。マイナス金利導入以降の日銀の「現状維持」がもたらして来た歴史。3月15日225先物150円安(ドル円1円50銭円高)4月28日225先物770円安(ドル円4円02銭円高)6月16日225先物530円安(ドル円2円46銭円高)。日経レバ(1570)の売りやダブルインバース(1370)の買い増はこれを見ていたのだろう。
日経平均株価は187円安の16476円と反落。104円台の円高トレンドを嫌気したことに加え明日の日銀金融政策決定会合に対する警戒感が台頭したとの解釈。東証一部の売買代金は2兆3738億円。アドバンテスト、アルプスが上昇。三菱電、フィルムが下落。関東地方もようやく梅雨明け宣言が聞かれたが、さて相場はというところ。

29日(金)
NYダウは15ドル安の18456ドルと4日続落。ナスダックは15ポイント高の5154ポイントと3日続伸。S&P500はポイント高の21700ポイントとマチマチの動き。米GDPや日銀金融政策決定会合を控え様子見状態。
原油価格の3ヶ月ぶりの安値や貿易赤字の拡大は気にかかるところ。7月第3週の海外投資家は1261億円の買い越し、信託は660億円の買い越しと元に戻った。

日経平均株価は92円高の16589円と反発。日銀がETFの年間購入額を6兆円に増加したこと好感した。「ETFだけ」では物足りないという声もある。
しかし、日銀の発表文「金融緩和の強化について」に「2%の『物価安定の目標』をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、『量的・質的金融緩和』・『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検討を行う」とあったことを好感。9月会合での金融緩和期待が膨らみ始めた格好。
東証一部の売買代金は3兆2967億円と拡大。三井住友、野村、トヨタ、ソフトバンク、ソニーが上昇。ヤマハ発、村田、伊藤忠が下落。

(2) 欧米動向

FOMCと日銀金融政策決定会合で7月も終了。
8月はリオ五輪もさることながら夏の終わりのジャクソンホールの季節となる。
昨年は欠席していたイエレンFRB議長が出席予定ならイベント視されるだろう。
ワイオミング州ジャクソンホールで毎夏開かれる経済シンポジムのこと。
正式にはカンザスシティ連銀経済シンポジウムという。
イエレン議長の講演予定は8月26日。
シンポジウムはカンザスシティ連銀主催で1978年にスタート。
それ以来毎年開催されてきた。
米国西部の山岳地域にあるワイオミング州の北西部にある谷。
この谷の南部に位置し、唯一の都市であるジャクソン市のことを通称「ジャクソンホール」と指す。
だからジャクソンホールは会場名ではなく地名。
イエローストーン国立公園やグランドティトン国立公園など全米有数の観光地の拠点でもある。
シンポジウムには世界中から中央銀行の政策担当者や大手銀行のビジネスマンが招待。
金融市場について意見交換が行われるため市場の注目度は高い。
2010年のシンポジウムの講演で、バーナンキFRB議長が量的緩和第二弾(QE2)に言及したことで有名。
「毎年夏になると追加緩和期待が高まる景気動向も恒例」という声があった。
最近では「夏の避暑を兼ねたジャクソンホールで毎年アメリカの金利動向が気にかかる」だろうか。


(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち10指数が上昇。
上位1位トルコ週間騰落率5.11%、2位ドイツ1.87%、3位フランス1.34%、4位オーストラリア1.25%。5位タイ0.99%。
下位255位シンガポール▲2.60%、24位ポーランド▲2.60%、23位メキシコ▲1.84%、17位NY▲0.75%、15位日本▲0.35%。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・

29日(金):黒田日銀総裁会見、展望レポート、消費者物価、鉱工業生産、米GDP速報値
週末:東京都知事選挙
1日(月):自動車販売、米ISM製造業、中国製造業PMI、カナダ、スイス休場、IOC総会で東京五輪追加種目決定
2日(火):マネタリーベース、消費動向調査、米個人所得、新車販売
3日(水):6月日銀会合議事要旨、米ADP雇用レポート、ISM非製造業景況感
4日(木):米製造業受注、BOE金融政策委員会
5日(金):景気動向指数、毎月勤労統計、米雇用統計、貿易収支


【8月】10勝16敗(12位)

2日(火) 変化日
3日(水) 新月
5日(金) リオ五輪(〜21日)、米貿易統計
10日(水)変化日
11日(木)新しい祝日「山の日」
12日(金)米小売売上高
15日(月)GDP速報値、終戦記念日、土星逆行開始
16日(火)米CPI
18日(木)新月
19日(金)変化日
22日(月)大幅高の特異日
25日(木)変化日、カンザスシティ連銀経済シンポジウム(ジャクソンホール〜27日)
26日(金)米GDP改定値
29日(月)サマーバンクホリデーでロンドン休場
31日(水)欧州最大の家電見本市IFA(ベルリン〜9月7日)、ポイントの日、水星逆行開始


電子端末では先物の逆ザヤに関する考察。
(1)先物の爆買いがなくなった
7月第2週以降、キャッシュ比率を高めていた年金や投信が一気に株・債券買い。
海外投資家は現物3512億円買い越し。
先物6495億円買い越し(現先合計1兆7億円)
(2)スワップ関連
米銀などはマイナス金利でドルを円転できる。
だから先物割安・現物割高の局面でも先物売り現物買いが可能。
だから先物が売られる構図。
マイナス0.3%で調達してマイナス0.2%で運用して利益が出る。
マイナス0.2%の運用だけみるとマイナスだが全体では0.1%のプラス。
(3)現物株の貸出フィーが上昇
先物売り・現物買いのポジションが減っており、現物貸出フィーが上昇。
裁定買いをやる気が減っている。
となると、もしもマイナス金利幅は増加するとさらに裁定買いは減少することになる。
やや複雑だが・・・。

ITソフトの業界にインセプションデッキという言葉がある。
インセプションデッキとは「プロジェクトの全体像(目的、背景、優先順位、方向性等)を端的に伝えるためのドキュメント。
プロダクトを作ることについてWHYとHOWを明らかにするための10の質問を考えてみようというもの。

以下は10の質問
《WHY》
我われはなぜここにいるのか
エレベーターピッチを作る
パッケージデザインを作る
やらないことリストを作る
「ご近所さん」を探せ

《HOW》
解決案を描く
夜も眠れなくなるような問題は何だろう
期間を見極める
何を諦めるのかをはっきりさせる
何がどれだけ必要なのか

もっと簡潔にすると・・・。

☆なにをなんのために作るのか
☆誰に向けて作るのか
☆どう売るのか
☆なにをやって、なにをやらないのか
☆誰と作るのか
☆どうやって作るのか
☆いくらでいつまでに作るのか

インセプションデッキでソフトウェアのプログラミングだけでなく投資にも役立つような気がする。

★どんな株になんのために投資するのか。
★誰がそのシナリオを理解し共感してくれるのか。
★どう相場は進んでいくのか。
★なにをやってなにをやらないのか。
★誰と相場に向かうのか。
★どうやって相場に対峙するのか。
★いくらでいつまで投資するのか。


(兜町カタリスト 櫻井英明)


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