07月3週
【推移】

19日(火):
先々週は4日続落。先週は金曜日まで5連騰。リズムは「2」とか「3」から少し変化。上下ともに長続きするようになってきた。
6月24日の英国民投票を受けた急落分を埋めた。25日線、13週線、26週線を上回った。主力大型株や出遅れ金融株などが主役となった。為替も円安トレンド。週末の主役は任天堂の大商い。売買代金4760億円は一銘柄で1日の売買代金として過去最高。東証1部の売買代金の約15%を占めた。6連騰で週間上昇率は70.1%。値幅は11510円。225非採用大型銘柄の復活は指数万能主義から個別銘柄相場の象徴だろうか。あるいはファーストリテのストップ高。依然として225中心の商いの象徴なのだろうか。
東証マザーズ指数先物は抽象的な指数の代表なのが具体的な銘柄の代表なのか。この選別の週が始まった。日曜日経ではREITの分配金が増加しているとの報。賃料収入の増加が背景という。株高の裏側でREITの人気も衰えていない印象。

月曜、日経ではみずほがSBIと共同で海外送金の時間を大幅に短縮する新システムの開発の報。フィンテックへの進出で「ブロックチェーン」技術を活用。今数日かかっている海外送金を数秒で完了できるようにするという。実用化のメドは2018年。海外システムでは先行しようということなのだろう。先週の主要市場で日経平均は9.21%の上昇で上昇率トップ。以下トルコ6.16%、香港5.33%、ブラジル4.59%。一方最下位はベトナムの0.89%、英国1.19%、マレーシア1.45%、スイス1.47%、米国2.04%。NYを仰ぎ見てきた風景に変化があった印象。
日経平均株価は225円高の16723円と6日続伸。任天堂、イマジカロボ、Vテクが上昇。ソフトバンク、LINEが下落。

20日(水):
NYダウは25ドル高の18559ドルと8日続伸。過去最高値を更新。8日続伸は2013年3月以降で最長となる。NASDAQは19ポイント安の5036ポイントと続落。S&P500は3ポイント安の2163ポイントと反落しマチマチの動き。
IMFが世界経済見通しで、世界全体の成長率の見通しを引き下げたことが悪材料との解釈。「英国のEU離脱決定で不確実性が大きく増した」との指摘を警戒との解釈もあるが今更という印象。

本格化してきた決算発表でS&P500採用銘柄の第2四半期は前年同期比4.3%の減益見通し。強弱まちまちの決算への評価をめぐる展開が予想される。
ドイツのZEW景気期待指数は2012年11月以来の低水準。一方で米6月住宅着工件数は市場予想を上回る増加で為替はややドル高傾向。引け後に発表されたマイクロソフトの決算は売上高が2.1%増加で着地。純利益は黒字転換となり時間外取引で株価は上昇。明日への期待感となった。

VIX(恐怖)指数は11.97%まで低下しており、恐怖感はほとんどない状態。週足では26週移動平均線(16347円)を越えたのが先週。昨年8月半ば以降、越えられなかった壁を越えた。抵抗地帯は支持地帯になったとすれば明るいモードでもある。
日足での抵抗域だった25日移動平均(15780円)を越えて5日。プラスかい離は5.97%だから目先過熱感の水準。4月22日が5.94%(日経平均17572円、25日線16586円)。昨年11月9日が5.89%(日経平均19642円、25日線18550円)。25日線からのかい離が5%を越えてしばらくして株価は反落した。この轍を踏むのかどうか。
個別銘柄の最大売買代金やアベノミクス以降の週間上場幅記録更新などセオリーを破ってきた。新たな数値への挑戦の時期と見たいところ。一目均衡の雲の上限(16703円)を抜けて巡航というのがベストシナリオ。
日経平均株価は41円安の16681円と7日ぶりの反落。エスケイ、リソー教育が上昇。任天堂、マーベラスが下落。

21日(木):
NYダウは9日続伸。S&P500とともに過去最高値を更新した。背景はマイクロソフトやモルガン・スタンレーなどの四半期決算の好調。「企業利益が相場の一段の上昇を支えるとの楽観が広がった」との指摘がある。
「マイクロソフトは米国の景気動向を測る銘柄の一つ。経済全体をある程度反映しており、全体に波及し得る」とされる。S&P500採用銘柄が発表した決算のうち78%が利益、61%で売上高が市場予想を上回っている。それでも第2四半期決算については5%程度の減益の見通し。「足元が悪くても先行きの明るさを求めたい心理が強い」という声も聞かれる。
今年前半は公益・電気通信セクターなどディフェンシブ銘柄が相場をけん引。金融やハイテクセクターは出遅れていた。最近は出遅れてセクターが先行するセクターに付いていこうとしている。リターンリバーサルあるいはアンワインドの展開とも言えよう。

一部報道で「経済対策の事業規模を20兆円超で調整」とされたことは好感されよう。当初は10兆円超の見込みだったから規模は倍増する可能性が出てきたことになる。事業規模20兆円超の内訳は「国・地方の追加の財政支出が3兆円超。国が低利で民間事業に長期融資などを行う財政投融資が最大6兆円程度。国の補助を受けて民間企業が行う事業が6兆円程度。財政投融資とは別に政府系金融機関が手がける融資が5兆円程度」との観測。追加の財政支出はインフラ整備が主体。訪日客拡大に向けた地方の港湾整備、農産物の輸出拠点設置などが構想されている。財政投融資はリニア中央新幹線の大阪延伸前倒しに約3兆円。整備新幹線の建設に約8000億円を充当の方向。
日経平均株価は128円高の16810円と反発。任天堂、野村が上昇。NTT、リクルートが下落。

22日(金):
電子端末では「ポケモノミクス、ベテランのため息」。任天堂の活況の裏側で、個別株を語れないし、興味もない若手証券マンの多さが嘆かれているという。投資家からは「物足りない」という評価が多いという話も紹介されている。「値動きの大きさから証券マンは推奨をためらう。

一方、スピード優先の短期筋は玉石混交の情報を基に資金をつぎ込む。そして市場は過熱に包まれている」。確かにかつて辿った道は「相場破れて相場あり」みたいな死屍累々。業界は懲りたのかどうか、株ではなく投信や保険、外債の販売にシフト。小賢しげな資産形成アドバイスと闘う姿勢満載の株情報。どちらがいいのか結論は出ないのだろう。ただ、少なくとも歌を忘れたカナリアや闘う姿勢のない虎などなんの成長もない。

そして「今回の上昇に乗り遅れた」というベテランの声。市場関係者は動いている株ばかりを語り動きが止まると語らない習性。ただ個人的には「今回は指数ではなく個別株」と言っていたくせに任天堂も見つけられず。しかも日経平均は大幅な戻り。株を語らぬ証券マンを揶揄するよりも、見通しを間違えた自分を反省するときなのだろう。
日経平均株価は182円安の16627円と反落。任天堂、サノヤスが上昇。トヨタ、三菱UFJが下落。

(2) 欧米動向
NY市場は過去最高値を更新。
2009年3月から始まったとされる長期ブル相場はまだ続いている。
この長期ブル相場は昨日まで2687日上昇継続で歴代2位。
歴代トップは1987年→2000年の4494日。
忘れもしないITバブルの時のこと。
面白いアノマリーがある。
「長期ブル相場で主要指数が1年以上過去最高値を更新せず、その後更新。
改めてブル相場継続との認識が高まった場合、主要指数はその後大きく上昇」。
S&P500が過去最高値更新まで14ヵ月以上かかったのは過去5回。
そこからの上昇率は20〜200%。
S&P500が2015年5月21日以来過去最高値を更新したのが7月11日。
S&P500は2137ポイント。
20%上昇で2564ポイント。
200%上昇の4274ポインというのはどのくらいの時間軸かは分からない。
因みにNYでは「YARP」という言葉が聞かれ始めているという。
「yield at a reasonable price」の略語で「適度な価格とそれなりの配当利回り銘柄」。
世界的金利の低下を背景に、「高利回り・ディフェンシブ」が対象となってきたとの観測。
債券のかわりに株を保有するという代替資産。
本当に「債券よサヨウナラ」になっていくのだとしたら心強い。

加えれば・・・。
このところの動きがまとめられている。
(1)中長期資金主体にブレグジット前にキャッシュ比率を上昇
(2)ブレグジット決定で短期筋は大規模なロングショートポジション
   そしてロングオンリーの投げは加速
(3)ブレグジット決定で当初は短期筋の思惑通りの展開で株下落
(4)その後ブレグジット問題は短期の課題ではないとなり金融緩和傾向
(5)キャッシュ比率を高めていた年金投信などが一気に株・債券へ資金投入
(6)株の買いは指数中心でインデックス型
(7)インデックス買いの影響でボラティリティが上昇→個別株にも波及
(8)売られ過ぎの銘柄もリバウンド、特に買い戻しの中核となった

こう考えるともともと売られ過ぎていた日本株の戻りの大きさの背景は説明できることになろうか。
この買い戻し主体の動きが6日も続いたのだからすごい。
そして3〜4日の買い戻しに後半は新規買いが加わったと考えられようか。

(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち16指数が上昇。
上位1位ブラジル週間騰落率2,56%、2位ポーランド1.91%、3位メキシコ1,76%。
「ブラジル経済浮揚は五輪後も狭き道」という指摘が聞かれる。
閉鎖的な市場、高い労働・社会保障コスト、暫定政権、試される構造改革。
2年連続マイナス成長の公算で資源ブームが去り中間層没落との観測。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・
25日(月):貿易統計、米民主党全国大会(〜28日)、独IFO景況感
26日(火):企業向けサービス価格、米FOMC(〜27日)新築住宅販売、
27日(水):赤坂ガーデンテラス紀尾井町開業、米耐久財受注、中古住宅販売、英GDP
28日(木):日銀金融政策決定会合(〜28日)
29日(金):黒田日銀総裁会見、展望レポート、消費者物価、鉱工業生産、米GDP速報

ポケモン、LINEにソフトバンク。
ファーストリテは見えるものを作っているが、多くの話題はほとんど具体的に接したり手にすることのできないものばかり。
この銘柄人気が東京市場の源泉となっての7月相場。
クーデターやテロの話題がある一方での対照的な銘柄観。
どちらかといえばハードよりもソフトの世界中心の動き。
とても興味深いところ。

「望ましいのは円安ではない」というのが木曜の日経「大機小機」の隅田川氏。
「円安は企業の持続的な成長基盤の強化にはつながらない。
これが今回の125円までの円安トレンドの経験則。
円安による物価引き上げや企業収益増大効果の継続は、円安が進み続けなければならない。
当然これは不可能。
円安の効果は短期的なものに過ぎない。
労働生産性を高め、民活等が発揮できるような成長戦略が効果を発揮すれば為替は円高方向へ動く。
円高は輸入価格の下落を通じて交易条件を好転させ、国民の実質所得を高める。
国民の生活や福祉水準も上昇する。
これが円高のトリクルダウン効果だ。
長期的には、企業の実力に応じて円高への動きが生まれるような経済を目指すのが正しい道だ」。
因みにトリクルダウン効果とは富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透するという考え方。
トリクルダウン効果(仮説)ともいう。
大企業や富裕層への税の優遇、大型の公共投資などが経済活動を活性化させ、めぐりめぐって低所得層も豊かになり、社会全体の利益になるという政治的な主張。
アメリカのレーガノミクスの時代に登場した。
同じ紙面にあったのは「追加緩和→円安は限定的か」の見出し。
市場関係者のコメントは「追加緩和を実施しても円安に触れるのは数分だけ」。
「追加緩和で円安になる。でも1分くらいでしょう」。
この程度の時間軸でしかない相場関係者がきっと多いのだろう。
一生懸命天下国家の行く末を考えて出された結論の賞味期間がわずか1分。
これではFX亡国論が登場してもおかしくはない気がする。
もうひとつの見出しは「ポンド安、英に海外マネー」。
ポンド下落で英国の企業や不動産などに海外投資家の資金が流入する兆しはあるという。
ソフトバンクのアーム社買収だってその一部。
あるいは中国マネーのロンドン不動産買いまくりも同様かも知れない。
英国の企業や不動産に価値があり続ければ外資の買収も続くのだろう。
しかし一時的にポンド安で買い物が入ってもその先はどうなるのか。
あるいは英国民が守ってきたものがいとも容易く買われてしまいそうな現実。
壮大な通貨安のもたらす実証実験はまだ始まったばかりである。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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