06月2週
【推移】

6日(月):
週末のNYダウは31ドル安と3日ぶりの反落。NASDAQも8日ぶりの反落となった。もともと減少が予測されていた雇用統計は非農業部門雇用者数が3.8万人増。大幅に市場予想の16.4万人増を下回って着地。5年8カ月ぶりの低水準となった。
夏の間に利上げが実施されるとの観測は一気に後退。6月利上げの確率は4%と前日の21%から低下。7月利上げの確率も34%と、前日の58%から低下。2日間で700円近い下落をみた日経平均の週末は一応反発。先週末の空売り比率は42.3%と上昇。今年1月26日の43%に迫っている。しかし45%程度が限界とすれば悪材料はそろそろ出尽くしと見ても良いかも知れない。

今週末はメジャーSQ。SQに向けて安いトレンドが戻ってきたと考えれば、荒れるSQ週の火曜・水曜という想定だろうか。3月メジャーSQ値は16586円攻防戦の週とシナリオで良いのかも知れない。長い目で見れば「セル・イン・メイ」のアノマリー。「5月が高くなれればセル・イン・メイ」は成立しないというショーク的市場観測もある。そこまで意地悪く相場を見る必要はなかろう。
日経平均株価は62円安の16580円と反落。宮越。コムチュアが上昇。神戸物産、山一電機が下落。


7日(火):
週明けのNYダウは113ドル高の17920ドルと反発。5月10日以来およそ1カ月ぶりの高値水準。背景は原油高を受けたエネルギー関連セクターの上昇との解釈。NASADQ、S&P500ともに反発。S&P500は昨年11月3日以来約7ヵ月ぶりの高値。
イエレンFRB議長の講演。「政策金利は緩やかに引き上げていくのがおそらく必要だ」という内容。これはタカ派的との解釈。ドル円は一時106円台。しかしNY株式市場の上昇から107円台まで戻り。結局利上げの可能性が解釈によって高まったり低下したりしてはいるものの、米経済は堅調で一喜一憂しないことが重要なのだろう。期待するべき事実はS&P500の高値更新。2100ポイントというのは1年半の間なかなか抜けきれずに跳ね返されてきた水準。ここを上抜けるとNY市場の風景は変わると考えたいところ。利上げから約半年。その反動安を織り込んだという解釈も成り立ちそう。
日経平均株価は95円高の16675円と反発。国際帝石、コマツが上昇。鹿島、クミアイが下落。

8日(水):
NYダウは17ドル高の17938ドルと続伸。高値は18003ドルまであったが引けにかけて上昇幅を縮小した。NASDAQは反落とマチマチの動き。S&P500は一時2119ポイントまで上昇。2015年5月の過去最高値にあと一歩のところまで迫った。S&P500の過去最高値接近から「最大の注目点は最高値更新の有無。短期間で更新すれば、様子見を決め込んでいた投資家が相場上昇に乗り遅れまいとして一斉に投資に動くだろう」という声もある。供給の減少などを背景にWTI原油先物がバレル50ドル台まで上昇したことを好感。原油先物の年初来高値更新は米シェール産業の増産を招くのではないかとの指摘もある。ただ昨年10月レベルまで戻ったことは米経済にとっては明るい話だろう。

世銀は今年の世界成長率見通しを2.4%に下方修正。米国の成長率は2.7%→1.9%。日本は1月時点の1.3%→0.5%成長へ下方修正。「今さら」という印象もあるが、市場は素直に反応したというところ。

日経1面では「三菱UFJ銀、入札の特別資格返上へ」のトップ記事。メガバンクも国債離れ。ようやくやる気が出てきた印象。プライマリーディーラーという資格は発行予定額の4%以上を応札する義務を負っている。メガバンク等22社がそのメンバー。国内勢の返上は初めてだという。民間銀行の国債保有額は229兆円。メガバンク3行で54兆円。この3年で半分に減ったという。指摘は「日銀依存一段と」。債券の世界の地殻変動はいずれ株式の世界の恩恵に移行してくると読みたいところ。

内閣府が8日に発表した2016年1〜3月期実質GDP2次速報値は上方修正。前期比はプラス0.5%(1次速報値プラス0.4%)。年率換算ではプラス1.9%(同プラス1.7%)。事前予想では、中央値が前期比プラス0.5%、年率プラス1.9%。民間設備投資は1次速報値の前期比マイナス1.4%からマイナス0.7%に上方修正。
日経平均株価は155円高の16830円と続伸。パナソニック、大東紡が上昇。第一生命、ネクステージが下落。

9日(木):
日経朝刊では「為替離れ進む日本株」と指摘されているが相関関係が減ってきた。前日は取引前の水準からドル円はやや円高トレンド。それでも日経平均は155円上昇。
5月SQ値16845円をターゲットにして引けた。「底流は来週の日米金融イベントを控え大きくは売り込みづらいという自信」という指摘もある。裁定買い残は1兆8432億円、信用買い残は2兆5426億円と需給は悪くない水準。双方合わせても4兆3800億円程度で時価総額の1%に満たない水準で悪さのしようはなかろう。空売り比率も37%台と低下している。
25日線(16635円)も75日線(16627円)も上向きでサポート。26週線(16936円)が近づいてきた。ただ26週線は何度も跳ね返された鬼門。ここを抜ければ5%以上マイナスかい離している200日線(17749円)が見えてこよう。

日経では「新興企業、経常益8%増」の見出し。底堅い内需の取り込みや独自技術の強みを収益拡大につなげる企業が多いという指摘。実際そうだろう。ただ新興市場銘柄や中小型株で気にかけておきたいのは「夢と現実」。足元業績の好調に着目した銘柄の将来性というのはもちろんあろう。しかし夢を買った筈の銘柄の業績を気にすることもある。後者で二兎を追うと結構大変になることが多い。むしろ「夢は夢」、「現実は現実」と割り切ることの方が必要ではなかろう。
理想は夢と現実の一致なのだが、それには時間がかかるということを忘れてはいけない。夢先行投資は、持ち続けるか吹き値売り。現実優先投資は、レンジ売買。そんな投資戦略でも悪くはなかろう。要は「この株は何を目的に買ったのか」を明確にすること。企業に対してはこの「どこを目指している」という質問は結構される。しかし投資家にとっても明確な目的は必要不可欠だと考える。漠然とした投資で儲かることもあるのだろうが・・・。
日経平均株価は162円安の16668円と反落。東急、大成建が上昇。クボタ、野村が下落。

10日(金):
過去の6月の米株のパフォーマンスは良くない。1965年以降の6月のNYダウのパフォーマンスはマイナス0.29%。9月に次いで悪い。順位でいえばワーストツー。ただ過去5年で見るとS&Pは上げと下げの繰り返し。2015年▼2.1%。2014年△1.9%。2013年▼1.49%。2012年△3.95%。2011年▼1.82%。「6月の結果は9月ほどその後に影響しない」という声もある。因みに「今年は△の順番」という声も聞かれる。
日経平均株価h67円安の16601円と続落。日ハム、芦森工が上昇。キャノン、ホソカワミクロンが下落。

(2) 欧米動向
今後数カ月の火種の一つは「英首相、金融会見」
6月23日の英国のEU離脱の投票に際しての「残留支持」を訴えた。
これはドイツ国債の利回りが0.048%まで低下した背景にもつながる。
そして「中国の外貨準備再び減」。人民元安での買い支えのために279億ドルの外貨が減少したという。
ドル高がキツいのは日本ばかりでないし、人民元の余波が円に及んだと見ることもできる。
これが二つ目の火だね。サウジの非石油収入が3倍にする計画を発表し民間での45万人の雇用増計画。
これは原油価格の上昇への路線。世界経済にとってまた原油の呪縛が始まるのかも知れない。

あるグローバルストラテジストの指摘。

(1)このところのドル安円高の背景にはTPPの存在もあるのではないか。
大統領選の年でもあり表だってTPPを推進するのは憚られる米国。
代わりに「ドル安」にしてあげるからという飴になっているのかも知れない。
(2)そもそもTPPに対する米国の警戒感は日本製品の優秀さの裏返し。
   自信を持つことが必要かもしれない。
(3)消費増税先送りについて国債の格付け引き下げを懸念する声もある。
しかしS&Pもムーディーズなど海外の格付け機関は下げていない。
日本のR&Iだけが引き下げたというのは面白い。
(4)財政政策としてのプレミア商品券は、強制的消費につながり意外と面白い。
(5)日銀が何かするのではないかという警戒感を持つ外国人投資家は多い。

(3)アジア・新興国動向

先週の世界の株式相場は主要25株価指数のうち8指数が上昇。
上位1位ロシア週間騰落率、2位韓国1.6% 3位台湾、4位ベトナム。
下位25位スイス、24位ドイツ、23位フランス22位ブラジル、12位日本。
どちらかといえば先進国軟調新興国堅調の気配だった。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・。

週末・中国経済指標
13日(月):法人企業景気予測、米アップルの世界開発者会議(〜17日、シスコ)
14日(火):FOMC,米小売売上高
15日(水):日銀金融政策決定会合、首都圏マンション販売、訪日外国人、米生産者物価」、鉱工業生産、イエレン議長会見
16日(木):黒田日銀総裁会見、米経常収支、消費者部下
17日(金):BBレシオ、米住宅着工、メジャーSQ

10日 メジャーSQ、ポイントの日
14日 米FOMC(記者会見あり〜15日)、世界最大のゲーム見本市E3(ロス〜16日
15日 日銀金融政策決定会合(〜16日)、海王星逆行開始
17日 ポイントの日
19日 選挙年齢18歳に引き下げ
20日 満月
21日 ポイントの日、上げの特異日
23日 EU首脳会議(〜24日)、改正風俗営業法施工、ポイントの日
27日 テニス・ウィンブルドン(〜10日)
28日 大幅高の特異日
29日 石田浩二日銀審議委員の任期満了、ポイントの日、上げの特異日

1月2月は、月初から下落。
1月は21日、2月は12日に底打ち反転した。
3月はSQに向かって上昇し14日高値で31日安値。
4月は月初から下落で8日に底打ち、25日高値で月末大幅安。
5月はGW明けの月初安で2日に底打つ、月末高。
そして6月もまた月初からの下落。
リズムはこんな感じ。
いつかみた道と思えば下落はむしろ飼い葉の提供と考えても悪くはない。
ハーモニー的にはアコースティックの中国や原油の旋律は消えてベースの米金利問題。
時おりイベントチックな雇用統計などのティンパニーが響くといったところだろうか。
5日の新月で下がり21日の満月で上昇なんてシナリオでも良いかも知れない。

内閣官房日本経済再生総合事務局から出た
「日本再興戦略2016。これまでの成果と今後の取り組み」。
わかりやすいのは「成長戦略で日本はこう変わる」。
手を変え、品を変え市場の材料になる候補は
永田町や霞が関のチョットした資料のなかに埋もれていることが多いもの。

(1)ドローンによる商品配送が実現。
いつでも好きな時間に便利な場所で商品受け取りの指定も可能に。

(2)人が入れない危険な災害現場などで、ロボットが自律的に活動、けが人などを救助。
介護・医療、建設工事の現場でもロボットが活躍。

(3)自動走行で、交通事故や渋滞が少なく。
外出に不自由を感じる高齢者や障碍者などの活動範囲も拡大。

(4)IoTによる生産ライン管理の徹底により、
消費者は、自分の好みに合った製品をいつでも、すぐに安く購入できるように。

(5)指紋認証での決済、スマートフォンでの決済など、
どこででも、現金を使わずに商品を購入し、サービスを受けられることが当たり前になる社会に。

(6)生産設備に取り付けたセンサーにより設備の異常を早期に検知、大きな事故を未然に防止。

(7)家族の生活スタイルなどに応じて節電を決めて、節電量を取引市場で売買。
そのポイントや利益で、ちょっと贅沢に旅行・外食も可能に。

(8)人知能が医療現場での診療をサポート。
遠隔地の小さな病院でも最先端の知見による診察・治療が可能に。

(9)人工知能が音楽、美術、工芸などで優れた作品を創作し、それを楽しむ時代に。

(10)日本全国に魅力ある観光地が溢れ、外国人で賑わいも。
地方が活性化し、若者も移住。
休暇の分散取得で、高速道路の渋滞もなく、快適な旅行の実現。

(11)ウェアブル端末で、テーラーメイドの病気予防・健康サービスが受けられるように。
遺伝情報の解析で、体質・病状に合った効果的な治療法を選択。

(12)これまで治らないとあきらめていた病気が再生医療で治療可能に。
日本が再生医療の世界の中心に。

(13)リフォームで住宅の資産価値が上昇(築後約20年で木造住宅の価値が自動的にゼロにはならず)。

(14)世界で日本の農林水産物・食品が更に評価され、輸出が急増。
若者や異業種の農業参入も活発化し農業が成長産業に。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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