05月2週
【推移】


9日(月):
週末のNYダウは79ドル高の17740ドルと反発。米労働省が発表した4月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が16万人増。7カ月ぶりの低い伸びで予想の20.2万人増を下回って着地。失業率は5.0%で変わらず。これを受けて下落した局面もあった。ただ平均週間労働時間は34.5時間で前月比変わらず。時間当たり賃金は25.53ドルで前月(25.45ドル)よりも増加。「中身を精査すればさほど悪い内容でもない」という解釈が支配的となり結局続伸となった。加えて「雇用の伸び鈍化で米国の早期利上げ観測が後退」との声も聞かれ、相変わらずの解釈のシーソーゲーム。雇用統計は騒ぐ材料ではあるが、所詮通過することだけが重要な経済指標に過ぎない。

週間では全ての指数が下落。NYダウは0.2%、S&P500は0.4%、NASDAQは0.8%の下落。NYダウとS&P500は2週連続のマイナス。S&P500採用銘柄のうち438社が決算発表を通過。利益が市場予想を上回った企業は73%。長期平均の63%と、過去4四半期の平均である68%をともに上回った。売上高が市場予想を上回った企業は53%。長期平均の60%を下回っているが、過去4四半期平均の46%は上回っている。第1四半期決算は前年同期比5.1%減の見通しだが、7%台からは低下してきた。S&P500採用銘柄の予想PERは16.7倍。

前週末まで6日続落の日経平均株価。ゴールデンウィークを挟んだことで続落の記憶は薄れている。そのGWも終了し、今後68日間祝日はない。決算を背景に様子見モードは続こうが、ようやくやる気の出る時期になってきた印象。
日経平均株価は109円高の16216円と7日ぶりの反発。ただ商いは低調で東証1部の売買代金は1兆7317億円と今年最低。セブンアイ、IHIが上昇。鉄、アイオンが下落。

10日(火):
一般にはあまり知られていないが資金決済システム担うのが国際銀行間通信協会(スイフト)。ベルギーに本拠をおく国際資金決済システムである。15年12月に国際送金サービスの改善プログラムを発表。加盟行は3営業日ほどかかっていた決済を即日に短縮化。不透明だった手数料も開示することになった。使い勝手が悪いと国際送金システムがスイフトなどから拡散し捕捉できなくなる可能性を恐れたということだろう。

マネーが百花繚乱となれば、行方はますます見えなくなる。数十カ国のタックスヘイブンなどの話ではない。幾千万の魑魅魍魎の資金の行方が消えるのである。逆にいえば米国のマネロン、反テロ規制を嫌う決済需要はユーロ振替を選好し始めたと言う現実。ECBはこれを意識。インフラの整備=決済サービスの充実に努めている。それ以上にスピード感を持って出てきたのがブロックチェーン使った新たな国際送金サービス。これでは、アメリカも監視できなくなる。これは異常事態だし金融決済の無法地帯となる。

三題話的にいえば「だからこそのパナマ文書」と言えるのかも知れない。これがたぶん本質だろう。パナマ文書の意図するものは節税・脱税ではなく、おそらくマネロン。マネーが政治経済の中心である以上、これは各国の国策と密接な関係がある。地政学は軍事だけでなく、マネーの面でも大きな影響を持っているということ。ゴシップ的な単なる脱税詮索に呆けている場合ではない。大きな流れの本質と考えるべきであろう。そしてマイナンバー制の導入この一環と考えるべき。
日経平均株価は349円高の16565円と続伸。東証1部の売買代金は2兆4297億円まで回復した。ライオン、イーレックスが上昇。国際帝石、Uアローズが下落。

11日(水):
NYダウは222ドル高の17928ドルと反発。原油先物の反発とアマゾンなど個別企業の好決算を好感しての上昇との解釈。NYダウとS&P500は3月11日以来、NASDAQは4月13以来の上昇幅となった。11月の大統領選で共和党候補がトランプ氏になる可能性が高まっている。「不透明や想定外が登場してきた印象でリスク資産には不利な状況」という声も聞こえる。市場はFRBによる今後の利上げの可能性を多くても2回と見ている。6月利上げの可能性は4%程度まで低下してきており市場にとっては快適な状態。微妙な均衡の延長戦。「セルインメイ(株式から債券へ)」のポートフォリオ格言は今年こそ該当しないかもしれない。

オバマ米大統領は27日に広島を訪問することになった。オバマ氏にとっては卒業旅行みたいなもの。安部氏にとっては、政権浮揚のエンジンみたいなもの。呉越同舟の構図だろうか。政治的面は別にして、マーケット的には日米同盟強化への一環。株も為替も呉越同舟ながら関係強化すると映る。片務的債務から脱却になれるのかどうか。

日経平均株価はかろうじて小幅に3日続伸。ただ心理的にはTOPIXの反落の方が似合う展開だった。発表されたトヨタの決算は「今期4割減益。円高で9000億円超目減り」で着地。もっとも同社の営業利益こそ4年ぶりの2兆円割れ観測ながら販売台数は1015万台。前期比5.6万台増加見通し。加えて5億円、1億株の自社株買いも発表しており多少は相殺されるかも知れない。相場の支えは日経平均株価のPERが14.36倍(前日は15.08倍)まで低下したこと。

トヨタの減益見通しにもかかわらず日経平均採用銘柄の予想EPSは前日の1098円から1154円まで上昇しており意外感が漂う。全体の47.2%が決算発表を通過した。今期の経常利益は0.3%減、純利益は11%増の見通し。(前日は36.3%通過で純利益19.7%増、あと半分の行方がこのままならそう悪くはないことになる。需給面では5月6日現在の裁定買い残が2週連続で減少し1兆7989億円。アベノミクス相場スタートの2012年末以来初めての1.8兆円割れとなった。
日経平均株価は13円高の16579円と3日続伸。TOPIXは0.6ポイントの下落で印象としては下落。ソフトバンク、イーブックが上昇。武田薬、第一生命が下落。

12日(木):
NYダウは217ドル安の17711ドルと反落。前日の200ドル超の上昇を帳消しにした格好。特に悪材料があった訳ではない。前日の上昇の背景と解釈されたネット通販大手アマゾンの事業拡大。そのあおりを受けた格好で百貨店のメーシーズなど伝統的な店舗型小売が軒並み下落。
WTI原油先物はバレル46.09ドルと堅調な推移。しかし石油・天然ガス生産会社リン・エナジーは連邦破産法チャプター11を申請。これで破産法申請は2014年半ば以降約60社となった。ドル円は108円台。
シリコンバレー・バンクのシニアFXトレーダーのコメント。「日本政府からの介入に関する発言がなかったことが円の大きなプラスになった」。FXの世界に散見される鏡を見る習慣からは脱却して足元を見たいもの。

三菱が日産の軍門に下る自動車業界。結局ホンハイからは3888億円しかもらえずトップも交代予定のシャープ。金融では日立と三菱の連携。大同合併とは言わないまでもグループの合従連衡の報道ばかり。群雄割拠を維持してきたが、もはらパワーの力が必要になってきたというところだろうか。
日経平均株価は67円高の16646円と4日続伸。ダイキン、東レが上昇。第一三共、ヨロズが下落。

13日(金):
日経では「経常黒字5年ぶり高水準」の見出し。財務省は15年度の国際収支速報を発表。経常収支は17兆9752億円の黒字だった。黒字額は前年度から倍増。年度末に東日本大震災が起きた10年度(18.2兆円)以来の水準に戻ったことになる。背景は原油安と企業の海外展開、訪日客の増加の3つ。モノの貿易で稼いできた日本経済は投資やサービスで稼ぐ格好になってきたとの指摘。日本企業が海外から受け取る配当を含む第一次所得は20.5兆円。これは1985年度以降で最大となった。
自動車や薬品メーカーの特許料や著作権料も増加しているという。加えてインバウンド効果の旅行収支は1.2兆円の黒字。今後は原油安や円安の一服で悪化する見通しが嫌気されるが、去年は悪くなかった。

マーケット面では「原油上昇、乗れぬ日本株」の見出し。世界の主要株式市場では原油高→株高。背景は投資家のリスク先行姿勢の高まり。だが日本では原油価格と株価の連動性が薄れている。「原油高の背景にドル安があり、ドル安の裏返しで進む円高が嫌気される」のも一つの理由。これは首肯できる。「原油輸入国の日本は原油高が悪い物価上昇につながる」との分析もある。これは当たり前のこと。
「投資家は円高や原材料高による収益圧迫を懸念」というもっともらしい声もある。ここでは円高が悪役になっているが、円安原油高になったらさらに原材料価格は上昇する。どう考えてもそうなる。円高と原材料高のどちらがイヤなのかを明確にする必要があろう。原油安の時に「原油安だから日本株も株安」と言った声は今どうなったのだろうか。

理路整然と間違った解釈がまかり通るから刹那的な解説に流される傾向があるマーケット。原油が下がればこの国は喜べるという当たり前のことを忘れた市場関係者がどれほど多かったことか。「財政終始を健全化しなければ国債の格下げにつながるから消費税を上げなくては」。という愚かしい声と一緒のような気がする。もしも150円以上の円安になったとき。「為替は円安でなくてはならない」という市場の常識論が通じるのかどうか。見てみたい気がする。
13日の金曜日はSQがお約束。9時20分過ぎに出てきた暫定SQ値は16845.67円。前月4月SQ値15507円からは1338円の上昇だが久々に下に幻のSQ値。
日経平均株価は234円安の16412円と5日ぶりの反落。エーザイ、丸井、トクヤマが上昇。トヨタ、KDDIが下落。

(2) 欧米動向
日経ヴェリタスで気になる記事が二つ。
一つは「見えない通貨広がる。ビットコイン・ポイント・・・「お金」変えた」。
仮想通貨のビットコインを個人向けに売買するビットフライヤー(東京・港)。
円売り・ビットコイン買い」の注文が相次いでいるという。
ビットコインで支払いできる国内の店舗は飲食店から美容室や語学教室、歯科医院まで1000店以上。
投資マネーも流入していうという。
米国では今では12万〜15万社がビットコインでの支払い受付。
さらに投資対象としては「割高になった金の代替になりつつある」とも。
因みに・・・。
新たな通貨として広がるのは買い物などで貯まるポイントも同様。
日本国内の発行額は年1兆円規模に拡大しているという。
マイナス金利とかFRBの利上げなどをアレコレ類推しているうちに社会が一歩前に進んできた印象
仮想通貨は続々登場してきている。
ビットコイン:時価総額69億ドル 特徴:利用者・取引量とも世界最多。
イーサリアム:時価総額7.9億ドル 特徴:契約書のやり取りもできる。 
リップル:時価総額2.2億ドル 特徴:送金の時間を大幅短縮。
ライトコイン:時価総額1.7億ドル 特徴:ビットコインの改良版。
ダッシュ:時価総額0.43億万ドル 特徴:セキュリティーに強み。

もうひとつはバークシャー・ハザウェイ株主総会。
ウォーレン・バフェット氏は米国の未来に自信を示した。
そのコメント。
「誰が大統領になろうとも米国の成長を終わらせることはない」
政権は4つのリスク「CNBC」に応じるべき。
Cyber(サイバー)
Nuclear(核)
Biological(生物)
Chemical(化学攻撃)
「低金利は、保険会社にとっても退職者にとっても問題だ」
「原油価格で投資の判断を決めたことはない。
原油安自体は「一部の業種、労働者にとっては良くない話だが、
消費者には恩恵与え、全体としては良いニュースだ」と評価。
面白いのは「投資助言に手数料を支払うべきではない」。
そして「何も未来を予想できるものはない」。
重い言葉でもある。

(3)アジア・新興国動向
中国の4月の鉱工業生産は前年同期比6.0%増と3月の6.8%増から減速。
市場予想の6.5%増を下回った。
予想より弱かった貿易統計や製造業PMIなど4月の経済指標は中国経済全般の弱さを裏付けたとの解釈。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・

16日(月):企業物価指数、米NY連銀製造業景気指数
17日(火):鉱工業生産確報値、米住宅着工、鉱工業生産
18日(水):1〜3月GDP速報値、訪日外国人客数、
19日(木):機械受注、米CB景気先行指数
20日(金):コンビニ売上高、G7財務相・中央銀行総裁会議(仙台)、米中古住宅販売

17日(火)上げの特異日(下げ止まり?)
18日(水)1〜3月GDP、ECB理事会
19日(木)日本再興戦略第4弾
20日(金)変化日、G7財務相・中央銀行総裁会議(仙台)
22日(日)満月
23日(月)水星順行開始
25日(水)人とくるまのテクノロジー展(パシフィコ横浜)
26日(木)伊勢志摩サミット、変化日
27日(金)伊勢志摩サミット
30日(月)NY休場(メモリアルデー)、ロンドン休場(スプリング・バンク・ホリデー)
31日(火)コンピューテック台北(〜4日)

因みに・・・。
今年に入り6日以上の続落は、1月4日〜12日の6日続落。
3月29日〜4月6日の7日続落。
今回で3回目。
4日続落は2回あった。
一方東証マザーズ指数は1月6日〜12日の4日続落が記録。
日経平均株価は今年5月6日までマイナス15.4%。
東証マザーズ指数はプラス33.1%。
森ではなく木を見た方が気分は良さそうな年となっている。

ドル円が103円を割れてくると日本の輸出産業は赤字になる。
そして1ドル100円になると経験則からは日経平均13000円。
こういう計算はあまり欲しくないところだが・・・。
ところでアノマリー的によく言われる「セルインメイ」。
1896年以降のNYダウのパフォーマンスを見てみると・・・。
5〜10月のパフォーマンスは1.3%の上昇。
しかし大統領選挙の年は4.2%の上昇。
大統領選の年の5月はマイナス1%超だが7〜8月に戻すという経験則。
むしろ「バイ・イン・メイ」にでもなるのだろうか。
5月以降のパフォーマンスはその前の1〜4月のパフォーマンスに準じるという。
1928年〜2015年のS&P500の1〜4月を見てみると・・・。
マイナス〜プラス2%の時は5〜10月はプラス0.2%。
1〜4月がプラス2%以上だった時の5〜10月はプラス3%。
今年の1〜4月はプラス1.0%。
アフターメイは微妙なところ。

土曜の日経1面では「首相、消費税先送り」の見出し。
26〜27日の伊勢志摩サミットの議論などを踏まえて表明する見通しという。
世紀の誤報でないとすれば日本株高の大きな支えになる。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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