個人投資家の大量売りの行方
■年初から5兆円近く売り越す、バブル当時買株ヤレヤレ売り、下げれば出動も
<Q>個人投資家が、現株を売り越していると聞くが。
<A>個人の現物株売り越しが続いている。今年からの売買状況を見ると、個人は年初と3月に買い越したていどで、その他は一貫して売り越している。年初から5月第3週までで差し引き約4兆1249億円の売り越しとなっている。
<Q>売りの背景は何か。
<A>想像の域を出ないが、相場上昇が最大の理由だろう。何人かに話を聞くと、ヤレヤレの売りという答えがけっこう多い。1989年当時のバブル大天井の時に買った銘柄が、このところの日経平均12日連騰に見られるように日経平均型の優良銘柄が上がっていることで売っているようだ。
<Q>誰が買っているのか。
<A>外国人投資家の一手買いといった状況だ。日本のGDPが2期連続でプラスとなるなど日本の先行き景気に対し期待を持っているようだ。また、日本企業がROE重視に転換したことに対する評価もあるようだ。
<Q>今後、個人はまだ売り越すか。
<A>その可能性はあるだろう。これまでは、高ROE銘柄が上昇したことでトヨタ自動車などに代表される優良株中心に個人は売り越してきた。仮に、これから出遅れている新日鐵住金など値の低い大型株や商社株、資源株など買われてくるようになるとバブル相場の頃、大きく買われていただけに値ガサ優良株以上にヤレヤレの売りは出てくるだろう。
<Q>個人は売った資金をどうするのか。
<A>バブル当時の投資家は、そこそこの投資年齢になっているだろうから老後資金に充てるということはあるだろう。歳を考えれば二度とバブルのときのような高値掴みはしたくないという思いはあるものと思われる。とくに、バブル以来となる日経平均12日連騰ということで、よけい慎重になるはずだ。とは言っても、株投資を経験した人は完全に株から手を引くことも難しいだろう。リスクの低い投信などに資金を回しているもとみられる。今後、全般相場が大きく下げる場面が出現すれば、個人は一斉に買いに出ることは予想されそうだ。
<Q>それは、いつ頃か。
<A>それに答えるのは難しい。景気が上向き、企業々績も好いということだけに期待したような押し目は来ない可能性がある。
(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
「コーポレートガバナンス・コード」は持続的な経済成長のテコ
■「コーポレートガバナンス・コード」に秘められた狙い
「コーポレートガバナンス・コード」――この6月1日から施行されている。推進役は金融庁、東京証券取引所である。株主総会シーズンに先駆けて導入された。
おそらく、上場企業各社の株主総会で、このタームが飛び交うことになると想定される。
タームが飛び交うことはそれほど重要なことではない――。法的な拘束力はない。
だが、マーケットの「デファクト」あるいは「デファクトスタンダード」としての拘束力はある・・・。
おそらく、このデファクトな拘束力は、比重を極限まで高めることになる可能性を持っている。企業としては、無視できないどころか、拘束されることを覚悟する必要がある。
アベノミクス――、いまはあまり取りざたされることはない。だが、この「コーポレートガバナンス・コード」導入は、アベノミクスの一環とみるべきである。
いわば、「隠れアベノミクス」ともいえるもので、経済の成長戦略の一手とみてよいだろう。
経済の成長戦略を担うのは企業である。その企業を「改革」する。改革により、企業成長を引き出し、成長の阻害要因を取り除く。そうした戦略でテコ入れし、持続的な経済成長を促進する。
■「スチュワードシップ・コード」――すでにROE改善などで提案済み
金融庁がつくり、すでに生保・信託銀行など機関投資家が実行している「(日本版)スチュワードシップ・コード」というものがある。これもデファクトだが、拘束力は存分にみせつつある。
例えば、生保・信託銀行が投資先企業に「ROE(自己資本利益率)を10%に改善してほしい」と提案したとする。そうしなければ、投資先企業から外すということになりかねない。
「大株主に去られたら困る」。企業としては、「モノを言う株主」の提案に沿った経営を行うしかない。
「スチュワード」とは、中世の荘園の管理者=執事から由来しているとのことだ。日本でいえば、「地頭」といったところか。機関投資家は、企業や個人からおカネを集めて、「執事」としておカネを有望な上場企業に投資する。
「スチュワードシップ・コード」とは、機関投資家が投資先企業に要望するコード=行動規約といったところか。こうしたことにより、企業の資本効率・ROEなど経営行動が厳しくチェックにさらされるという状況に変化している。
■コーポレートガバナンスの有無が投資尺度になる
それに対して「コーポレートガバナンス・コード」は、投資される企業サイドの行動規約になる。企業経営の透明性を高めることで、機関投資家、あるいは個人投資家の信頼を高めて、企業への投資を促進する。
コーポレートガバナンスの有無が、投資家サイドの投資尺度となる。
「当社はコーポレートガバナンスが確立されているから安心して投資してくれ」、「企業経営の透明性が確保されており、不祥事などを隠したりしないので投資してほしい」といった投資基準・投資尺度になる。
「コーポレートガバナンス・コード」、さらに先行して実施された「スチュワードシップ・コード」とも市場主義による企業改革にほかならない。
アベノミクス、いや「隠れアベノミクス」は、マーケットの力をフルに活用して企業改革を進める。それにより日本に持続的な経済成長をもたらすという戦略とみてよいと思われる。
■「コーポレートガバナンス・コード」は経済の持続的成長のテコか
日本企業にコーポレートガバナンスが欠如しているのは、残念ながら一般的に認める必要があるに違いない。
経営者が執行して自分で評価する。経営の執行とその評価が分離していない。
権力の分散=チェック&バランスがない。悪くいえば、経営の執行がお手盛りの評価で終わる。
野球で言えば、選手と審判を兼任しているようなシステムである。したがって、下手をすると何があっても「オールセーフ」、「推定責任なし」でひたすら資本効率を低下させかねない。
「社外取締役」にしても、社外から持ってきたのだから「独立役員」だなどといった形態だけのものを強弁する企業がみられないではない。チェック&バランスなど無関係――。
「コーポレートガバナンス・コード」は、日本企業が本気でコーポレートガバナンスに直面する契機になることは確実といってよい。
そして、市場主義による企業改革は、経済成長を促し、少なくても株式市場にはプラスファクターに転じるということになるのではないか。
(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
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