14日のNYダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに反発し、前日比674ドル62セント(1.65%)高の4万1488ドル19セントで終えた。
ダウ平均は700ドルあまり上昇する場面があった。米国の関税政策による物価の上昇や景気の悪化への警戒から、前日までに米株式相場が大幅に下落したあとで、主力株を中心に自律反発を見込んだ買いが膨らんだ。
週間では2週連続で下落した。下げ幅は1313ドルと、2023年3月上旬以来の大きさとなった。
今週はトランプ米政権の高関税政策が景気を下押しするとの懸念を背景にリスク回避姿勢が強まり、米株式相場は前日まで大幅に下落。この日は値頃感が出て、前日大きく下げていたハイテク株などの上昇が目立った。また、14日深夜に失効する米連邦政府のつなぎ予算案が議会を通過し、一部政府機関の閉鎖が回避されるとの観測も相場の下支えとなった。野党民主党の上院トップのシューマー院内総務は、9月末までのつなぎ予算案に賛成票を投じる意向を示した。
トランプ大統領が打ち出す通商政策を巡る不透明感はなおも根強い。市場関係者は「来週もトランプ氏の関税に関する発言を嫌気して、株価が再び下落する恐れがある」(日系証券筋)との見方を示した。
ダウ平均は前日までの4営業日で2000ドル近く下げ、24年9月以来の安値を付けた。S&P500種株価指数は今年2月に付けた最高値から10%下落し、「調整局面」入りとされる水準を付けていた。短期間で売られすぎたとの見方もあり、このところ下げが大きかったハイテク株の上昇が目立った。
市場では、「関税に関する新しいニュースがないことも買いにつながりやすかった」との声が聞かれた。
週末を前に持ち高調整の動きもみられた。来週には米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を公表する。市場ではFRBが政策金利を据え置くとの公算が大きい。併せて公表される政策金利見通し(ドットチャート)やパウエル議長の記者会見から、今後の政策判断のヒントを探りたい姿勢がある。
ミシガン大学が14日に発表した3月の米消費者態度指数(速報値)は57.9と22年11月以来の低水準となり、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想(63.2)を下回った。予想インフレ率は1年先が4.3%から4.9%と2年4カ月ぶりの高水準となった。長期は3.5%から3.9%と93年以来の水準に高まった。景況感の悪化やインフレ再燃への警戒は引き続き相場の重荷となった。
個別では、セールスフォースやマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムが買われた。エヌビディアは5.2%高で終えた。アメリカン・エキスプレスやゴールドマン・サックスも上げた。半面、ナイキやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ベライゾン・コミュニケーションズは下げた。
ナスダック総合株価指数は反発した。前日比451.072ポイント(2.60%)高の1万7754.086(速報値)で終えた。週間では2.4%安となり、4週連続で下落した。
テスラが3.8%上げた。中国で主力電気自動車(EV)の生産コスト引き下げに取り組んでいると伝わり、好感した買いが入った。マイクロン・テクノロジーが6.2%高となるなど半導体株も買われた。
S&P500種株価指数は反発し、前日比117.42ポイント(2.12%)高の5638.94で終えた。
【シカゴ日本株先物概況】
14日のシカゴ日経平均先物は上昇した。6月物は前日比910円高の3万7360円で終えた。同日の日米株式相場がともに上昇した。米株式相場は前日までに大幅に下げていたあとで、自律反発を期待した買いがハイテクを中心に主力株に広がった。シカゴ市場の日経平均先物にも買いが活発になった。
シカゴ日経225先物 (円建て)
37360 ( +500 )
シカゴ日経225先物 (ドル建て)
37465 ( +605 )
( )は大阪取引所終値比
【欧州株式市場】
■イギリス・ロンドン株価指数
14日の英FTSE100種総合株価指数は上昇し、前日比89.77ポイント(1.05%)高の8632.33で終えた。ドイツやフランスの株式相場が堅調に推移し、投資家心理を支えた。防衛大手の英BAEシステムズなど資本財関連の銘柄が買われた。英シェルなど指数への寄与度が大きいエネルギー株も上げた。
中国当局が来週、消費促進の状況について記者会見を開く予定だと伝わり、同国で景気刺激策が打ち出されるとの期待も出る。銅などの需要を支えるとの思惑につながり、スイスのグレンコアといった資源株が上昇した。金融に買いが優勢だった。半面、英スーパー大手テスコなど食品関連の小売りが下げた。
FTSEの構成銘柄では、投資会社メルローズ・インダストリーズ(6.41%高)や航空・防衛大手BAEシステムズ(4.18%高)、ゲーム大手ゲームズ・ワークショップ(3.47%高)が上げを主導。流通大手のテスコ(8.69%安)やセインズベリー(7.77%安)、マークス&スペンサー(5.22%安)は落ち込んだ。
■ドイツ・フランクフルト株価指数
14日のドイツ株価指数(DAX)は反発し、前日比419.68ポイント(1.85%)高の2万2986.82で終えた。ドイツで国防費増強やインフラ投資などに向けた財政拡張策が実現するとの期待が高まった。同国の経済や企業活動を支えるとの見方から、株式に買いが入った。
個別では、防衛大手ラインメタルが6.29%高で上昇率トップ。航空機大手エアバスは4.21%高、セメント大手ハイデルベルク・マテリアルズが3.75%高と続いた。一方、高級車メーカーのポルシェは1.44%安、分子診断大手キアゲンは0.44%安と売られた。
■フランス・パリ株価指数
フランスの株価指数CAC40は反発し、前日比1.13%高で終えた。防衛向けの電子機器システムを提供する仏タレスの上昇が目立った。ソシエテ・ジェネラルなど金融が上げたほか、ハイテク関連に買いが入った。一方で高級ブランドのケリングが大幅安。同社が前日公表した傘下ブランド「グッチ」のアーティスティック・ディレクターの人事を受け、「投資家の驚きを映した」との見方があった。