注目される遺伝子治療
がんや難病に効く遺伝子治療薬が欧米で相次ぎ承認されている。
遺伝子治療が最も進んでいるのはアメリカで、出遅れていたヨーロッパも最近は体制を整えて、積極的に研究に参入している。

遺伝子治療薬は、外部から入れた遺伝子を体の中で働かせて疾患を治療する薬。
欧米や中国などで実用化されている。

遺伝子の入れ方などが改善され、12年に欧州で初の遺伝子治療薬が承認された。
遺伝子治療は過去に副作用死が出て敬遠されたが、安全性を高める工夫が進み再び脚光を浴びるようになった。
米バイオテクノロジー企業、スパーク・セラピューティクスは、希少な目の遺伝性疾患に対する革新的な遺伝子治療薬「ラクスターナ」を開発、両目85万ドル(約9600万円)、片目42万5000ドルという価格で販売される報道があった。

この価格は、1回のラクスターナ使用が持つ人生を変えるような画期的な価値を反映しているだけではなく、当社がラクスターナのみならず他のパイプライン(新薬候補)を支える革新的な科学技術に投資し続けていくことを可能にしたと言える。
日経電子版 2018/1/31付の社説「出遅れが目立つ遺伝子治療」では、
昨年末に米国で初めて承認された遺伝子を注射するタイプの薬も含め、これまでに米欧で6製品が出ている。
世界では2500件を超える臨床試験が進行中だ。今後、新薬の承認が相次ぐとみられる。

一方で、日本は企業の臨床試験は、数件どまりになっている。
遅れの背景には、遺伝子治療への漠とした不安がある。製薬企業も失敗を恐れ、費用のかかる臨床試験になかなか踏み切らない。被験者も集めにくい。

政府が実用化を急ぐ再生医療も細胞に遺伝子を入れている。安全確認は大事だが、遺伝子と聞くだけで過度に恐れていては海外との差が広がる一方だと言う。
日本も再生医療の研究と臨床応用で最先端の地位を守ることに取り組み始めた。
再生医療等製品への条件および期限付承認制度が導入された。

国が開発を促している再生医療等製品に該当し、通常1年かかる審査が短縮され、早期に承認の判断が下される。
日本も最新の研究成果を踏まえ利用を推進すべきだ。

そんな中で、創薬ベンチャーのアンジェス<4563>は、1月22日、開発を進めていた遺伝子治療薬について、厚生労働省に製造販売の承認を申請した。
厚労省は通常より短期間で審査し、可否を判断する。
アンジェスは2018年中の発売をめざしており、承認されれば遺伝子治療薬として国内初となる。
申請したのは、血管が詰まって足が壊死(えし)する「重症虚血肢」を治療する医薬品。血管を新たに作る遺伝子を含む成分「ベペルミノゲン」を直接足に注射して、足の血流を回復させる。対象患者は国内に1〜2万人いるとされる。

遺伝子治療には、変異した遺伝子や欠損した遺伝子を直接修復または補う治療と、遺伝子そのものを薬として利用する2通りの考え方があるが、アンジェスの場合は後者だ。
停滞期を経て日本の遺伝子治療研究は、全国の大学、研究機関、ベンチャー企業などにすそ野を広げつつある。研究・開発環境の整備とともに、その有用性を早く産業に結びつくことを期待したい。
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