株式市場で、東京証券取引所による制度改正に向けた関心が高まっている。
東証は、上場企業の質の向上を目指し「市場改革」を推進している。2022年春に現在の東証1部、同2部など4市場を3市場に再編することが計画されている。
まずは、東証1部への昇格ラインの基準などが見直され、従来に比べ厳格化する。東証1部の昇格銘柄の候補選びにも注意が必要になるだろう。
東京証券取引所は、現在の「東証1部」「同2部」「マザーズ」「ジャスダック」の4市場を3市場とする計画を掲げている。
具体的には、22年4月に「プライム」「スタンダード」「グロース」(いずれも仮称)に再編する計画だ。この東証の市場改革は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、やや遅れたが21年7月に東証1部への上場・昇格基準の統一などの制度改正の要綱が発表され、ついに第1弾が始動した。9月11日までパブリック・コメントに付されており、11月1日から施行されている。
なお、2022年4月1日に予定している新市場区分への一斉移行の全体的なスケジュールの後ろ倒しは予定していないとの公表も併せてされている。
■マザーズ経由は40億円以上の近道は閉ざされる
同要綱では、東証1部への新規上場などに関して、「赤字上場の緩和」なども挙げられているが、特に注目を集めたのが「一部指定・市場変更に係る流動性基準の共通化」だ。具体的には、東証1部に上場する際の流動性に関する形式基準を「株主数800人以上」「流通株式時価総額100億円以上」などとするともに「時価総額250億円以上」とした。
現在は、ジャスダックから東証1部への上場には250億円以上の時価総額が求められているが、東証2部やマザーズからは40億円以上で可能とされている。このばらばらな基準は250億円以上に一本化され、マザーズからの近道は閉ざされることになる。
東証1部昇格は、TOPIXによる組み入れ需要が発生することもあり、株価急騰が見込める必勝イベントとなっている。このため、一定の株主数の確保や流通株式比率の上昇が見込める「立会外分売」や「株式売り出し」、「公募」「分割」それに「株主優待」の実施などは東証1部昇格に前向きなサインとみて、これらの政策を発表するマザーズ銘柄に注目する向きも少なくない。
東証の市場改革実施後も、昇格発表は買いサインであることに変わりはないだろう。ただ、マザーズ企業を中心に時価総額の昇格基準が膨らむことから、東証1部昇格銘柄の数はこれまでに比べて減ることが予想される。また、時価総額が大きくなれば株価へのインパクトは小さくなるかもしれない。
市場関係者からは、「一定規模の時価総額を求めることは、東証1部銘柄の質を高める意味ではプラス要因。1部昇格した翌月末のTOPIX組み入れ日に売り抜けるというのではなく、成長企業を長期姿勢で投資するというスタイルに見直してもいいのではないか」(アナリスト)との見方もある。また、「11月からの制度変更を前に、東証1部上場の駆け込み申請があるかも」と予想する声も出ていた。
新規上場や東証1部指定基準などの改正では施行日以後に申請する会社から適用が想定されている。
また、立会外分売の実施に際して東証1部または本則市場への昇格のための要件の充足を挙げた銘柄は、マーケットエンタープライズ <3135> (東証M)、バルテス <4442> (東証M) 、クロスフォー<7810>(東証JQ)、SREホールディングス<2980>(東証M)、アミファ<7800>東証JQ、エーアイ<4388>東証?など。
また、アナリストが昇格候補として挙げている銘柄では、Lib Work <1431> (東証M)、cotta <3359> (東証M)、ブシロード <7803> (東証M)、などがある。
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