ご存知ですか?相続法改正について
2018年の相続法改正により、相続に関する法律が大きく変わります。
相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と,法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。
今回の改正は、約40年ぶりの相続法の大きな見直しとなりました。
高齢化が進み、相続時の配偶者の年齢も高齢化する傾向が強まりました。そして、2013年あたりから国会審議等において、そのような相続をする配偶者の生活に配慮する必要性などが問題提起されるようになりました。法改正のポイントは、「妻が有利になる」と言われています。
原則として、2019年7月12日までの政令で定める日に施行されます。
ただし、配偶者居住権及び自筆証書遺言保管制度については、2020年7月12日までの政令で定める日に施行されます。
今回の改正により、自分が亡くなったとき、あるいは家族が亡くなったときに生ずる相続に関して、どのような点が、どのように変わったのかポイントを紹介します。
○相続法の改正の主な内容
■配偶者居住権の新設
住宅の所有権と居住権を分離し、故人の配偶者が所有権を持たなくても自宅に住み続けることを保障する仕組みです。
■婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
原則として、遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。
■預貯金の払戻し制度の創設
各相続人は、遺産分割が終わる前でも、一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができるようになります。
■自筆証書遺言の方式緩和
これまで自筆証書遺言は、添付する目録も含め、全文を自書して作成する必要がありました。その負担を軽減するため、遺言書に添付する相続財産の目録については、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなど、自書によらない書面を添付することによって自筆証書遺言を作成することができるようになります。
■法務局で自筆証書による遺言書が保管可能に
自筆証書遺言を作成して、困ってしまうのは「保管」です。せっかく民法の要件を満たした形で自筆証書遺言を作成しても、遺言者が遺言書を上手く保管できずに紛失してしまうことがあるのです。
しかしながら、改正相続法により、自筆証書遺言が「法務局」で保管してもらえる方向で検討されています。法務局で保管されるということは、紛失のおそれがないだけでなく、相続人が、遺言者の死後に法務局で遺言の有無確認をすることが可能になるのです。
■遺言の活用
遺言とは、自分が死亡したときに財産をどのように分配するか等について、自己の最終意思を明らかにするものです。遺言がある場合には、原則として、遺言者の意思に従った遺産の分配がされます。
また、遺言がないと相続人に対して財産が継承されることになりますが、遺言の中で、日頃からお世話になった方に一定の財産を与える旨を書いておけば(遺贈といいます)、相続人以外の方に対しても財産を取得させることができます。
このように、遺言は、故人の最終意思を実現するものですが、これにより相続をめぐる紛争を事前に防止することができるというメリットもあります。また、家族の在り方が多様化する中で、遺言が果たす役割はますます重要になってきています。
我が国においては、遺言の作成率が諸外国に比べて低いといわれていますが、今回の改正により、自筆証書遺言の方式を緩和し、また、法務局における保管制度を設けるなどしており、自筆証書遺言を使いやすくしています。
遺言の方式には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
※自筆証書遺言
自筆証書遺言は、軽易な方式の遺言であり、自書能力さえ備わっていれば他人の力を借りることなく、いつでも自らの意思に従って作成することができ、手軽かつ自由度の高い制度です。今回の立法により、財産目録については自書しなくてもよくなり、また、法務局における保管制度も創設され、自筆証書遺言がさらに利用しやすくなります。
※公正証書遺言
公正証書遺言は、法律専門家である公証人の関与の下で、2人以上の証人が立ち会う厳格な方式に従って作成され、公証人がその原本を厳重に保管するという信頼性の高い制度です。また、遺言者は、証言の内容について公証人の助言を受けながら、最善の遺言を作成することができます。また、遺言能力の確認なども行われます。
参考文書:政府広報オンライン 暮らしに役立つ情報より
■遺留分制度の見直し
遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行
の規律を見直し,遺留分権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生
ずるものとしつつ,受遺者等の請求により,金銭債務の全部又は一部の支払につき
裁判所が期限を許与することができるようにする。
■特別の寄与の制度の創設
相続人以外の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭の支払を請求することができることとします。
以上か改正ポイントです。
いずれにせよ今回の改正は、超高齢社会を見据えて最低限の権利を確保するために法整備したという意味合いが強いです。
今後の相続のあり方に大きな影響を与えるものとなっています。
言い換えれば、改正内容は超高齢社会で起こりうる相続トラブルへの対応だということです。この問題意識を念頭に置いて、各人が自分に合った相続対策を立てればよいと思います。
大切な人が亡くなって財産を相続することになったときに、現金や預貯金などのわかりやすい財産ばかりであれば、それほど手続きに戸惑うことはないでしょう。
相続財産に株式が含まれていた際は、どのような手順で手続きをすべきか、悩まれるでしょう。
株式を相続するためには、まず、相続財産中の株式を把握しなければなりません。
もっとも、通常は、株式だけを相続するわけではないでしょうから、すべての相続財産についての調査を行う中で、株式についても調査することになるでしょう。
相続株式の調査は、上場株式と非上場株式とで異なるため、今回、上場株式の調査方法について説明します。
■上場株式の調査方法について
上場株式とは、証券取引所に上場された(証券取引所で取引される)株式のことです。
相続財産の中に上場株式があるかどうかは、次のような書類を手掛かりに調査することができます。
●取引口座を開設した際の控え
●目論見書
●取引報告書
●取引残高報告書(評価報告書)
●特定口座年間取引報告書
このような書類を被相続人がしまっているような場所を探します。
また、インターネットで取引している場合もあるので、メールやインターネットブラウザの閲覧履歴等から株式の取引を行っていた証券会社等が分かることもあります。
取引をしていた証券会社が分かれば、取引残高報告書(評価報告書)を確認することで、保有する株式の種類や数が分かります。
書類が見つからない場合で、被相続人が保有していた株券の発行会社が分かっている場合は、株券発行会社に株主名簿管理人となっている信託銀行を確認しましょう。
株主名簿管理人となっている信託銀行が分かれば、そこに問い合わせて、被相続人の特別口座があるかどうかを調べることができます。
また、電子化される前の紙の株券が見つかった場合も、株券発行会社に株主名簿管理人となっている信託銀行を確認しましょう。
電子化される前の株券も信託銀行の特別口座で管理されています。
どこの会社の株を持っていたかも分からない場合は、証券保管振替機構(通称「ほふり」)に登録済加入者情報の開示を請求しましょう。
被相続人が上場株式を保有していた場合は、証券保管振替機構に加入者として登録されているはずです。登録済加入者情報を確認すれば、被相続人が口座を開設していた証券会社や信託銀行が分かります。
登録済加入者情報の開示請求について詳しくは、証券保管振替機構の登録済加入者情報をご参照ください。
最後に。相続が原因で“争続”トラブルにならないように、金銭的、精神的に疲弊する方が一人でも減ることを祈っています。相続発生時に備え、充分に把握しておくのがトラブルを防ぐ一番の方法かもしれません。
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