
米中貿易交渉の進展期待が再燃し、前日の米国市場で主要株価3指数がプラス圏で取引を終えたことが序盤の日本株のサポート要因となった。日銀の植田和男総裁がこの日、参院財政金融委員会での半期報告で、利下げ余地確保のために無理に利上げする考えはないと述べたことを受け、外国為替市場でドル円相場は一時1ドル=143円20銭台まで円安に振れた。円高基調が一服したことが輸出関連株への買い戻しを誘い、日経平均は一時250円を超す上昇となった。
もっとも今後のトランプ米政権が発するメッセージや、日米関税交渉の動向を見極めたいとの姿勢は強く、上値を追う姿勢は限られた。後場は模様眺めの展開となり、持ち高調整目的の売りに押される形で軟化して取引を終えた。前日に続き防衛関連株の上昇が目立った。
国内の機関投資家からとみられる利益確定や持ち高調整の売りが出て、指数の重荷だった。時価総額の大きい銘柄の一角に売りが膨らみ、東証株価指数(TOPIX)は朝高後下落に転じた。TOPIXの軟調な展開につられる形で、日経平均も弱含む展開だった。
リクルートや第一三共、伊藤忠といった主力株には終始売りが優勢だった。月初に当たり、国内年金などによる持ち高調整のリバランス売りが前日に引き続き膨らんだとの見方が聞かれた。日本時間今夜の米国ではパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演のほか、4月の米雇用動態調査(JOLTS)が発表されることもあり、投資家の様子見姿勢も強まった。市場関係者は「投資家は米国の景気がどのような形で減速するのかを見極めている。関税の影響は雇用や消費には確実に出てくるとみられ、夏場にかけて日米の株価の上値は重い」との見方を示した。
日経平均は方向感の定まらない展開だった。米中貿易協議の行方が最大の注目材料となるなかで、積極的な売買は手控えられた。米中は互いに合意違反と非難し合っており、週内の首脳会談で関係悪化を食い止めることができれば、相場は再び上向く可能性があろう。大型株が敬遠されるなかで新興株など中小型株には投資資金が向かっており、目先は個人投資家主体による中小型株での値幅取り狙いが中心になりそうだ。