日米で金利上昇が警戒されるなか、半導体関連などを中心に波乱含みに売りに晒される格好となった。前週末10日に発表された12月の米雇用統計は雇用者数の伸びが事前予想を大幅に上回るなど強い内容で、FRBの利下げピッチが鈍化することへの警戒感が強まった。週明けの取引ではNYダウが反発したものの、前週末の急落の残像が残るなか、きょうの東京株式市場ではリスク許容度の低下した海外機関投資家や先物主導のインデックス売りが全体指数を押し下げた。ここにきてバイデン米政権が改めて先端半導体の輸出規制強化の動きをみせていることもネガティブ視された格好だ。日経平均は約1カ月半ぶりの安値圏に沈んだ。
米政権が13日発表した人工知能(AI)向け先端半導体の輸出規制見直し案を受けて、アドテストや東エレクなどの半導体関連が軒並み急落した。日米の長期金利の上昇も相場の重荷となり、日経平均の下げ幅は900円に迫る場面もあった。
米政権は13日にAI向け先端半導体を巡る輸出規制の見直し案を発表した。米国の技術を使った高度なAIが第三国を通じて中国、ロシアなどの敵対国の軍事強化に悪用されることを警戒した規制強化で、国や地域ごとに輸出の上限を設ける方針。実行されれば米エヌビディアなど半導体企業の販路が大幅に制限される可能性がある。
エヌビディアに製品を供給しているとされるアドテストの下落率が一時9%を超えるなど、日本の関連銘柄にも売りが膨らんだ。不具合の問題からエヌビディアのAI向け半導体「ブラックウェル」を搭載したサーバーラックの注文を主要顧客が遅らせているとロイター通信が伝えたことも半導体関連の売りに拍車をかけた。
日米の金利上昇も相場の重荷となった。24年12月の米雇用統計が市場予想を上回るなど米景気は堅調で、米連邦準備理事会(FRB)の利下げペース鈍化を見込んだ米長期金利の上昇が続いている。14日の国内債券市場でも長期金利は一時、前週末比0.050%高い1.250%と、11年4月以来13年9カ月ぶりの高水準となった。金利上昇を受けて株式の割高感を嫌気した売りが幅広い銘柄に出て、東証プライムはおよそ8割の銘柄が下落する全面安の展開となった。
中国関連銘柄の業績不振に対する警戒感も意識された。10日に25年2月期(今期)の業績予想を下方修正した安川電は4.30%安で終えた。先週末10日には四半期決算で中国本土事業の落ち込みが目立ったファストリが急落していた。大和証券の坪井裕豪日米株チーフストラテジストは「今後、本格化する主要企業の決算発表では、景気不安やトランプ米次期政権の政策の悪影響が懸念される中国関連銘柄には注意すべきだ」とみていた。
日銀の氷見野良三副総裁は神奈川県金融経済懇談会後に記者会見に臨み、1月の金融政策決定会合をめぐり「議論の焦点は利上げするかどうか」などと話した。追加利上げを示唆する発言があるとの警戒感が市場では強かったが、新規材料に乏しいとして株式市場での反応は限られた。
日経平均は本日の下げで200日線水準も下抜けたことから、目先は調整色が強まる可能性がある。パラボリックではSAR値にタッチしたことで陰転シグナルを発生させてきた。一目均衡表では雲下限まで到達しており、雲下限は上向きで推移しているため、リバウンド基調が弱いと雲を割り込んでくる可能性もある。売られ過ぎが意識されるものの、しばらくは下値メドを探る流れになりそうだ。米国では14日に12月の卸売物価指数(PPI)が発表される。インフレ圧力が高まり、利下げ観測の後退につながるのか注目されるだろう。