
この日は、円高の進行に加え、米国の関税政策の不透明感から売り先行でスタートしたが、午前9時過ぎに「イスラエル軍がイランで攻撃を実施した」との報道が流れるとリスク回避姿勢が強まり一気に売りが膨らんだ。日経平均株価は午前10時過ぎには一時600円を超す下落となった。為替相場は一時1ドル=142円台後半に円高が進行。半導体関連などハイテク株が売られた。また、トランプ米大統領が自動車関税を引き上げる可能性を示唆したことが警戒され自動車株も売られた。
ただ、3万7500円近辺まで下落した水準には値頃感からの買いが流入。週末要因に加え、今晩の欧米市場の反応を確かめたいとの見方が強まり、後場にかけて下げ渋った。防衛関連株が買われ、原油価格の上昇を受け石油関連株は値を上げた。なお、日経平均先物と株価指数オプションの6月限の特別清算指数(SQ)値は3万8172円67銭だったとみられている。
イスラエル軍は13日、イラン各地の核関連施設を含む数十カ所の軍事目標への第1段階の攻撃を完了したと発表した。同軍は作戦は今後も続くと表明した。イスラエルのカッツ国防相は同日、イスラエルに対する攻撃が予想されるとして全土に非常事態を宣言した。その後、イスラエル軍はイランから100機以上の無人機がイスラエル側に向けて発射されたと発表。投資家のリスク回避姿勢を強めた。
米国とイランは核協議を続けているが、イラン国内でのウラン濃縮活動の是非については隔たりがあった。イスラエルは敵対するイランの核開発を強く避難していた。一方、イランは世界の石油供給の約2割が通過するホルムズ海峡に大きな影響力を持つ。中東情勢の悪化による世界経済の混乱や原油高を通じたインフレ加速への警戒感が売りに拍車をかけた。日経平均の予想変動率である日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)は朝方から大きく上昇した。一時は32台をつけ不安心理の高まった状態の基準とされる20を大幅に上回った。
日経平均はこのところ米中関税交渉の進展期待などを背景に株価水準を切り上げ、足元では心理的節目の3万8000円台での推移が続いていた。みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは「トランプ米政権の関税政策を巡って具体的な進展がないままに上昇し、楽観に傾きすぎていたとあって、中東不安が売りの口実になった」と話した。
もっとも大引けにかけては円が一時下落に転じたこともあり、日経平均は下げ渋った。市場関係者は「海外ヘッジファンドなどの短期筋がイスラエルとイランに関するニュースのヘッドライン(見出し)に反応して取引していた面が大きく、中長期志向の投資家は積極的な売買は手控えていた」とも指摘した。