
朝方こそリスク回避ムードに包まれていたが、思いのほか物色意欲は旺盛でおおむねプラス圏で推移した。方向感の見えにくい地合いで上値も重かった。前日の米国株市場ではハイテク株をはじめ広範囲に利益確定の動きが優勢でNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに下落した。
また、トランプ米大統領が、日本に対し8月1日から25%の関税をかけると通告、これまでの24%を1%ながら上回る形となった。もっとも、市場では30~35%に引き上げられる可能性も意識されていただけに、従来の想定から外れたシナリオは回避できたことで、買いが優勢となった。この日はETF分配金捻出目的の売りが出ることが予想されており、上値を買い進む動きも限られた。なお、売買代金は取引最終盤にETF絡みの換金売りで膨らみ4兆5000億円台に達した。
トランプ氏は今回、日本を含む14カ国に対して新税率を発表した。だが、新税率は4月に相互関税を発表した際の税率から引き下げられたか、ほぼ据え置かれた格好で、市場では「最悪の事態は回避できたとして買い安心感につながった」との声が多い。
外国為替市場で円相場が一時1ドル=146円台半ばと、前日夕時点から円安・ドル高方向に振れ、主力の輸出関連株に採算改善を見込んだ買いが入りやすかったことも投資家心理を支えた。非鉄金属や鉄鋼など景気敏感株が多く含まれる業種の上昇が目立った。
米関税政策による世界景気や企業業績の押し下げを警戒する見方は根強い。市場関係者は「企業業績や関税発動への警戒感から投資家が腰を据えて買う動きにはなっておらず、米国株のように最高値を試す機運は乏しい」と話す。20日投開票の参院選を前に日米関税交渉がまとまる可能性は低いといい、不透明感が払拭されない限りは日経平均はレンジ相場を脱却できないともみていた。
8日と10日はETFの運用会社が分配金(配当に相当)の支払いに備え、株価指数先物などに資金捻出のための売りを出す日に当たる。市場関係者の試算によると、8日は約5600億円、10日は約9000億円と、合計で約1兆4600億円の売り需要が発生する。「換金売り自体は大引けで出るのが一般的だが、需給の緩みを意識した短期筋が先回りで先物を売っていたとみられ、日経平均の上値を抑えた」と指摘した。