前日に続き主力ハイテク株への売り圧力が顕著だった。特に半導体セクターの軟調が際立ち、データセンター関連として買われた電線株も利食い急ぎの動きが表面化し日経平均を押し下げた。
前日の米国株市場では、中国の人工知能(AI)関連企業であるDeepSeek(ディープシーク)が開発した低コストのAI新モデルが、ハイスペックで高価なAI用半導体の需要を減退させるとの思惑から、エヌビディア<NVDA>などが記録的な下げに見舞われ、半導体セクター全般にも売りが広がった。ナスダック総合株価指数の下げも大きくなり、東京株式市場もリスク回避目的の売りがかさんだ。
アドテスバントが午後に11%あまり下落し、3カ月ぶりの安値を付けた。スクリンやディスコのほか、高効率のガス火力発電プラントを開発する三菱重などにも売りが膨らんだ。
フジクラや古河電などの電線株にも売りが優勢だった。半面、三菱UFJが連日で上場来高値を更新するなど、銀行や不動産など割安(バリュー)株に位置づけられる銘柄群には引き続き買いが活発だった。
トランプ米大統領は27日、外国製半導体チップや医薬品に近く関税を発動する方針を表明したと伝わった。鉄鋼と銅・アルミニウム製品にも関税を賦課すると述べた。全ての輸入品に課す一律関税については、2.5%より「大幅に高く」設定したい考えを示しており、米国での生産を促すのが狙いとみられる。市場関係者は「米国の要求を満たすには時間がかかる。関税政策を巡る先行き不透明感が日本株にはマイナスだ」と話していた。
一方、割安株に位置づけられる銘柄には前日に引き続き買いが集まり、全面的なリスクオフの展開は避けられた。みずほFGや三井住友FGなどの銀行株がそろって昨年来高値を付けた。住友不が後場一段高となったほか、東建物も上昇するなど不動産株への買いが目立った。京成や富士急などの鉄道株にも資金が向かったほか、新型ゲーム機への期待が高い任天堂は上場来高値を付けた。安価なディープシークの生成AIが普及した場合、米エヌビディア製の高性能なGPU(画像処理半導体)への需要が減少する可能性が高い。GPUが値下がりすれば買い手に当たる任天堂にとって調達コストが下がるとの期待から買いが入ったもようだ。
さて、東京株式市場はにわかに湧き出した米中のAI覇権逆転を織り込むなど指数では日経平均ばかりが下がる異様な展開となっている。トランプAI巨額投資発表で賑わった直後の中国高性能AI登場で、市場はまさに逆AI相場のごとくSB、電線株、半導体株が下げを主導している。つい昨日まで日経平均はザラバで4万円に乗せていたが本日は1000円も安い位置に。まさに波乱相場といえよう。