《マーケットストラテジーメモ》11月4週
【推移】
20日(月):
週末のNY株式市場は主要3指数が下落。背景は「共和党の税制改革法案成立への懸念」との解釈。下院は前日、税制改革法案を賛成227、反対205の賛成多数で可決。法案審議は上院に移った。
しかし市場の観測では「年内成立困難」が支配的。「悪い二日酔いのような状態」という声も聞こえる。もっともS&P500採用銘柄の大部分が四半期決算を発表。
四半期利益は8.2%増加したと見られている。「第3四半期の企業業績はかなり良い。国内、および海外の政治リスクを巡る懸念が若干残るのみ」という楽観論も聞こえる。
週間ベースではNYダウは0.3%安で2週続落。NASDAQは0.5%高で2週ぶりの反発。S&P500は0.1%安で2週続落。週末の日経平均株価は乱高下ながら続伸。
午前10時過ぎの高値が22752円。午後2時半頃の安値が22319円でザラバ中の下落幅は438円に及んだ。300円超の値幅が週3日(上昇1回、下落2回)もあった荒れ相場。「ボラが高い」という声が聞こえる。
8日高値→15日安値の6連敗による下げ幅に対し2日間の戻り率が40.5%。今一つパンチに欠ける続伸だった。
週間では1.3%(約284円)の下落、週足では7週ぶりに陰線。TOPIXは2.0%安でともに10週ぶりの反落。東証マザーズ指数は0.9%安、4週ぶり反落。日経ジャスダック平均は0.8%安、2週続落。東証2部指数は0.7%安、2週続落。先週末のSQ値22531円に対しては1勝6敗。ここがまずは基準値となる。
日経平均採用銘柄のPERは14.60倍で15倍割れ。EPSは1534.03円と日々増加が継続している。違和感のある下落というのが週明けの日経平均。
東証1部の騰落銘柄数は値上がり1263銘柄。値下がり700銘柄。どう考えても指数は上昇していなくては不自然だ。
市場では「日経平均は終日軟調だったが、ドル円が大きく円高に振れた割には、比較的落ち着いた動きで」という見方もある。トヨタ、ソニーがプラス。
新興市場やREITは元気な展開。キーワードは「中小型や出遅れ、割安」となってきた印象だ。
日経平均株価は135円安の22261円と3日ぶりに反落。ドル円相場が一時1ドル=111円台後半に強含んだことから売り物優勢の展開。下落幅は180円を超える場面があった。ただ日銀のETF買い観測から引けにかけては下げ渋り。「終始不安定な動き」という見方だ。東証1部の売買代金は2兆3496億円。売買代金は4日ぶりに3兆円割れ。
東証1部の値下がり銘柄数は700と全体の約34%。値上がりは1263銘柄。東エレとファナックで日経平均を30円押し下げた。一方で時価総額の小さい銘柄で構成するTOPIXスモールは上昇。トヨタ、アサヒ、クボタ、キリンHD、住友電、イオン、OLCが上昇。MS& AD、SOMPO、京セラ、ファストリ、ソフトバンク、旭化成、コマツが下落。
21日(火):
週明けのNY株式は反発の動き。ドイツではメルケル首相が進めていた3党連立協議が決裂。不透明感が高まったが欧州株が上昇。債券相場も落ち着いていたことから上値は重かったものの「投資家のリスク選好姿勢が高まった」との解釈だ。
個別では投資判断の引き上げから通信のベライゾン、半導体のマーベルによる同業のカビウムへのM&Aを好感して半導体のマイクロン・テクノロジーが上昇した。米議会は休会で重要な米経済指標や企業業績の発表も少ない。クリスマスラリーへの一休みの谷間でもあり積極的な売買は控えられた印象。
10月の外国人投資家の地域別売買動向では大量買いは「欧州」投資家。ロンドン拠点の年金基金が中心とみられる。CTAなど短期型のヘッジファンドも含まれているとの観測もある。欧州だとオイルマネーの存在も否定はできなかろう。「その連中のドテンウリ」という声も聞かれる。
「東証1部の売買代金が2兆3600億円台に急減。薄商いは売り一巡を象徴」という楽観論もある。課題は25日線(22101円)がサポートするかどうかだった。プラスかい離は0.7%(週末プラス1.5%)まで低下した。
日経平均は後場失速しての安値引け。とはいいながら値上がり1426銘柄、値下がり526銘柄と買い優勢の展開は変わらず。「今週に入って商いが減少傾向。特に後場の動意が少なくなっている。外国人投資家の売買が萎んでいる可能性」という指摘もある。とはいえ「メルケル首相が連立交渉決裂」の報道には世界中が反応しなかったということだ。
25日線(22148円)からの乖離はプラス1.2%。200日線(19971円)からの乖離は12.24%と10%超を保持。松井証券信用評価損益率速報で売り方は▲15.352%(前日▲14.893%)。11月2日の▲15.855%に近づいてきた。買い方は▲3.110%(前日▲3.783%)と好転。11月17日現在の信用買い残は4週連続の増加で2兆8331億円。売り残は182億円の減少で1兆272億円。信用倍率は2.76倍で2015年のピーク6倍台の半分以下だ。前日42.8%だった空売り比率はようやく38.2%まで低下。日経平均採用銘柄のPERは14.73倍でEPSは1521.82円。金曜の1534円台から低下した。
日経平均株価は154円高の22416円と反発。連立協議の決裂の影響に警戒感のあったドイツ株が上昇したのをきっかけに、投資家心理が改善。「為替の円安・ドル高も支えになった」との解釈。上昇幅が300円を超える場面もあったが安値引けというのが気にかかる。東証1部の売買代金は2兆5004億円。
東証1部の値上がり銘柄数は1426と全体の約7割。値下がりは526銘柄。トヨタ、スズキ、ファナック、三菱ケミHD、資生堂、クボタが上昇。大塚HD、東京海上、SOMPOも安い
22日(水):
NY株式市場は3指数揃って上昇。S&P500は約2週間ぶりに高値引けとなった。「けん引役は今年最もパフォーマンスの高いハイテクセクター」との見方だ。「投資家が売りよりも買い増しを目指す時期に来ている。株式はボラティリティーが低くトレンドは上向き。ハイテク株は現時点で投資家が満足できるセクター」という声も聞こえる。
VIX(恐怖)指数は9.73%と2週間ぶりの水準まで低下した。もっとも基本的には様子見モードの中での株高。「第3四半期決算シーズンが終わりに近づき、経済指標の発表もない。
23日の感謝祭の休暇に向けて商いは細るとみられる」という見方もある。過去最高値水準とは言え饗宴とは程遠い印象だ。22日に耐久財受注やミシガン大消費者信頼感指数など小ぶりの指標の発表が予定されているだけ。
債券市場も様子見モード。ユーロは落ち着き、円はやや円高傾向となっている。為替と株価の連関性は低下しており、以前のようなストレートな影響がなくなったことは好感されよう。
11月22日は上げの特異日。36勝18敗(勝率66.67%)で11月の中では最も勝率の高い日となっている。日経朝刊では「上昇相場、個人の買い鈍く」の見出し。年初からの売越額は5兆円。「個人は日本の変化に自信を持ちきれていない」というのが市場関係者のコメントだ。押し目を待っても押し目なしの展開が続いているからいい加減にウズウズという側面もあろう。それが表現されてきたのは信用取引だという。
もっとも06年には6兆円まで積み上がった買い残はまだ2.83兆円。逆にいえば3兆円の積み増し余地があることになる。これは裁定買い残も一緒で積み増し余地は3兆円。仮定の計算ながら併せて6兆の買い余力。ここに日銀のETFの1兆円程度を足せば7兆円。結構大きい数字となる。
日経平均のPERが14倍台で予想益回りは6.07%と6%台。どう考えても収益面からの割安感はある。ちなみに過去60年近くのNYダウ平均。感謝祭前日80%近い確率で上昇。感謝祭翌日は70%以上の確率で上昇。そんなアノマリーがある。
勤労感謝の日の休場を控えた水曜の日経平均は前場22600円台。しかし結局17日のザラバ高値を抜けなかった。
終値ではSQ値22531円を抜けず。「続伸したものの後場の安値圏で引けて2日連続の陰線。感謝祭前の上昇特異日というアノマリーだけが残った」という声が聞こえる。「不安定ではあるものの、連日で5日線を上回って終えた。月足は陽線。上昇トレンド回帰の可能性も高まっている」という少数意見も見られる。
日経平均株価は106円高の22523円と続伸。TOPIXは5.95ポイント高の1777.08ポイント。日経平均は月足陽線基準22420を上回ったが11月SQ値22531円にわずかに届かなかった。メガバンクが上げ幅を拡大。大型バリュー株は堅調だったが、休日を控えやドル円の円高トレンドを背景に上値は重伸び悩んだ。
東証1部の売買代金は2兆7064億円と3日連続の3兆円割れ。値上がり銘柄数は1062で全体の52%。値下がりは868銘柄。三菱UFJ、トヨタ、ソフトバンクG、コマツ、ソニー、ファナックが上昇。NTT、7&I−HD、アステラス薬、ヤフー、デンソー、塩野義が下落。
24日(金):
感謝祭前のNY株式市場はマチマチの動き。NYダウとSP500は反落。NASDAQは続伸した。ネット中立性の原則の撤廃案を好感して通信セクターが上昇。原油高を受けエネルギーセクターも堅調だった。
「感謝祭の祝日を控え取引を早々に手仕舞った市場参加者が多かった」という声が聞こえる。3市場の売買高は約51.8億株。直近20営業日の平均である66.6億株を下回った。
昨年の感謝祭の祝日前の出来高は65.1億株だった。 25日線からのかい離はプラス1.5%。
騰落レシオは108.22%。サイコロは5勝7敗で41.7%。松井証券信用評価損益率速報で売り方は▲15.761%。買い方は▲2.544%。11月17日時点の裁定買い残は2兆6475億円。前週比1771億円減(5週ぶり減少)。売り残は3293億円で前週比597億円減少(4週ぶり減少)。空売り比率は40.1%とまた40%台に乗せた。
日経平均株価は27円高の22550円と3日続伸。後場からプラスに転じた背景は安倍首相のエール大学名誉教授の浜田宏一内閣官房参与、本田悦朗駐スイス大使との会談。「日銀総裁人事や金融政策に関する思惑的な買いが指数を押し上げた」との解釈。
勤労感謝の日を挟んだ株高アノマリーは今年も成立した。
東証1部の売買代金は2兆3996億円。東証1部の値上がり銘柄数は1157、値下がりは781銘柄。東京エレ、信越、任天堂、KDDI、NTT、クボタ、SMCが上昇。三菱マ、コマツ、住友電、菱地所が下落。
(2) 欧米動向
10月の住宅着工件数は年率換算で前月比13.7%増の129万戸。
戸数ベースで2016年10月以来1年ぶりの高水準と好調。
「12月利上げ観測は揺らいでいない」との観測から長期債が上昇。
長短金利差は引き続き縮小した。
ロシアの米大統領選干渉疑惑を捜査するモラー米特別検察官。
トランプ陣営に対し文書の提出を求める召喚状を出したとの報道からドルは売られた。
「ロシア疑惑は税制改革や財政政策を実現させることへの阻害要因」という見方もある。
FRB議事録では「多くが金利を近い将来に引き上げる必要がある」との見方だったが反応薄。
12月の利上げ確率は92%。
FOMC議事録で政策担当者が12月の利上げの是非に疑問を呈し始めている可能性があることも示唆されたことからドルは下落。
ドル/円は111円台と1%超の下落となり9月下旬以来の安値を更新。
10月の耐久財受注統計は、コア資本財(非国防資本財から航空機を除く)受注が前月比0.5%減。
4カ月ぶりにマイナスに転じ、2016年9月以来の大幅な落ち込みとなった。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち21指数が上昇。
上位1位ベトナム週間騰落率5.04%、2位ロシア2.97%、3位香港2.29%、
4位シンガポール1.77%、12位米国0.86%、13位日本0.69%。
下位25位トルコ▲1.60%、24位中国▲0.86%、23位タイ▲0.79%、
22位マレーシア▲0.26%、21位南アフリカ0.17%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
27日(月):企業向けサービス価格指数、米サイバーマンデー、ロス国際自動車ショー、新築週宅販売
28日(火):米ケース・シラー住宅価格指数、CB消費者信頼感、FRB議長承認公聴会
29日(水):商業動態統計、国際ロボット展(ビッグサイト)、米GDP改定値、ベージュブック、中古住宅販売
30日(木):鉱工業生産、米個人所得、シカゴ購買部協会景気指数、中国製造業PMI、OPEC定例総会、フィリピン休場
1日(金):失業率、有効求人倍率、消費者物価、法人企業統計、自動車販売台数、米ISM製造業景況感、新車販売台数、建設支出
11月月足陽線基準は22420円。
11月SQ値は22531円。
9月SQ値は19278円。
昨年比プラス基準は19114円。
基本的には2万円台での推移。
2・5・8のレンジで行くならば「22000〜25000円レンジ死守」というところ。
火曜日経朝刊の1面「NEXT1000」。
「小さな企業続々」として海外売上高を伸ばした企業のランキングが登場している。
↓
日経新聞社売上高100億円以下の上場企業対象「NEXT(ネクスト)1000」。
5年前比海外売上高の増加額調べ。
海外売上高比率5割超が28社。
1位ダブルスコープ <6619>5年前比増加額53.46億円(2.6倍)、電池「セパレーター」製造。
2位ペプチドリーム <4587>27.25億円。医薬品。
3位ケル <6919> 25.31億円、電子部品。
4位ウルトラファブリックス・HD <4235>21.13億円、合皮。
5位メック <4971> 20.95億円、産業用薬品。
8位アルメディオ <7859>14.79億円、検査用ディスクで世界シェア首位。
10位トリケミカル <4369> 13.84億円、半導体用の絶縁膜材で世界有数の企業に成長。
久しく忘れていた存在に日経平均リンク債があった。
もし日経平均が現在の水準を維持すると24日に1000億円超の早期償還。
27日には1900億円の早期償還があるという。
「想定外の上昇」は運用マネーの運用不可をもたらすのだろうか。
あるいはこの償還マネーは、どこはいくのだろうか。
結構興味深い。
11月の最終週は日本、アメリカともに株価が上昇するというアノマリーがある。
2000年以降でみると、11月最終週の日経平均は16勝1敗。
12月1日に3月期決算企業の中間配当の支払いが行われることが多い。
「配当金の再投資」による需給要因で上がりやすいというのがその理由だ。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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