01月1週
【推移】
4日(水):
元旦の日経1面トップ見出しは「『当たり前』もうない」。サブ見出しは「逆境を成長の起点に」。そして「30兆円覚醒、私たちの手に」。この30兆円とは政府の成長戦略で計算された「IoT」などでの30兆円のこと。
つまり、GDP600兆円への道に示された方向性が登場したことになる。始まった連載は「断絶(Disruption)を越えて」となった。
「瞬時に過去の成功体験を時代遅れにする断絶の波」。「断絶がもたらす逆境でこそ、知恵が浮かぶ」。「古い秩序や前例を壊す断絶の力」。トヨタの「脱・ガソリン車」、三菱ケミカルの「脱・石油化学」。正月から脳裏に残ったのは「脱」という字。コアコンピュタンスからの脱却が企業成長の礎となるということ。
言い換えれば「選択と集中」から離脱した「拡張経営」の方向性だった。中核となるのは07年を境に変化したデジタル社会の到来。2017年のテーマとしてさらに登場するのだろう。
興味深かったのは2030年の日経平均予想。日経ヴェリタスの市場関係者へのアンケートでは「3万円以上」が4割超。「2万5000円〜3万円未満」が31.7%。10年経っても3万円という過去の経験則の延長戦上にいる市場関係者は多い。「脱」とが「断絶」が叫ばれようとしている時に時代遅れとしか言えない。
一番前例とか慣習に囚われているのが株式市場ではないかという気がする。大発会は4年ぶりの上昇スタート。前週に週間続伸記録が7で止まったことを打ち消した格好となり昨年来高値を更新。新高値は282まで増加した。
大発会の日経平均419円高。1996年大発会の749円高以来で21年ぶりとなった。95年に酷似した16年相場の次は96年の大発会に酷似した17年大発会。因みに96年相場は大発会に20618円。年央に2万2000円台まで上昇した(その後下落し年間では2.6%の下落)。「大発会にストップ高したタカタは自動車関連セクターと日米関係良好化の象徴」と言う声も聞こえる。
大発会が上昇した年の年間での日経平均株価の上昇確率は70.5%。大発会からの連勝の場合の年間上昇確率は75.0%。3連勝となった年は81.3%。日経平均株価は479円高の1万9594円と高値引け。4営業日ぶりに大幅反発し昨年来高値を更新。4年ぶりの大発会上昇で終わった。世界「景気の回復期待を手がかりに投資家のリスク選好姿勢が拡大。国内勢は利益確定売りを出したものの、海外勢の買いの勢いが強かった」との指摘が聞かれる。
値上がり銘柄数は1851で全体の92%超。トランプ相場開始直後の16年11月10日の1935銘柄以来以来2カ月ぶりの多さとなった。TOPIXは続伸し、35.87ポイント高の1554.48と終値ベースの高値を更新。東証1部の売買代金は2兆6851億円。JFE、T&D、住友不、大和、スズキ、三 菱UFJが上昇。アルプス、東芝、小野薬、花王、大塚HDが下落。
5日(木):
NYダウは続伸。再度2万ドルを目指す動きとなった。一応材料視されていたのはFOMC議事録。「トランプ次期政権の財政刺激策で成長が加速。インフレ抑制のために利上げペースを速める必要が出てくる可能性がある」というのが着地点。「トランプ次期政権の財政刺激策で経済成長が加速。利上げのペースが速まる」というのがメインシナリオとなった。ただ結局は「見極めたい」という様子見姿勢もある印象。
米国のクリスマスラリー(年末5営業日と年始2営業日)。NYダウは0.1%高、S&P500は0.4%%高。小幅ながらも上昇で「控え目ながらサンタが来た」との声。昨年はサンタの来ない年末年始だったが今年はサンタが顔を出したといったところ。
「サンタが来なかった07年〜08年はリーマンショックが起こった年」との懸念は去った。ここから重要なのは1月最初の5日の動向。「早期警戒システム」と呼ばれているという。
日経朝刊広告では「300」の小野薬品。「創業300年を迎えました」とある。100年はザラにあるが300年を越える上場企業は、松村組や別子などでそう多くはない。意外な長命企業だった。
日経5面の「経済面」。見出しは「株高、円安一段と、3か月予測」。「3月末にかけては一段の株高、円安を予想する向きが多い」。
どれほどの株価を予測しているのかと見てみると・・・。ストラテジスト氏の見通しは日経平均「18500円〜20200円」。株高と言う割には3か月かけて大発会終値からたった600円しか上がらないという予測。率にして約3%。1日に2%程度上がる日があるのにつじつまの合わないことこの上ない。
しかも同じ経済面には「株価騰落、干支で見ると酉年は4連勝」の見出し。これって「経済面」の見出しなのか、業界紙の裏面のコラムなのか見分けはつかない。なんか奇妙な印象だ。
「マーケット面」では「株、22000円も」の見出し。「21000円が当面の目標」と志は小さい。別の市場関係者のコメント。「1ドル120円を超える円安となり個人投資家の資金が入ってくれば24000円が視野」。これくらいの方がシックリくるような気がする。1989年高値の38915円。半値で19457円だからこれはクリアした。しかし半値戻しとなると38915円ー6994円(2008年10月)=31921円。6994円+31921円÷2=22954円。61.8%とか38.2%などと細かいことは気にはしない。しかし「半値戻りは全値戻り」の格言がある。半値戻りは気にしたいもの。
日経平均は軟調展開だったが下落幅は縮小。TOPIXはプラスだった。もっとも前日500円近く上昇した後の73円安は微調整の範囲。TOPIXは続伸。新興市場は3日続伸。新高値234銘柄、新安値ゼロ。東証1部市場の個別銘柄騰落は値上がり銘柄の数の方が多い。「実際はプラスの日」だったとの声も聞こえないではない。
因みにドル建て日経平均株価は168.87。昨日ザラ場ベースでも終値ベースともに昨年来高値を更新した。
日経平均株価は73円47銭安の19520円69銭と反落。円高・ドル安を嫌気した売りが継続。下落幅は一時100円を超す場面もあった。JPX日経インデックス400やTOPIXは小幅に続伸。東証1部の売買代金は2兆4359億円。富士通、キーエンス、小野薬、塩野義、アステラスが上昇。日東電、東エレク、太陽誘電、ファストリ、マツダ、トヨタが下落。東証2部株価指数は3日続伸
6日(金):
金融セクター・百貨店株が軟調となりNYダウとS&P500が反落。NASDAQはアマゾン・ドット・コムがけん引役となり終値ベースでの最高値更新。
マチマチの動きとなった。陳腐な言い方ながら「小売りはリアルからバーチャルへ」が市場でも具現された格好。ADP全米雇用レポートで民間部門雇用者数の伸びは16.3万人増で着地。市場予想の17万人を下回った。
12月31日までの週の新規失業保険申請件数は、前週比2.8万件減の23.5万件。日本時間の今夜発表予定の雇用統計の非農業部門雇用者数は17.8万人増の予測。昨日の東京株式軟調の一因ともなった中国人民元の急騰の影響はドルにも及び人民元は対ドルで約2カ月ぶりの安値となった。
「市場のモメンタムが変わりドル買いの動きが縮小もしくは反転した。何かきっかけを探すなら中国」という声も聞かれる。NYダウの2万ドルを手前にまた足踏みといった印象。
ただロンドンFT100は8日続伸し史上最高値更新。ドイツDAXは続伸。パリCACは5日続伸。「買い戻しを拒む売り方が残っている限り、相場は天井を打つことはない。強弱感が入り混じった段階こそ相場的には。久々の懐疑の中で相場は育つのだろう」という声も聞こえる。
日経平均株価は66円安の19454円と続落。為替の円高トレンドと雇用統計待ちの動きが下落要因となった。ただ日銀のETF買い期待もあり下落幅は限定的だった。TOPIXも反落。東証一部の売買代金は2兆3537億円。DeNA、楽天、ソフトバンク、資生堂が上昇。ファーストリテ、トヨタ、住電工、マツダが下落。
(2) 欧米動向
外に視点を向かせようとする動き。
足元を見ないようにする動き。
これに騙されることが多いのがマーケット。
ブレグジットが懸念されるイギリスの株価指数は過去最高値を更新。
EUが揺れる欧州の株式はそれぞれ堅調。
昨年上昇率が大きかったのはロシアやブラジルだったという現実。
「あれが危ない、これが大変」。
外のことを言っている方が間違いなく何か立派に聞こえる。
しかし・・・。
それが投資の役に立つのかどうかは別だろう。
1月17〜20日にスイスのダボスで開催予定の世界経済フォーラム(ダボス会議)。
ドイツのメルケル首相は前年に続き参加しない予定。
2005年の就任以降7回出席しているが2年連続での不参加は初。
今回のダボス会議のテーマは「即応する、かつ責任あるリーダーシップ」。
トランプ米次期政権の展望。
エリート層やグローバル化に対して広がる一般市民の不満などについて討議するという。
今回の会議は再選を断念したフランスのオランド大統領も不参加。
中国の習近平国家主席は参加する可能性。
トランプ次期政権からはGSのゲーリー・コーン社長らが参加予定。
世界経済フォーラムのシュワブ会長が先月トランプタワーに招かれたことは憶測を呼んでいるという。
(3)アジア・新興国動向
懸念材料は為替の円高傾向。
「11日に予定されているトランプ氏の記者会見を前にドル売り圧力が強まっている」という声もある。
もっとも直接的には中国人民元高=ドル安=円高の被害を蒙ったとの印象。
中国当局がオフショア人民元の流動性を絞り込んだことから短期金利は5日に一時100%超。
この異常事態は黙視できなかったのだろう。
年明けに余計なことをしてくれる中国という構図は今年もあった。
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち24指数が上昇。
上位 1位フィリピン週間騰落率5.96%、2位シンガポール同2.84%、3位ポーランド同2.61%、4位スイス同2.40%、5位ブラジル同2.39%。
下位 25位トルコ同▲1.32%、24位インド同0.50%、23位メキシコ同0.94%、19位米国同1.02%、11位日本同1.78%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・。
9日(月):成人の日で休場、米消費者信用残高
10日(火):消費動向調査
11日(水):景気動向指数、世界最小のロケット「SSー520、4号機」打ち上げ
12日(木):国際収支、都心オフィス空室率、BOE金融政策委員会
13日(金):オプションSQ、マネーストック、米生産者物価、小売売上高、ミシガン大消費者信頼感、
【1月】
9日(月)水星順行開始、北米自動車ショー
10日(火)株高の日L、変化日
12日(木)安部首相、豪州、フィリピン、ベトナム、インドネシア訪問(〜17日)
13日(金)SQ
14日(土)最も上昇しやすいとされている日
16日(月)世界未来エネルギーサミット(〜19日アブダビ)、株安の日L
NY市場休場(キング牧師の日)
17日(火)株高の日L、世界経済フォーラム(ダボス会議)(〜20日)
19日(木)株高の日L、ECB理事会
20日(金)株安の日L、米大統領就任式、変化日
24日(火)株高の日L
25日(水)株高の日L
26日(木)大幅安の日L
27日(金)中国春節休み(〜2/3頃)、ミネベア・ミツミが経営統合、変化日
29日(日)株高の日L
30日(月)株安の日L、日銀金融政策決定会合・経済物価展望レポート(〜31日)
31日(火)FOMC(〜2月1日)
【日経元旦朝刊のトップ見出し】
06年「強い日本の復活」
07年「富が目覚め経済まわす」
08年「沈む国と通貨の物語」
09年「危機が生む未来」
10年「成長へ眠る力引き出す」=基本テーマは変らない
11年「先例なき時代に立つ」
12年「開かれる知、つながる力」の意味=「C世代を駆け抜ける」。
・・・その「C」はComputer、Connected、Community、Change、Create。
13年「5割経済圏:アジアに跳ぶ」
14年「空恐ろしさを豊かさに」。
年始恒例の連載テーマ「リアルの逆襲」
15年「変えるのはあなた」
16年「目覚める40億人の力(インド俊英、続々頂点に)」
17年「当たり前』もうない(逆境を成長の起点に)」
日経元旦朝刊の「経営者が占う2017年」。
主要企業の経営者20人の2017年の株式相場の見通し。
18人が高値は「2万1000円以上」予想。
平均は2万1750円となった。
1年と言う時間軸で日経平均が10%程度の上昇見通しということ。
少し志が小さいような気がする。
「トランプ米大統領の政策で米国景気が上向くとの期待。
円安進行も追い風に企業の収益拡大」。
それで10%でいいのだろうか。
一方で経営者が占う2017年「有望銘柄」。
1位はトヨタ(7203)で4年連続首位。
2位は信越化学(4063)で4年連続で2位。
3位伊藤忠(8001)、4位ソニー(6758)、5位ダイキン(6367)、
同5位日立(6501)。
しかし4年連続トップのトヨタ。
昨年はほとんど株価的活躍の余地はなかった。
時価総額トップの銘柄を取り上げておけば良かろうなんて秘書的心理の産物なのだろう。
そもそもここに登場した銘柄がその年の話題の銘柄になることは少ない。
むしろ小数意見の方に真実があるとすればリクルート、セガサミー、ALSOKなどの方が面白そうだ。
加えれば・・・。
「当たり前もうない」のキーワードは「二流」。
一流が勝てなくなってきた事の裏返しだろう。
既存の一流はいつか二流三流に抜かれる。
出来上がった一流はある意味で権威と前例を尊重する人間の集合体。
一方、二流三流の多くは挫折を経験した人間の集合体。
順風満帆の人間のもろさは金融危機でよく見えた。
「逆境を成長の起点」とするならば、二流三流企業の夢と成長性こそ市場の中核。
純粋培養ではなく雑種の時代。
「100年企業を目指す」という声は多い。
しかし、100年続いてきた企業はザラにある。
そんな短い時間軸でなく「1000年企業」という尺度でものを考える時が来たのかも知れない。
1000年という時間軸で残ってきたモノや国、価値観はきっと本物に違いない。
十字軍や平安時代の摂関政治。
その頃から今まであるものがない訳ではない。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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