09月5週
【推移】
26日(月):
週末の日経平均株価はマイナスだったが東証1部の騰落銘柄数は値上がり1246、値下がり596。値上がり銘柄数は63%を超えた。
日経平均は週間で234円上昇。週足では3週ぶりに陽線を形成した。9月権利配当取りはあと2日。TOPIXの配当再投資にも期待感がある。「日銀の新しい金融政策の枠組みをどう受け止めるべきか。投資家の見方はまだ揺れており、現状では上値を試しにくい」との声も多い。一部では「ステルス・テーパリング(隠れた緩和縮小)」と言う指摘もある。
興味深いのは「日本のイールドカーブが立つ=長短金利差拡大。ならば海外債投資を膨らませていた日本の投資家は日本国債にお金を戻す。それが円高要因になろうか」という弱気派シナリオ。国会開幕。「アベノミクスが日銀依存から抜け出し構造改革にかじを切れるか。持久戦の勝敗を分けるカギは、実は日銀の外にある」というところなのだろう。因みに28.1兆円の経済対策の中身。
(1)1億総活躍社会の実現加速:3.5兆円。
(2)21世紀型のインフラ整備:10.7兆円。
(3)英国のEU離脱リスク対応:10.9兆円。
(4)震災からの復興:3.0兆円。
合計は28.1兆円だが、
実質は(1)と(2)と(3)で17兆円程度。
解釈の変更での実質拡大が求められるのだろう。
日経平均株価は209円安の16544円と大幅続落。終値での1万6600円割れは20日以来のこと。日銀のETF期待から後場寄りは買い物優勢。ただ日銀の黒田総裁が大阪での講演で追加緩和についてマイナス金利深掘りと長期金利目標の下げが中心手段と述べたことから銀行株が下落。小野薬、東レ、ヤーマンが上昇。T&D、石油資源、TDK、タカタが下落。
27日(火):
日経朝刊では「鬼も笑えぬ?17年円安説」。「足元の円高は年内に終わる」という声。原油安による円高圧力の軽減という構造的な要因が理由だと言う。
15年夏の125円から足元は100円。上昇幅25円の内訳は米国がドル安に耐えられなくなったことと円の過小評価の修正。これが15円分。残りの10円分は日本の経常収支の黒字拡大によるものという説。経常黒字は14年位月3000億円程度→15年月1.4兆円。今年は7月までで月」1.8兆円に拡大。これが効いたという。経常黒字の拡大の背景は原油安での輸入額減少。
一時バレル20ドル台まで下落した原油先物は足元40ドル台後半。1年程度のタイムラグで来年は原油高が経常黒字につながり円安を促進するという。これに米国の利上げを加えると、17年末115〜120円の円安想定。「投資家は判断を迫られる。鬼が笑うと一笑にはふせない」という結論。
しかし原油高→円安→株高。この論理はどこかおかしい。原油安で国家は貧困になり円安で国家は困窮する。そんな時に株式市場だけがわが世の春でいられる訳はない。このパラドックスの呪縛からの解放が求められている。
ドイツ銀行問題で売り先行。TV討論会でトランプ懸念後退。仕上げは配当の再投資の先物買いで高値引けという構図。「後場急変」という気学的観測そのままの展開となった。総額3000億円規模と試算された配当の再投資の買い。
今年の3月、昨年9月の過去2回とも引けまで買われる展開。3月28日はTOPIX高値引け。14時半まで3.3万枚だったTOPIX先物は結局4.9万枚まで出来た。昨年9月は寄りから上昇し引け際に日中高値を付けた。大統領選挙のTV討論会などではなく、こちらの方が大きい材料だったことになろうか。
日経平均株価は139円高の16683円銭と高値引けで3営業日ぶりに反発。円高の一服や日銀のETF買いの思惑が漂った一日。東証1部の売買代金は2兆2946億円。国際帝石、石油資源開発、トヨタ、村田製、が上昇。松屋、みずほFG、第一生命が下落。
28日(水):
NY株式は反発。米大統領選候補による第1回テレビ討論会で民主党のクリントン候補が優勢。これが好材料視された。賭けサイト「プレディクトイット」にではクリントン氏の予想勝率は68%。討論会終了直後の66%から上昇。討論会中は70%まで上昇する場面もあった。トランプ氏が勝利する確率は34%。別のサイト「ベットフェア」では、クリントン氏の勝率が69%。同氏が肺炎と診断されて以降で最も高い水準となった。トランプ氏の勝率は37%から30%に低下した。
権利配当落ち日。日経平均で115円〜125程度の配当落ちが試算されておりハンディを背負ってのスタート。課題は「配当落ちを埋められるかどうか」。因みに日経平均の3月29日の終値は17134円。これが3月権利落ち前の終値だった。
また昨年9月末の終値は17388円。歪んだ指数の日経平均よりもTOPIXを重視する風潮を醸し出したのが日銀。これも悪くない方向を向いてきた印象。日銀のETF買い5.7兆円のうち2.7兆円をTOPIXに充当するという姿勢。開始は10月3日。当然TOPIX重視の姿勢になろう。現状では日経平均型が55%、TOPIX型は40%。JPX型は5%。これがTOPIX70%、日経平均28%、JOPX400に2%になるという試算。これでいくと最終買い入れ規模は日経平均型3.13兆円。TOPIX型2.28兆円。JPX400型0.28兆円。5.7兆円満額達成の時のTOPIX型は68%程度になるという。年内に約1兆円の買い入れ余力は小さくはない。「流動性が低い小型株」に注意注目ということになる。
日経平均は218円安のうち114円は9月配当権利落ち分。実質は104円安だったといえる。とはいえ日銀のETF買いもあっただろうに東証1部の売買代金は1兆8211億円。前日の2兆2946億円から遥かに減少。やる気レス相場を醸し出した。10年国債利回りは一時マイナス0.09%と1カ月ぶりの水準まで低下しマイナス金利拡大。「銀行株は泣きっ面に蜂状態。円高では自動車株も走れない」とう声が聞かれる。
日経平均株価は218円安の16465円と反落。サッポロ、ニトリ、ローツェが上昇。野村、日揮、ヤーマンが下落。
29日(木):
NY株式市場は続伸。好材料はOPECが2008年以来初めて石油生産量を減らすことで合意したこと。現在の推定生産量は日量3324万バレル。これを日量3250万〜3300万バレル水準に削減する計画が提示された。もっとも減産量はわずか。11月末の次回会合まで各国の目標生産量は決めない方針。「石油など化石燃料はなおあり余っている」という声も聞かれる。
資産運用大手PIMCOのレポート。「2017年の世界経済成長率が2.5〜3%となり、今年の2.5%水準から加速する。来年末までに、2〜3回の利上げを実施する公算が大きい」。ただ警鐘も追加。「多くの資産価格が過大評価されているように見える状況を踏まえ水面下に潜在するリスクを懸念する」。
日経商品欄では「DRAM価格11か月ぶり高値」の見出し。背景はゲーム専用パソコン向けの需要拡大。スマホ向けも高性能化で急拡大しているという。国慶節・ブラックフライデーそしてクリスマス。気候は蒸し暑いが視点は時差を越えて冬を向かなくてはならない。
もうひとつは「LPG、米国産シェア首位」の見出し。首位カタールを抜いて初めて米国がトップになったという。因みに1〜7月のシェアは米国35%、カタール20.1%。中東依存度は2011年88.7%→56.6%まで低下したという。パナマ運河の拡幅と相まって米国は輸出拡大に拍車がかかる。その受け皿が日本。この構図を見れば、ドル安を望む米国のいうがままにLPGを輸入する日本。自動車や家電などの稼ぎは資源で略奪され、為替の円高でダブルパンチ。購買力だけはついているのだろうが、海の向こうの虎視眈々には叶わない。ロシアの資源と米国の資源。ある意味国家の先鋒の大手総合商社はどうしようと考えているのか興味深い。
日経平均株価は228円高の16693円と反発。前日の配当落ち分と下落分を終値ベースで埋めた。OPECの減産合意による安心感。ドイツ銀行の経営不安をきっかけに、このところ株式市場に広がっていたリスク回避ムードが後退。「海外ヘッジファンドの買い戻しが入った」という観測も聞かれる。
東証1部の売買代金は1兆8789億円と2兆円を2日連続で下回った。任天堂、トヨタ、三菱UDFJ、ソフトバンクが上昇。塩野義、JAL、花王、LINEが下落。
30日(金):
NYダウは200ドル近くの大幅反落。「ドイツ銀行健全性をめぐる懸念が強まり金融セクターが下落のけん引役」との解釈。アップルなどハイテクセクターの下落も効いた。一部のデリバティブ系ヘッジファンドがドイツ銀に置いている現金やポジションを引き揚げたとの報道。これはドイツ銀に対する懸念を増幅させた格好。「ドイツ銀の話は株式市場に非常に長い影を落とした。この話は、金融センターの大手銀行が深刻な問題を抱えるという恐怖感を呼び起こしている面がある。前回そうした話題が出たのは金融危機の時だった」という声が聞かれる。
リーマン・ショックやブラックマンデーが起こった秋という季節感が懸念を拡大している面も否定できない。何とか反発して権利配当落ち分を埋めた東京株式市場を嘲笑するかのようなNY市場の反落。原油高の好感など過去の面影となってしまうのだろうか。移ろう市場心理は洋の東西を問わないようである。
日経では「海外勢、日本株離れ加速」の見出し。1〜9月は約6兆円の売り越し。1〜9月としては統計遡れる1982年以来最大規模。87年1〜9月の4.1兆円を抜いた。その1987年はブラックマンデーがあり年間7.9兆円の売り越し。年間でこれを抜く可能性がある。これを吉兆とみるか凶兆とみるかで相場観は別れる。
対多数は否定的に「だから日本株はダメ」になるのだろう。しかし少数意見としては「売った後に売り物はない」。あるいは「売ったらいずれ買い戻す」。もっともアベノミクス以降20兆円買って株価をあげてくれたのも事実。無視はできないが、既にその4割は売っている。株価は2割しか下げていない。悪くはない数字だろう。さらに異端意見は「市場を荒らすアライグマみたいな存在が消える」。短期視点の外部勢力に踏み荒らされなくなる日本株にとって吉兆に映る。「企業業績不安とか円高懸念」とかよりは邪魔者が消える効果の方がよほど心理的好転に寄与しよう。そもそもMBSの不正販売で詰め腹を切らされそうなドイツ銀。無断での口座開設問題で追及されているウェルスファーゴ。カタカナやアルファベットではさも優秀賞に見える海外金融機関も所詮そんなもの。相場倫理でもやらずぶったくり観がなくはなかろう。そしていずれの問題もリーマン・ショックの集大成みたいなもの。これで幕引きになるかどうかが課題となっている。秋になると「ムーディーズの格下げ」なんて記憶も甦ってくる。
日経平均株価は243円安の1万6449円と大幅反落。ドイツ銀行の経営悪化懸念が拡大し銀行や保険、証券など金融関連セクター中心に売りが拡大。ただ「リーマン・ショックをきっかけにリスク資産を圧縮した金融機関が多く、連鎖的な金融株安にはなりにくい」という声も聞かれる。東証1部の売買代金は2兆461億円と2兆円を超えた。菱地所、三井不、三菱商が上昇。Jフロント、関西電、東ガス、パナソニック、クボタ、楽天が下落。
(2) 欧米動向
日経スクランブルで紹介されたゴルディロックスの童話。
イギリスの童話「ゴルディロックスと3匹のくま」の主人公である女の子の名前がゴルディロックス。
クマの親子の家に迷い込んだゴルディロックス。
熱すぎず冷たすぎもしないちょうど良い温かさのスープを見つけて飲み干してしまう。
ちょうど身の丈にあう椅子に座ると壊れてしまう。
次にちょうど良い堅さのベッドを見つけて寝てしまう。
インフレでもなく、デフレでもなく景気後退でもない。
適度な経済成長を続ける程よい経済状態のことをゴルディロックス経済という。
そこにクマの親子が帰ってきて、目を覚ましたゴルディロックスは驚き、慌てて逃げ帰ったという話。
ベッドで居眠りしていたゴルディロックスが,ほうほうの体で逃げ出すのが正解か。
クマに食べられてしまうのが,正解か。
いずれにしても,ゴルディロックスは最後に痛い目にあっている。
日経スクランブルでは「今年後半の投資家の行動暗示」とされている。
しかしクマの家から逃げ出すのは、ベアで安住できなかったと解釈もできる。
大和のレポートの指摘は「バルチック海運指数と鉄スクラップ価格」。
「足もとで国際海運市況=バルチック海運指数が急騰。
背景は世界的な景気刺激策。
年内は世界の景況感の改善に期待しても良いだろう。
「離れ小島に流されても一つだけ経済統計が見ることが出来るとしたら何を選ぶ?」
グリーンスパン元FRB議長が即答したのが「鉄スクラップ価格」。
日経平均の先行指標ともされる。
鉄スクラップ価格は8月に入って上昇に転じた。
背景はアジア各国で鉄スクラップの手当てが遅れた電炉メーカーが多いこと。
国内ではH型鋼の在庫整理が進み、高炉メーカーも鉄スクラップの買い増し方向。
クリントン米民主党大統領候補も5年で2750億ドルの公共投資増加のプランを公表。
世界的な経済対策が進捗すれば、鉄スクラップ価格上昇が継続しよう」。
もうひとつは「なお1930年代〜1940年代は現代の推移に似ている」との指摘。
「大恐慌≒リーマン・ショック
ニューディール政策≒世界的な危機対応の公共投資
金融緩和≒QE政策
1937年の過ち≒最近の米国の利上げ
1938年の長期停滞論の提示」
その後・・・。
「世界的な戦争という財政支出は世界的な景気刺激策とやや類似した展開」というのが歴史だった。
(3)アジア・新興国動向
興味深かったのは「中国の成長率、30年に2.8%」。
日本経済研究センターの試算である。
18年5.4%、19年4.6%、22年に4%割れ。
過剰債務の圧縮で投資は減速。
生産年齢人口の減少も響くとの解釈。
「共産党一党支配下での改革はもたつく」ということは地政学リスクの変化ありなのだろうか。
IMFが中国に「成長見通しは出すな」と行ったのもこのあたりが背景と思える。
イスラムのヒジュラ暦の新年。
世界的にリスクオンになりやすい時官邸を迎える。
2014年は10月25日に新年を迎え10月31日に日銀のサプライズ緩和があった。
昨年は10月14日に新年を迎え10月17日に日経平均株価は底打ち反発した。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
週末:中国製造業PMI、IMFのSDRに人民元組み入れ、中国国慶節(〜7日)
3日(月):日銀短観、米ISM製造業景況指数、建設支出、中国休場(〜7日)
4日(火):マネタリーベース、消費動向調査、投資の日
シーテックジャパン(〜7日幕張メッセ)、米副大統領討論会
5日(水):米ADP雇用レポート、貿易収支、ISM非製造業景況指数、製造業受注
6日(木):G20財務省・中央銀行総裁会議(ワシントン)
7日(金):景気動向指数、米雇用統計、消費者信用残高
IMF世銀年次総会(ワシントン)
ポイントは週初の日銀短観と週末の米雇用統計。
10月3日発表予定の日銀短観の事前予測の民間15社予想。
大企業製造業の景況感は9社が改善予想、5期ぶりの改善が見込まれている。
大企業製造業DIは予想平均で7。
前回月調査比1ポイント改善。
非製造業は平均18で前回比1ポイント低下の見通し。
ノーベル賞の季節。
バイオを中心に騒がしい。
日経電子版での特集。
↓
〈生理学・医学賞〉免疫分野強い日本
京都大学の森和俊教授はノーベル賞の登竜門といわれる米国のラスカー賞を2014年に受賞。
細胞内の「小胞体」と呼ばれる器官内で、たんぱく質の品質を選び分ける仕組みを解明。
糖尿病やがんの治療薬として研究が国内外で進む。
昨年ガードナー賞を受賞した大阪大学の坂口志文特別教授。
免疫が暴走しないように抑える「制御性T細胞」を発見。
関節リウマチなどの自己免疫疾患や抗がん剤に応用されつつある。
坂口氏とともに同賞を受賞した東京工業大学の大隅良典栄誉教授。
細胞内で役目を終えたたんぱく質を掃除するオートファジー(自食作用)の働きを解明。
共同研究者は東京大学の水島昇教授。
京都大学の本庶佑名誉教授(先端医療振興財団理事長)は免疫のブレーキ役となる「PD─1」というたんぱく質を発見。
がん細胞が免疫からの攻撃を防ぐ機能を生かして、小野薬品工業が抗がん剤「オプジーボ」を発売。
熊本大学の満屋裕明教授と東京農工大学の遠藤章特別栄誉教授。
満屋氏は多剤併用によるエイズ治療薬を開発。
遠藤特別栄誉教授は高脂血症の新薬に道筋をつけた。
〈物理学賞〉「重力波」初観測で混沌
理化学研究所の十倉好紀創発物性科学研究センター長。
将来の省エネメモリーにつながるとされるマルチフェロイック物質という新材料を開発。
大野英男東北大学教授。
電子の持つ磁石の性質(スピン)を利用する「スピントロニクス」の研究で世界的な業績。
飯島澄男・名古屋大学特別招聘教授はナノテクノロジーの代表的な材料「カーボンナノチューブ」の研究。
〈化学賞〉リチウムイオン電池に注目
化学分野でノーベル賞に近いといわれる成果がリチウムイオン電池の開発。
米テキサス大学のJ・グッドイナフ教授がこの分野の第一人者。
東芝リサーチ・コンサルティングの水島公一シニアフェローはグッドイナフ教授の右腕として働いた。
この成果をもとに旭化成の吉野彰顧問らがリチウムイオン電池の原型を試作。
元ソニー業務執行役員の西美緒氏らが91年に初めて実用化した。
中部大学の山本尚教授は米国化学会の「ロジャー・アダムス賞」の17年受賞者。
歴代受賞者にはノーベル賞受賞者も多い。
トムソン・ロイターは、分子設計研究の開拓者である新海征治・九州大学名誉教授。
気体の分離などに応用が期待されている多孔質材料を研究する北川進・京都大学教授。
光触媒を開発した藤嶋昭・東京理科大学長。
金の微粒子がもつ触媒作用を発見した春田正毅・首都大学東京名誉教授を有力な候補に。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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