09月4週
【推移】
20日(火):
週末のNY株式市場は反落。原油相場の下落。不動産担保証券の不正販売問題でドイツ銀行140億ドルの和解金を支払う可能性の報道を嫌気。大手銀行セクターが連れ安した。FOMCで利上げはないと読んでいるものの不透明感は否めないとの解釈。
先物オプションの決済日でもあり3市場の売買高は約93億株と拡大。ミシガン大学消費者信頼感は前月から変わらずの低水準。「まだら模様の成長を示唆した経済指標が売りを誘った」との声が聞かれる。
明けのNY株式市場は3ドル安と続落。NAHB住宅市場指数は前月から上昇。111ヶ月ぶりの高い水準となった。
FOMCと日銀金融政策決定会合の同時開催を「ビッグウェンズデー」としての様子見モード。「日本が祝日で参加者も少なく静かな一日」との解釈。日本の投資家のプレゼンスがそんなに高いとも思えないが意外な声だった。
週末の日経平均株価は反発。TOPIXも8日ぶりの上昇となった。「3連休前のポジション調整でショートカバーが入り堅調に推移」という解釈は間違っているような気がする。日経平均は週間では約446円の下落。週足では2週連続陰線となった。今週は変則3日立ち合い。しかも火曜水曜が日銀金融政策決定会合とFOMC。FOMCの利上げというよりも日銀の総括的検証が気になるのだろう。ただ経済指標同様に通過することが一番重要なイベントでもある。
「通過後の9月中間権利配当取りの動きやTOPIXの配当再投資に期待」という声もある。やや甘そうな認識に聞こえてくる。
3月月中平均が16893円。9月SQ値は17011円。東証1部の時価総額500兆円は16800円。
今年の価格帯別累積売買代金が集まっているから抜けにくいのではない。それぞれ理由があるということも考えるべきだろう。
日銀の今年のETF購入の平均価格が16200円台ということも覚えておきたい。大引けの日経平均株価は27円41銭安の16492円15銭と小幅反落。ファーストリテの下落寄与度が70円あまりだった影響が大きかった格好。TOPIX5ポイント高の1316ポイントと続伸。「連休中に欧州の金融不安が高まったのも日本株の重荷になった」との解釈が聞かれる。
東証1部の売買代金は2兆749億円。東ガス、任天堂、ソニー、DeNA、トヨタが上昇。日産自も上昇した。ファストリが大幅安。ファナック、TDK、国際帝石、JFE、第一生命が下落。
21日(水):
NY株式市場はFOMCと日銀金融政策決定会合を控え小動きの展開。S&P500は0.64ポイント高。ダウ輸送株指数は0.85ポイント高とほとんど動かず。
3市場の売買高は約58億株と過去20日平均の67億株を下回った。「市場ではFRBはFOMCで利上げに動く可能性は乏しく、日銀も大幅に押し下げる措置を打ち出せないとの観測が拡大」という割にはやはり様子見姿勢。NYにも決められない人が多いことの証左だろう。
8月の米住宅着工件数は予想以上の落ち込み。住宅着工許可件数は予想外に減少。FOMCの前にうまい具合に軟調な経済指標が登場している。これでは利上げには向かわない筈だが「センチメントが揺れ動いた」という解釈になるから面白い。挙句のあてには「利上げが12月になるのか来年以降になるのか示唆を待っている」との声。上げる方向にいることは間違いなくただ時期の問題だけなのに、そこまでこだわる姿勢も面白い。
因みに19日のNYダウは前週末比3.36ドル安と小動き。8月4日の2.95ドル安以来の狭小記録だった。「この8月4日は日中値幅も62セントと小幅なで十字足。翌8月5日には雇用統計が発表される予定だったのでそれを控えてという展開」との声。転換点ではあろう。
日経では「8月のFX取引金額8月3割減少」の見出し。8月の店頭FX53社の取引金額は全通貨合計で313兆円。7月に比べて3割減少したという。つまり7月は406億円だったことになる。7月の東証の月間売買代金は566兆円。株の方がかろうじてFXよりも多い。
大引けの日経平均株価は315円47銭高の16897円62銭と反発。
日銀が13時過ぎに長短金利操作付き量的・質的金融緩和を導入すると発表。長期や超長期の金利が上昇し。金融機関の収益悪化懸念が後退するとの見方から銀行セクターが上昇。円相場が一時1ドル=102円台後半に下落し、自動車など輸出関連株も上昇した。ETF買い入れ策について見直し、一定額をTOPIX型ETFに割り当てることも好感された。
東証1部の売買代金は2兆7152億円と拡大。値上がり銘柄数は1837で全体の93%と増加した。
三菱UFJと三井住友FG、第一生命、T&D、野村、三井不、三菱ケミHD、クボタが上昇。任天堂、東エレク、キーエンスが 下落。
23日(金):
水曜の日経平均株価は大幅高。東証1部の値上がり銘柄数1837と9割以上の銘柄が上昇した。特に目立ったのはメガバンクなど金融セクターの上昇。日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を主軸とした新たな緩和スキームを発表したことを好感。日経平均は終値で7日ぶりに16800円台を回復した。
新しい政策に2つの柱。
(1)長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」。
(2)物価安定目標2%を超えるまでマネタリーベースの拡大を続ける「オーバーシュート型コミットメント」。
短期金利は0.1%のマイナス金利を維持。10年国債金利について現状のゼロ%程度で推移するよう長期国債の買入れを行う。従来7〜12年としていた買い入れ対象についての残存期間という決まりは廃止。長短金利操作のために「指値オペ」という新手法を導入。金利が上昇した場合には20年債を対象にしたオペを実施する用意もアリ。
わかりにくいが結論はマイナス金利の深堀はなかったということ。「追加緩和と呼べるものはなく、新しい看板を威勢よく掲げる姿が神々しい。昨年12月以来、失望続きだった日銀決定会合。
果たして、これが7度目の正直となるのかどうか」という声が聞かれる。ただ日銀のETF買い入れ額のうち2.7兆円をTOPIX連動型対象にする方向は好感。
TOPIXの上昇率は2.71%で日経平均の1.91%を上回った。米FOMCは想定通りの利上げ見送りで通過。どちらのイントも騒いだだけ時間の浪費だったという印象。
ただ「米利上げ見送り→NY株高・円高→日本株下落」というねじれた構図も変わらなかった。
日経平均株価は53円安の16754円と反落。東証1部の売買代金は2兆2327億円。ダスキン、リクルート、メガチップスが上昇。三菱UFJ、マネックスが下落。
(2) 欧米動向
水曜のNY株式市場は大幅上昇。NASDAQは過去最高値を更新した。S&P500のPERは18.4倍。
2002年以来の高水準となった。
「FRBよる利上げ見送りで、低金利環境が当面続いて株式相場を下支えする」との解釈。
FOMCは「利上げ前にインフレの勢いが力強さを増しているさらなる証拠を待つことを決定。
一方、経済成長は目標の達成に向けた軌道を順調に進んでいる」と示唆。
イエレン議長は「資産のバリュエーションは歴史的な水準から外れていない」と発言。
また「景気に対する信頼感の欠如を反映しているわけではない」ともコメント。
「金融政策がほんのわずかだけ緩和的であるため、近い将来に後手に回るリスクはほとんどなかろう」と加えた。
海外リスクと一貫性のない景気の強さを背景に金利据え置きは6会合連続。
今後は年内に利上げを実施する最後の機会となる12月に注目が移行。
金融市場が織り込む12月の利上げ確率は63%と、直前の58%から上昇。
来年の利上げ見通しの中央値は2回と、前回6月の予想の3回から減少した。
ただ3人のメンバーが据え置きに反対票を投じたのも事実。
2014年12月以降で最多だった。
FOMC内部も揺れ動いているということだろう。
2016年成長予想の中央値は1.8%で前回の2%から低下。
2018年については目標である2%に達するとの見通しを維持した。
気になるのは機関投資家が重視するOECDの経済成長率予測。
日本の2016年はプラス0.6%(0.1%下方修正)、17年0.7%。
米国の2016年はプラス1.4%(0.4%下方修正)、17年2.1%。
ユーロ圏の2016年はプラス1.5%(0.1%下方修正)、17年1.4%。
中国の2016年は6.5%、17年は6.2%。
世界経済は「低成長の罠」に陥っているというのがOECDの解釈。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数全指数が上昇。「適温相場」との声。
上位1位トルコ週間騰落率4.91%%、2位台湾4.29%,3位メキシコ4.04%,4位フランス3.61%、5位ベトナム3.50%。
下位25南アフリカ0.02%、24位インド0.24%、23位米国0.76%、22位タイ0.98%、18位日本1.42%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
26日(月):臨時国会召集、米新築住宅販売、TV討論会、独IFK景況感、IAEA年次総会(〜30日ウィーン)
27日(火):企業向けサービス指数、9月権利付最終日、米消費者信頼感、S&PCS住宅価格指数
28日(水):米耐久財受注
29日(木):商業動態統計、米4〜6月GDP確定値、中古住宅仮契約
30日(金):失業率、家計調査、消費者物価、鉱工業生産、米個人所得、シカゴ購買部景気指数、ユーロ圏失業率、英4〜6月GDP確定値
日銀の金融政策を検討して見ると・・・。
短期金利についてはマイナス0.1%のマイナス金利を適用。
ただ長期金利については10年国債利回りをゼロ%程度で誘導。
現在フラットという異常値になっている長期金利と短期金利の差(イールドカーブ)を右肩上がりにする。
これがイールドカーブ・コントロール。
10年国債利回りゼロ以上というのはこのところ主張していたこと。
聞き入れてもらえたような印象。
もうひとつは「オーバーシュート型コミットメント」。
物価上昇率が行き過ぎによって一時的に2%を上回ってもすぐには異次元緩和をやめないこと。
安定的に2%になるまで異次元緩和を続けるという。
物価を中央銀行が支配することは不可能だろうが、強い意思表明と読める。
CPIが数カ月連続でプラスになった06年3月に量的緩和を解除した日銀。
その歴史がパリバショックとリーマンショックの増幅になった記憶は失われていないようだ。
不退転のリフレ(デフレから脱出したがインフレではない状態)政策。
そのうちハンドリングできないインフレになろうとも構わないというサインでもあろう。
だったら株価は上昇トレンドとなってなんら不思議ではない。
06年の過ちを繰り返さないなら日経平均の2万円復活くらいのインパクトはあろう。
興味深いのは「総括検証」。
黒田総裁は上げた「2%未達」の理由は4つ。
「金融政策でコントロールできない外的要因」と表現されている。
(1)原油価格の下落
(2)消費増税後の消費の弱さ
(3)新興国経済の不透明
(4)金融市場の変動
特に消費増税後の消費の鈍さ=消費増税失敗と聞こえる。
日銀も悪政視する消費増税見送りはいずれ効いてくるに違いない。
そしてETFの買い入れはTOPIX重視型になる。
日経平均型は年3.1兆円→1.6兆円に減少。
TOPIX型は年2.3兆円→3.9兆円に増加。
全体の3分の2はTOPIX型ETFになる。
日銀もようやく日経平均が市場全体の動向の代弁者でないことに気がついたのだろう。
「ユニクロ、ソフトバンク、ファナック」は決して日本経済の代表ではない。
値がさ株指数から時価総額重視指数への目線の変化。
良いことである。
斜に構えた弱気派の声は小さくなろうか。
安部首相はNYで「TPP批准を」と訴えた。
「マリオのように闘い続けています」のアピールはジワジワ奏功しよう。
興味深いデータは大和のレポート。
9月末までの5営業日の騰落は過去8年で7回マイナス。
3月末も同様に配当落ちがあるが過去8年でプラス6回。
9月末の株価の弱さのアノマリーと呼べる。
ただ10月初日から年末に向けての騰落は過去8年で6勝。
悪いアノマリーではない。
2015年9月末▼682円→10〜12月△1645円。
2014年9月末▼32円→10〜12月△1277円。
2013年9月末▼286円→10〜12月△1835円。
2012年9月末▼239円→10〜12月△1525円。
2011年9月末△140円→10〜12月▼244円。
2010年9月末▼196円→10〜12月△859円。
2009年9月末▼237円→10〜12月△413円。
2008年9月末▼830円→10〜12月▼2400円。
【10月】
1日(土) 中国・国慶節(〜7日)、
週末:中国製造業PMI、人民元がIMFのSDR組み入れ、新月
3日(月) 日銀短観、ノーベル医学生理学賞発表、米ISM製造業景況感、変化日、ヒジュラ暦新年、中国休場(〜7日)
4日(火) マネタリーベース、投資の日、上げの特異日、米大統領選副大統領候補テレビ討論会、ノーベル物理学賞
5日(水) ノーベル化学賞発表、米ADP雇用レポート、貿易収支、ISM非製造業景況感
6日(木) G20財務相・中央銀行総裁会議(ワシントン)
7日(金) 景気動向指数、米雇用統計、IMF・世銀総会(ワシントン、〜9日)、ノーベル平和賞発表
10日(月)体育の日で休場、コロンブスデーでNY為替休場、ノーベル経済学賞
11日(火)変化日、大幅高の特異日
14日(金)大幅高の特異日
16日(日)満月、上げの特異日
17日(月)IAEA核融合エネルギー会議(京都〜22日)
19日(水)文部科学省が「スポーツ・文化・ワールドフォーラム」開催、米大統領選テレビ会議
20日(木)ECB理事会・記者会見、EU首脳会議(〜21日)、上げの特異日
21日(金)変化日
27日(木)変化日
28日(金)大幅高の特異日
30日(日)EUがサマータイム終了
31日(月)日銀金融政策決定会合(〜1日)、展望リポート、新月
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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