09月1週
【推移】
29日(月):
意味もなく待ち望んでいたFRBイエレン議長のジャクソンホールでの講演は通過。「追加利上げに対する説得力は増した。米経済は最大雇用と物価安定の二大目標達成に近づいている。利上げペースはゆっくりとしたものになる」というのが玉虫色の骨子。利上げが差し迫っているとの印象は少なかった。イエレン議長は具体的な利上げ時期には言及しなかった。しかし周囲は「年内利上げの可能性を後押しする」と解釈された。フィッシャー副議長は「FRBは依然として年内利上げの軌道にある」と発言。ドル高、株安の流れとなった。
9月利上げの確率は約36%と前日の21%から上昇。12月の確率は63.7%。前日の51.8%から上昇。移り気な市場の焦点は週末の雇用統計に向けられるという陳腐な展開となるのだろう。
日経平均株価は週間で約185円の下落。週足では2週連続で陰線。米国株の上値が重く上値では戻り売り。下値では日銀のETF買い期待からの買い。この2つの要因からのこう着感だった。物色対象は日替わりで、売買も低水準。金曜は警戒売りから下落幅を拡大した。
「東証1部企業の4社に1社。公的マネー、筆頭株主に」の日経1面トップ記事。GPIFと日銀を合わせた公的マネーが東証1部上場企業の4社の1社で実質的筆頭株主。運用金額130兆円のGPIF。日本株運用比率は25%。日銀は年間6兆円の日本株を買う方針。TDKが17%、アドバンテストが16.5%、トレンドマイクロが15%。横河14.2%、日東電工14.2%、コムシス13.1%、クレセゾン12.9%、ファナック12.6%、コナミ12.3%、テルモ12.2%、日水12.1%、セコム12%、住友重機11.9%。
「市場機能低下も」という懸念も小賢しげに登場しているが、需給はかなり良くなる。
一言でいえばストックショートの時代。公的機関化現象とも言える。機関化現象とは証券市場において、個人投資家が市場への直接参加の度合いが低下。生命保険会社や投資信託会社などの機関投資家の比率が高まる現象のこと。個人投資家の比率低下は悩ましいところだが、国内投資家の比率の上昇は悪くない。全体の7割の売買を海外投資家が行っているのが現実。だから、為替に注意し、株価材料は海外要因ばかりがクローズアップされる。国内投資家比率が高まれば年に一度ジャクソンホールで踊ったり月に一度の雇用統計祭りもなくなろう。経済指標とイベントスケジュールしか材料のないFXの世界の呪縛からも解き放たれよう。
大引けの日経平均株価は376円高の16737円と大幅に反発。イエレンFRB議長の発言を受けた102円台の円安トレンドを好感。上昇幅は一時400円を超える場面もあった。ファナック、トヨタが上昇。明治、クスリアオキが下落。
30日(火):
週明けのNY市場は大幅上昇。NYダウは107ドル高の18502ドルと4日ぶりに反発。上昇幅が100ドルを超えたのは11日以来約半月ぶり。NASDAQは13ポイント高の5232ポイントと続伸した。「個人消費支出など経済指標の改善を好感」との解釈。ダウは3日続落していたこともあり短期筋の買い戻しもあったとの観測。VIX(恐怖)指数は6日ぶりに反落して12.94まで低下した。米利上げ観測の高まりを受けて金融株が相場のけん引した格好。
月曜の日経平均株価は16737円で7月末終値16569円を上回った。8月1日終値16635円も上回り「月足陽線」の可能性も復活した。「4月が安ければ8月は高い」のアノマリーが成立することになりそうな気配。25日移動平均16559円も上回ったから市場人気は堅調ということになる。200日線17098円をターゲットにできるかどうかがあと2日の課題だろう。東京株式市場は反落。日経平均株価は前場5円高、大引け12円安と小動きだった。
月曜に大幅高した反動もあり日経平均はマイナスでスタート。売り叩くほどの材料もなく、調整一巡後は戻す動きで前日終値を挟んだ小動きに終始。日中値幅はわずか74円31銭で昨年11月以来の狭さ。TOPIXは7ポイントだった。売買エネルギーも低調で東証1部の売買代金は1兆6783億円。8月15日の1兆5701億円、22日の1兆6278億円に次ぐ低水準だった。「値幅はともかく売買が盛り上がらない点は警戒材料」という指摘も聞かれる。
大引けの日経平均株価は12円安の16725円と小幅に反落。前場は小幅高だったが、後場はプラスマイナスを反復し結局はマイナスの展開。「前日の400円近い大幅高の反動で、短期的利益確定売りが優勢の展開。ただ1ドル102円台での推移に加えてNY株高も支援になり下落幅は限定的」との解釈。そして小動きの背景は「週末の米雇用統計の内容を確認したいとの様子見ムード」という声も聞かれる。東証1部の売買代金は1兆6783億円。アルプス、太陽誘電、第一生命が上昇。ドコモ、KDDI、アサヒが下落。
31日(水):
NY株式市場は3指数揃って反落。一番の悪材料は日経1面でも報じられたアップルへの約1兆4900億円の追徴課徴金。アイルランドがアップルの税負担を引き下げたのは違法だというのが理由。ただ銀行セクターは金利底打ち期待から上昇した。薄商いの中での特殊要因による下落との解釈。もっともS&P500は8月15日の最高値更新以来降、一段の上抜けができずの状態。8月のこれまでの上昇率は0.1%で月初からの上げをほぼ帳消しにした。「景気循環セクターは引き続き相場のけん引役を務めるだろう。1日の値動きからはトレンドは見えない」という声も聞かれる。
米証券3市場全体の売買高は約56億株で、3カ月平均を18%下回った。「予想外にニュースとなるようなイベントがない限り数日間の取引は活気に欠けるだろう。
市場は9月2日発表の雇用統計に焦点を合わせ、政策金利の先行きについて考えている」。これが平均的相場観測。8月の消費者信頼感指数は約1年ぶり高水準に上昇。市場予想を上回って着地。力強い米経済の傍証でもあろう。
7月末終値16569円、8月1日終値16635円を上回って「月足陽線」。昨年11月以来で今年初めて。6ヶ月移動平均16588円は上回っており12か月移動平均が17226円。まずは3月月中平均16897円を意識する展開になろう。8月の権利配当落ち分が11.35円だった日経平均。これで先物現物の逆ザヤはほぼ解消され、順ザヤの局面も見られ始めた。フツーの動きに戻ったなら先物が現物を引っ張る動きに多少は期待できよう。あとはマイナス金利の影響さえ排除できれば良いことになる。
日経平均株価は162円高の16887円と大幅反発。銀行や自動車など出遅れていた主力株が中核となっての上昇。1ドル103円台の円安傾向は追い風になった。東証1部の売買代金は2兆2045億円と3日ぶりに2兆円台を回復。株価上昇での2兆円は8月19日以来となった。メガバンク、自動車などのセクターや東電、ミツミが上昇。通信セクター、イオンSFが下落。
1日(木):
NY株式は小幅に続落。週末発表の雇用統計を待っている状況に加え原油先物価格の下落が足かせ。原油在庫が予想以上に増加したことからWTI原油先物は1バレル=45ドルを割り込んだ。これを材料にエネルギーセクターが下落。「商品は感覚で取引される面が大きく必要以上に大げさに反応した可能性」という興味深い声も聞かれる。8月のS&P500は0.1%下落で2月以来のマイナス。NASDAQは1%の上昇だった。
一方ADP民間雇用は予想通りの伸び。中古住宅仮契約指数も上昇。FRBの9月利上げへの道筋はたどっている印象。「先週末のフィッシャー副議長コメントで、9月FOMCは予断を許さない会合になる。市場は今のドル小戻し局面が今後も続くことのお墨付きを得たと解釈した」というコメントも見られる。1ドル=103円43銭と1カ月ぶり高値。月間では対円で1.3%の上昇となった。
週末の雇用統計の非農業部門雇用者数は18万人の増加見通し。7月は同様の市場予想で25.5万人増で着地した。9月利上げの確率は月初の18%→36%まで上昇した。一方では「米大統領選に向けてTV討論会などが予定されており、それでも利上げできるか」という指摘もある。この綱引きの週末となろう。
月末の東京株式市場は反発し2か月連続の月足陽線を形成した。NYダウの下落の影響を打ち消したのは円安トレンドとダウ輸送株指数の逆行高だったというのが後講釈。「米完全雇用は極めて近い、FRB副議長」という日経記事もフォローになったとの解釈。時として市場は時間差で材料を判断する好例でもあろうか。
日経平均は8月SQ値16926円にあと一歩まで迫った。ただ7月21日高値(16938円)や8月12日高値(16943円)には届かず。TOPIXは8月高値(1325ポイント)を上回った。日経平均も抜ける可能性があるが既に相場は9月入り。「何かと頭を押さえられりこの水準で止まると短期トリプルトップで売り圧力が強まりやすい。上か下かの大分岐点を迎えた可能性」という玉虫色の声も聞かれる。
もっとも来週末のメジャーSQに向けて6月メジャーSQ値(16639円)は上回っている。SQ→SQは上向きのトレンドで悪くない。25日線(16584円)からのかい離はプラス1.8%。4%プラスかい離の17247円程度は射程距離に入ってきた。
この水準は5月末高値17251円とほぼ一致する水準となる。8月26日現在の裁定買い残は735億円増加し6080億円。2週連続増加とはいえ10週連続で1兆円割れ。8月権利配当落ち(約11円)で逆ザヤはほぼ解消した。
先物主導のフツーの展開に戻ってくれば、裁定残の1兆円増加程度は期待したいところ。空売り比率はようやく36%台まで低下。
昨日の日経平均は上昇したが東証1部の売買代金も2兆円乗せ。株価下落でなく株価上昇での売買エネルギー増加は正の法則の復活と読みたい。東証1部の時価総額も500兆円台復活。「騰落レシオの91%ではまだまだ物足りない」という声もある。
日経平均株価は39円高の16926円と続伸。6月1日以来、3カ月ぶりの高値を付けた。8月SQ値16926円60銭を上回りようやく幻解消となった。東証1部の売買代金は1兆9541円とやや低調。トヨタ、富士重、三菱UFJ、三井住友FG、KDDI、村田製、アルプスが上昇。国際帝石、石油資源、ファストリ、ファナックが下落。
2日(金):
GPIFの株買い余力は5.1兆円。運用資産は129兆7012億円。国内株比率は21.06%で3月末21.75%から低下。金額では27兆3151億円。25%まで買うとすると3.94%だから5.1兆円という計算になる。
一方で日銀。年始からの買い金額合計は60回で2丁1978億円。今年の買い余力は1兆9272億円。12月までに毎月4818億円の買いが予算消化のためには必要という計算。1回707億円であれば、年内27回程度。毎月約7回は買わなければならない。2勝1敗のペースで間に合うことになる。年末までこのペースがどうなるかは結構重要な問題。もっとも2社の買い余力を合計すれば約7兆円。結構な買いであることに変わりはない。
NY株式市場は小幅高。ISM製造業景気指数は半年ぶりに50ポイント割れと失速。原油先物価格の下落も重石となった。雇用統計を待つ姿勢は継続。「8月の雇用統計は1996年以降19回のうち15回で市場予想を下回った」という声も聞こえ始めた。予想は強弱感が交錯した格好。やはり通過することだけが重要なのだろう。長期債利回りはマイナス0.020%まで上昇。日銀の金融政策に対する思惑も交錯し始めた。
日経平均は1円安の16925円と3日ぶりに反落。東証一部の売買代金は1兆8673億円。任天堂、野村が上昇。ファミリーマート、ファーストリテなどが下落。
(2) 欧米動向
NY市場は月間パフォーマンスで最悪なのは9月。
1950年以降のS&P500の平均騰落率はマイナス0.5%。
8月にS&P500を買い9月に売ったとするとマイナス31.6%となる計算。
その9月に利上げをするのかどうか。
これは結構微妙な問題。
1998年はLTCM危機。
1985年はプラザ合意。
2001年は同時多発テロ。
2008年はリーマンショック。
そんな9月がやってきた。
日経では「ヘッジファンド苦境」の見出し。
7月からの流出資金は約252億ドル。
09年4月以来の大きさだという。
年初からの累計では約559億ドル。
理由は運用成績の低迷。
低コストの運用方法に資金を奪われているという側面もあるが、要は「ヘタ」ということ。
S&P500の今年の上昇率6.7%に対しヘッジファンド全体ではプラス0.8%。
このパフォーマンスが現実である。
いつも市場で言われるのが「ヘッジファンドなどの仕掛け的商い」。
こんな言葉に惑乱させられ虚像のようになったヘッジファンド。
実は運用のプロのくせに運用がうまくないというのが鮮明になった。
だから見えない影に怯える必要はないし「慌てたり騒いだりする」ことも要らない。
これを受けたわけでもなかろうが、麻生財務大臣は「債券・株はあぶないという思い込みがある」と発言。
さらに「同期で証券会社に勤めているのはやばい奴だった」。
「株屋は信用されない」発言もあったが相当痛い目にあったのだろうか。
財務大臣としてこう言われると「やばい」は気にかかる。
もっとも・・・。
7〜8月は欧米ファンドの解約時期だったと考えれば過去にパフォーマンスの悪い9月への期待となる。
(3)アジア・新興国動向
世界の株式相場は主要25指数のうち14指数が上昇。
上位1位日本週間騰落率3.45%、2位ブラジル3.20%、3位インド2.70%、
11位米国0.52%。
下位25位豪州▲2.44%、24位シンガポール▲1.88%、23位タイ▲1.80%、
22位台湾▲1.58%、21位インドネシア▲1.57%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
5日(月):毎月勤労統計、レイバー・デーでNY休場
6日(火):米ISM非製造業、東アジア首脳会議(ラオス)
7日(水):景気動向指数、ベージュブック、ブラジル休場、パラリンピック開催
8日(木):4〜6月GDP改定値、都心オフィス空室率、景気ウォッチャー調査、ECB理事会、中国貿易収支
9日(金):マネーストック、メジャーSQ、中国消費者・生産者物価、
【9月】11勝15敗(9位)
5日(月) レイバー・デーでNY休場、黒田総裁講演
8日(木) GDP改定値、ECB理事会・記者会見
9日(金) メジャーSQ、変化日
11日(日)G7保険相会議(神戸〜12日)
12日(月)機械受注
15日(木)ゲーム見本市東京ゲームショー(幕張〜18日)、米小売売上高、上げの特異日
16日(金)変化日、米消費者物価指数
17日(土)満月、中国中秋節
18日(日)上げの特異日
19日(月)敬老の日で休場
20日(火)米FOMC(記者会見あり〜21日)、世界最大の鉄道技術見本市イノトランス(ベルリン〜23日)、世界最大の写真・映像機器見本市フォトキナ(ケルン〜25日)、日銀金融政策決定会合(〜21日)
21日(水)貿易統計
22日(木)秋分の日で休場、ハノーバー国際自動車ショー(〜29日)、水星順行開始
24日(土)G7交通相会合(軽井沢〜25日)
26日(月)米大統領選第1回テレビ討論会
28日(水)9月配当権利落ち、米GDP確定値、変化日
29日(木)パリ国際自動車ショー(〜10月16日)
【10月】
上旬ノーベル賞の発表
1日(土) 中国・国慶節(〜7日)、新月
3日(月) 日銀短観、変化日、ヒジュラ暦の新年
4日(火) 投資の日、上げの特異日、米大統領選副大統領候補テレビ討論会
7日(金) IMF・世銀総会(ワシントン、〜9日)
10日(月)体育の日で休場、コロンブスデーでNY為替休場
11日(火)ポイントの日、大幅高の特異日
14日(金)大幅高の特異日
16日(日)満月、上げの特異日
17日(月)IAEA核融合エネルギー会議(京都〜22日)
19日(水)文部科学省が「スポーツ・文化・ワールドフォーラム」開催
米大統領選テレビ会議
20日(木)ECB理事会・記者会見、EU首脳会議(〜21日)、上げの特異日
21日(金)変化日
27日(木)変化日
28日(金)大幅高の特異日
30日(日)EUがサマータイム終了
31日(月)日銀金融政策決定会合(〜1日)、展望リポート、新月
昨年のヒジュラ暦の新年は10月14日が正月。
昨年までその後10日は7連勝だった。
昨年の10月14日。
日経平均17891円→10月27日18777円。
NYダウ16924ドル→10月27日17581ドル。
これで7連勝となった。
新年度はムラッサムというがまさにムラッサムアノマリー成立だった。
毎年買い戻し中心という解釈だがどうなのだろうか。
というか、ヒジュラの新年で上がるなら9月は買い場という解釈もできようか。
もうひとつ日経1面の内閣支持率にあった小賢しげな解釈。
日銀マイナス金利を「評価する」は33%。
「評価しない」は47%。
物価が「上がると思う」は60%。
「思わない」は33%。
これはこれで健全な数値。
違っているのはその解釈。
「マイナス金利は投資や消費を活発にすることで物価の上昇を促す」。
本当にそうなのだろうか。
マイナス金利で投資が拡大しただろうか。
むしろ導入以来株価は下落基調。
消費も同様だろう。
物価は決して上がっていない。
そもそも・・・。
明日の方が今日より物が高くないのがマイナス金利。
それで物価が上がると思うのが間違っているのは子供でも分かるだろう。
立派な経歴の大人が「マイナス金利は物価上昇の杖」なんて考えているとしたら少し変だろう。
明日の方がモノの値段が高いから人は物を買う。
これが増えれば仮儒の増大につながる。
今はこの仮儒は全くない。
しかも買い控え。
インフレを恐れるなかりにオッカナびっくりのハンドリングでは見間違えようか。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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