08月3週
【推移】
15日(月):
週末のNY株式市場はNYダウとS&P500が小幅下落。NASDAQは2日連続で過去最高値更新というマチマチの動き。週間ベースではNYウが0.2%、NASDAQが0.2%、S&Pが0.1%の上昇。主要3指数はいずれも上昇した。微増見通しだった米小売売上高は前月比横ばい。衣料品やその他のモノの売り上げが減り全体を押し下げた。個別に好決算銘柄が買われる展開となった。「良いニュースが多いというよりは本当に悪いニュースがあまりなかったにすぎない。市場は眠っているようだ。
決算シーズンが終わりに近づいた。経済成長や金融当局の次の政策ステップを見極めるため焦点は経済指標に移行」という声も聞かれる。先週の日経平均株価は4.1%の16919円と3週ぶりに反発。6月1日以来の高値水準となり7月高値16938円を上回った。3月月中平均をようやく抜いたことになる。主要企業の4〜6月期決算の発表もほぼ通過。通期純利益は8.9%増益の見通しで悪くはない。第1四半期での底打ちモードが漂う。4〜6月期のGDP速報値は年率プラス0.2%増で着地。2四半期連続のプラスだが市場予想のプラス0.7%までは届かなかった。
日経平均株価は50円安の16869円と反落。東証1部の売買代金は1兆5701億円と減少、夏枯れモードとなった。ソフトバンク、電通が上昇。シチズン、トヨタが下落。
16日(火):
厚生労働省が「働きやすさ」のデータベースをつくるとの報。一目でわかるものを目指しているという。役職者に占める女性割合、育休取得率、35歳未満の離職者数、有給取得日数、平均残業時間。数値や図表で一目瞭然にはなる。数万社規模のデータはきっと役立つに違いない。でも、これらの数値指標だけで「働きやすさ」につながるのだろうか。女性の働きやすさというのは重要だし育休も必要不可欠。ただ「有給や残業」だけで図れないものの大切さ。たとえば「やりたい業務につける可能性」とか「眠れない日曜の夜を過ごさない可能性」など。休みが多くでも、時間があっても、それで満足できるかという問題。このデータの視点は「仕事は好きでないけど働かなければならない現実」をどう甘受するかだろう。そうではなくて「どうしてもその仕事で働きたい人にとっての環境整備」という視点も必要だろう。
週明けのNYダウは59ドル高の18636ドルと反発。NASDAQは3日続伸。S&P500ともに過去最高値を更新した。
日経朝刊のコラム「一目均衡」で指摘された「トライフェクタ」がまた起こっている。NYはミエレニアムイブ以来の恍惚なのかもしれない。「主要企業の配当利回りが米長期金利を上回っており、米株式に投資妙味」というのは今さら始まったことではない。しかし理解されやすそうなフレーズだ。ウォーレン・バフェット氏が買い増したと報じられたアップルが上昇。
市場では「ジョージソロス氏が保有株を全株売却したことはアップル底入れの象徴」という指摘もある。またアップルTVとの連携を模索中のツイッターも上昇した。
日経平均株価は273円安の16596円と続落。東証1部の売買代金は1兆9787億円と2兆円割れ。旭化成、ヤーマンが上昇、三井不、JR東が下落。
17日(水):
NY株式相場は前日の最高値から反落の展開。ニューヨーク連銀のダドリー総裁が「来月にもFRBが利上げに踏み切る可能性がある」と発言。加えてアトランタ地区連銀のロックハート総裁。「米経済は年内に最低1回、場合によっては2回の利上げができるほど強そうだ」と発言。早期利上げへの警戒感が拡大し売り物優勢の展開だった。もっとも市場では「ほとんどの市場参加者はFRBが本当に9月に利上げするとは想定していない」という声。相場に動きが欲しい為替市場関係者の思惑に乗らされたような印象はぬぐえない。さして大きな材料がないから地区連銀総裁の発言に一喜一憂といったところだろうか。株価は最高値圏にあり、ささいな悪材料を誇大に想定する傾向があるのだろう。東証1部の低位中小型銘柄や東証2部銘柄が乱舞しているところもあった。
日経レバの売買代金が低下してきた一方で個別銘柄の値幅取りの動きがでてきているのだろう。先週末のSQ値16926円を終値で抜けない時間が4日連続。
8月がSQ高値で終わるかどうかの正念場となろうか。もっとも昨日の動きを見ても25日線(16546円)が下値をサポートしているのが現実。8月12日に75日線を上抜けゴールデンクロスした余力は残っている。一目均衡の雲は30日に白くねじれているから月末期待となる可能性もある。
日経平均株価は149円高の16745円と反発。東証1部の売買代金は2兆728億円と2兆円台。コマツ、トヨタが上昇。大成建、元気寿司が下落。
18日(木):
NY株式市場は小幅反発。一時下落局面もあったが上昇材料は午後に公表された7月のFOMC議事要旨。利上げの是非をめぐり意見が分かれていたことから早期利上げ観測が後退。「市場はFOMCが利上げのタイミングを誤るのではないかと危惧している」という声も聞こえる。しかし大統領選を前に利上げを行うほどFOMCも愚かではなかろう。
しかし常識論に立てば早くて12月。利上げをめぐってああだこうだと床屋政談を繰り返すのは洋の東西を問わない。結論のない不毛の議論を高等遊民のように反復するのが市場の特性でもある。
足元ではS&P500採用銘柄の9割が決算を通過。78%で利益が予想を上回り、56%で売上高が予想を上回った。利益は予想を上回って推移しているがアナリスト予想はなお2.5%減益見通し。7〜9月期については0.8%の減益予想。「もしそうなればリーマンショック以降最長の6四半期連続減益」という指摘。減益は続いても指数は市場最高値というパラドックの背景は、景気回復期待なのだろう。
8月第2週の裁定買い残は1718億円減少しわずか4734億円。7年5ヶ月ぶりの低水準となった。東日本大新震災の時よりも少なくほぼリーマンショック直後の水準。明らかに解消売りはもう出ない域だ。それでも売りが増加するなら、マイナス金利の悪弊とでも言えるだろう。
そして「猛暑が潤す。飲料、めんつゆ、制汗剤販売好調」の見出し。消費の不透明の中でも必要なものは売れている。「夏は暑く冬が寒く」が相場の常識。これは明治以降変わっていない筈。月末金曜の早帰りイベントよりも効果は大きい。そして特別会計の借入金利はゼロ%まで下げる方針。財投の金利も引き下げ予定。
日経平均株価は259円安の16486円と反落。りそな、日写が上昇。小野薬、パナソニックが下落。
19日(金):
NY株式市場は小幅続伸。原油価格の上昇を好感したとの解釈。「下げる理由がないため、現在の水準を維持し、ゆっくりと上昇している」という楽観論も台頭し始めた。
個別では通期利益予想を引き上げたウォルマート・ストアーズが上昇。1年2カ月ぶりの高値を付けた。一方、人員削減の発表が嫌気されたシスコシステムズが下落。
昨日の前引けにかけて日経平均が約150円下げ渋ったのは日銀ETF買いへの期待感。しかし出動なしで「マーケットは不貞腐れた」との声もある。しかも政府・日銀が市場動向についての緊急会議を 開催。「特に何も決まらなかった」ことから大引けにかけて下げ幅を拡大した。為替の99円台という円高傾向もあったがマーケット心理を読めない当局の対応で自滅したとの印象だ。
日経平均株価は25日移動平均線を割り込みマイナス0.46%のかい離となった。空売り比率も44.2%まで上昇。日経VIも22%台まで上昇した。過去3カ月にドル円が100円を割り込んだのは3回。日経平均は6月24日が14952円、7月8日が15106円、8月16日が16596円。下値を切り上げてはいる。
日経平均株価は59円高の16545円と反発。国際帝石、物産が上昇。NTT、ツクイが下落。
(2) 欧米動向
為替市場にとっては円高も円安もどちらでも良いのだろう。
要は上げても下げても動きさえすれば良いということ。
実業の輸出産業や輸入産業に与える歓喜や苦悩など全く関係なし。
市場関係者の思惑どおりの動きさえすれば良い。
ここが株の世界とは少し違うところだろうか。
株の世界は前提が成長期待にある。
株価の上昇が企業にあたえる影響はそれほどないが、株価の上昇は新株発行などをやりやすくする。
為替の世界に「国民金融資産の健全な成長と長期安定資本の調達」なんて規定はなかろう。
この縛りの中にあるのが株式市場。
だから右肩上がりでなければならないというのが前提となる。
名言は「インフレでは買い方、デフレでは売り方が相場をつくる」。
この20年以上否応なしのデフレという政策で売り方に立場を与えてきたのが政策。
買い方に立ち位置をいただけるのならば、インフレという政策に向かわざるを得ないだろう。
金利が上げれば株が暴落という説はあるし、多くの市場関係者が信奉している。
だからマイナス金利幅の拡大を唱える向きも多い。
しかし20年以上効かなかった政策を転換してみることも必要ではなかろうか。
デフレからインフレに降って日本経済をまた痛めつけようなんて思考は今のところないような気がする。
戦後の動乱期のハイパーインフレの呪縛から一度解放することも戦後71年目の役割ではなかろうか。
株価下がる、円高になる。
これは市場の嫌うところ。
しかしソコソコの値があるから売られるもの。
所詮限界線まで行けば復活するのが市場でもある。
中途半端な値段でいるから「上がらなければ売ってみな」となる必定。
売り叩いて極致までいけばもう下げ相場はない筈。
それくらいの覚悟ができればいいのだが、なかなか。
(3)アジア・新興国動向
7月の訪日観光客は229万人で過去最多。
中国からは27%増、韓国からは30%増。
いずれも過去最高でこのままなら11月に2000万人を越えるとの見通し。
あとは海外マネーが市場に来てくれればいい。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・。
22日(月):コンビニ売上高
23日(火):米新築住宅販売、BBレシオ
24日(水):米中古住宅販売
25日(木):企業向けサービス価格指数、米耐久財受注、独IFO景況感
26日(金):米GDP改定値、英GDP改定値、ジャクソンホールでイエレン議長講演
SMAPの解散。
相場は世相を反映すると考えると・・・。
年初から「今年の相場はSMAPが悪材料」としてきた。
上海、シェール、シャープは片付いた。
年初年4回ともされた米金融政策は結局年末に1回程度の利上げ予想。
(マネタリーベース)。
不安視されたアップルの業績も何とか着地。
原油価格(ペトロリアム)はバレル26ドルから40ドル台まで復活。
英国のEU離脱をはじめとした「E」は入っていなかった。
それでも悪材料としてのSMAPは消えてきた印象。
台風の前にはきれいな青空を描いてくれるのは相場もたぶん一緒。
予兆なんてものは自然の世界では多少はあるだろう。
しかし相場の世界は一寸先は闇の世界。
そういう流れのなかにいつもいる。
ただ晴れのあとは雨、雨のあとは晴れという自然のリズムは崩れない。
相場のリズムもきっと崩れない。
晴れたら雨を心配し、降ったら晴れに期待する。
それが相場の綾なのだろう。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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