07月2週
【推移】
6日(月):
ギリシャの国民投票は「反対」で着地。チプラス政権は勝利宣言を放った。混乱継続ということで市場は動揺するのかも知れない。しかし、本当にギリシャの残留は必要なことなのだろうかというとココが疑問のところ。もはやユーロにとってEUは邪魔者のお荷物でしかない。しかし、EU側から退場宣言を迫ることは不可能。むしろ他国に対する影響は大きい。しかし、なかなか自覚しない不要な高齢社員に自ら辞表を提出させるためには環境整備は当然必要。困る形をとって本来の目的を果たすという意味ではかなり老獪な手法なのかも知れない。人事の要諦はいろいろあろうが「敵を使える知恵と器量」というのがある。例えばある国のトップの手法。手ごわい反対勢力だった軍の参謀長に首相のポストを与えた。そのココロは首相就任にともなう軍籍離脱。もともとの支持勢力である軍から切り離すために昇格ポストの首相を与え、パワーを削ぐ結果となった。あるいはその辺の企業でも、ややこしい役員などを切るときには本人が快適な気持ちになる人事を活用する。ある意味では打って返しのようなもの。正面切って本人を窮鼠に追いこむのは最低のやり方。恨みを買わず、悪者にならず、本人も左遷と気がつかない手法こそやはり人事の要諦。これを敷衍したとすると、もしもギリシャを切りたいのなら、勝利宣言までさせたEUはすごいというべきだろうか。もっとも、本気でギリシャの離脱を望んでいないならば話は別だが・・・。ギリシャのいないEUなんて意外と素敵かも知れない。お題目の危機感ばかりを聞いていると、先は見えなくなる。勝利宣言の裏にもうひとつの勝利宣言があるとしたら、市場は結構下げ渋りなのだろう。むしろスッキリかも知れない。市場では「日本時間では消化できない」という声も聞かれる。しかし、それでは時間引き延ばしのギリシャと一緒。秒以下のタイミングで結論を出すのが株式市場の筈。
日経平均株価は427円安の20112円と反落。神戸物産、アスクルが上昇。東ソー、ボルテージが下落。
7日(火):
相場関係者が好んで持ち出すのはギリシャのユーロ離脱問題・中国の株価下落問題と景気問題そしてアメリカの利上げ。まさに外患状態。これに付随した格好での国内企業業績への懸念なのだろうが、内憂という感じではない。むしろ内喜なのかも知れない。興味深いのはカラ売り比率。6月18日に38.3%のレコードとなった時の日経平均株価は安値19990円と2万円割れ。そこから4日で20952円まで上昇。売り手の苦悩を生み出した。前日は38.1%。記録まであと0.3%だったからむしろ「惜しかった」という感じだろうか。ダメ押しが欲しかったというのが正直な印象。「月曜下げて火曜に止まって」のリズムが続いてくれるのならば相場はもっと簡単なのだろうが相場の移り気はなかなか読めないもの。通過していく高気圧や低気圧は天気よりも厄介。
日経平均株価は264円安の20376円と反発。三菱UFJ.トヨタが上昇。カーリット、Jディスプレイが下落。
8日(水):
36ページが続く日経朝刊。薄いのはページだけでなく中身もなのだろうか。基本的には広告の減少の影響なのだろうが、活字離れという面も見逃せない。ネットやスマホの広告は拡大基調。でも新聞は減退基調。これが現実でもあるし、費用対効果を考えれば新聞広告はもはやその時代を終えた印象。いつまでも過去の栄光にすがっているとものごとが見えなくなるのかも知れない。これは市場も一緒だろう。新たな局面を過去の価値観で計ると見間違えそう。ギリシャがあって中国があってコモデティ価格が下落しても日本株は堅調。たぶんその背景の一因はEPSの増加だろう、月曜現在の日経平均は20376円でPERは16.12倍。計算するとEPSは1264円となる。前期末からは30円程度の増加。企業が利益を上げているのに遠くの世界の懸念で市場を見まわすのは愚でしかなかろう。しかも配当利回りは225採用銘柄で1.41%、東証1部銘柄で1.51%。10年国債利回りが0.45%だからその差はほぼ1%。これがアメリカではマイナス0.04%、上海はマイナス1.44%と逆ザヤ。
香港が1.27%、イギリスが1.33%、ドイツが1.68%。配当利回りでみる限り日本株の割高感は少ないという声が聞こえる。
日経平均株価は636円安の19737円と反落。約3週間ぶりの2万円割れとなった。大東紡、林兼が上昇。伊藤忠、ノーリツが下落。
9日(木):
良く分からないのは日経「スクランブル」の「買い手消失の急落劇」。午後の売りの犯人は2つの主体と見られる。日経レバが相場下落時に引けにかけて先物を売る傾向がある。これは上昇時も買っているので別に目新しくはない。わかりにくいのは「顧客の機関投資家から相対で買い注文受け、大口のプットの売り手に回った証券会社」。相場下落で損失を被る立場に置かれた証券会社は自らのリスクを減らすため相場下落で先物売りを膨らませる。このこと自体は理解できる。もっと親切にいえば、買い注文を受けた証券会社は相対で売りポジションを持たざるを得ない。従ってそのヘッジのためにプットの売りポジション(=相場上昇で利益が上がる)を組む。ただ相場が下落するとこのプットの売りポジの損をヘッジするために225で売りヘッジする。こうすればまだわかろうか。プットの売り手が売れば売るだけ上昇期待ポジションになるのに、それが相場急落の犯人ではない。売り=下落と短絡的に錯覚しそうな書き方ではある。書き手があまり理解していないから読者はさらに分かりにくい。
日経平均株価は117円高の19855円と反発。東証1部の売買代金は3兆8409億円と拡大。良品計画、マニーが上昇。ABCマート、TASAKIが下落。
10日(金):
株式市場と言うのは本来明るい場所、脚光を浴びる銘柄だけを見てきた世界。いつのころからか、暗い場所、ネガティブな材料がある場所を見るようになってしまった。もちろん、リーマンショックのはるか以前からそうなってきたような気がする。たぶんバブルが崩壊した頃。あるいは、225先物の売りが儲かるようになった頃からだろうか。売りで大成した相場師はいないというのが定説だったが少しは変わったのかも知れない。暗部を見るようになってから当然ながら市場は暗くなった。特に97年の金融危機やホリエモンショック、リーマンの頃や東日本大震災の頃が顕著だった。悪材料を求めて跳梁跋扈。市場がまた視点を転換し、明るい場所、陽の当たる場所を見始めた時に株価は位置を変えていよう。
日経平均株価は75円安の19779円と反落。TOPIXは3ポイント高の1583ポイントとマチマチ。東証1部の売買代金がSQの影響もあるいは3兆2195億円SQ値は19849円で通過した。乃村工藝、協和キリンが上昇、ファーストリテ、ニトリが下落。
(2) 欧米動向
「勝ち誇ってはならない」。と書いたのはギリシャの新財務相に就任したユークリッド・チャカロトス氏。
緊急ユーロ圏財務相会合出席のため滞在したブリュッセルのホテルのメモ帳にかいてあったとの報。
国民投票結果に浮かれるとユーロ圏債権団にそっぽを向かれる危険性を認識していとの解釈。
しかし、個人と組織は大きく違うこともあるから油断はできない。
興味深いのは売りポジションの違い。
6月23日時点の米S&P500先物の売りは444枚(約250億円)。2013年7月の660枚を下回り01年以降で最低水準だという。つまり買い戻しの恩恵が薄いのが米国市場。一方で米先物市場での225先物ドル建ての売りポジションは13年以降の平均の1割増。東証の7月3日時点のカラ売り残は7479億円。5月29日の8683億円からは減少したが13年以降の平均の3割は多い水準。「買い戻し相場になれば22000円」という声も聞こえてきた。「ギリシャのバルファキス前財務相はスキンヘッドだったのでヘアカットできなかった」。そんなジョークなどかすんでしまうのが現実の数字だろう。
(3)アジア・新興国動向
それにしても社会主義国家における資本市場に対する国家の統制力は強い。
先週末に中国の大手証券21社2.4兆円以上のETF買いを表明した。
しかも現在3686ポイントの上海総合株価指数が4500ポイントに戻るまで保有株は売却禁止。
IPOまで制限するという。
上海の証券監督管理委員会の命令は「6日11時までに資金を投入せよ」。
PKOそのものでまさに国家をあげての総力戦。
相場はいくさだが、進軍ラッパがなるような相場は東京ではお目にかかれない。
ぬるま湯のような市場と秋霜烈日のようなあちらの市場。
相場に対する気合はどう考えても残念ながら中国に軍配が上がる。
ギリシャ問題の脇で下落してきた中国株式が世界同時株安の原因ではないという
アリバイつくりでもあろう。
それにしてもすごい。
GDP30兆円のギリシャと1000兆円超の中国。
どちらの影響力が大きいのかは子供でもわかる。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
13日(月)鉱工業生産確報値、第3次産業活動指数、米財政収支、中国貿易収支
14日(火) 日銀金融政策決定会合、首都圏マンション販売、米小売り売上高、独ZEW景況感
15日(水)黒田日銀総裁会見、米鉱工業生産、生産者物価、中国経済指標
16日(木)芥川賞、直木賞選考会、米フィラデルフィア連銀製造業景況感、NAHB住宅価格
17日(金)米住宅着工、消費者物価、ミシガン大学消費者信頼感
自ら取引を停止した銘柄が全体の半分に及んだ中国市場。
システム障害で一時取引停止になったNY市場。
同じ取引停止でも意味合いは相当違う。
株式市場と言うのは、何があっても開いていなけらばならない存在。
それは株式の優位性がいつでもどこでも換金できるという理由による。
NYのシステム障害は良くはないが不慮の事故。
しかし上場企業自らが取引停止を申し出る市場は未成熟そのもの。
海外投資家比率が低いから許されるという問題でもない。
起こったことは、確かに株価への警戒感もあろうが、この未成熟な市場への恐怖感。
いつでも換金できない事態が発行体によってもたらされるなど椿事以外の何物でもない。
子供の頭脳をもった大人の体みたいな市場は危険過ぎる。
加えれば、国家が市場をコントロールできるという奢りも否定はできない。
多くの株価対策を打っても全く効かないのは市場が無理を訴えているのかも知れない。
結局ギリシャ問題は知らず知らずのうちに玉虫色の終焉をしそうな気配。
EU側がギリシャを地政学的に捨てられないのなら何があっても助けざるを得ないのが宿命。
ハナからそう決め打ちすれば右往左往する必要はなかった。
やはり喜劇の好きな国柄に悲劇は似合わない。
というか、多くの人が論じてきたことの時間の無駄が気にかかる。
中国市場への不安感もとどのつまり中国の国内市場の問題。
経済的な衰退の影響はあろうが、所詮ギャンブル好きな国民が一斉に飛びついたことの反動。
要監視する必要もあまりなさげな気配。
ギリシャや中国の影にかくれたネタのご本尊はやはりアメリカなのだろう。
利上げの問題以前に景気の問題があろうか。
いつの時も市場は多くの鎧をまとうが、結局主役はアメリカの金融の問題。
この仕組みに気がつけばリーマンショックだってもっと早く見えたのだろう。
皮相的に相場を見るのではなく「誰が儲かるのか、誰が損するのか」。
あるいは「誰が本当の悪材料なのか」を類推することは必要になる。
ギリシャや中国などのマリオネットに見とれていると糸と意図が見えなくなろうか。
とはいえ、株価が急落したのも現実。
日経平均の25日移動平均線は20356円でマイナス3.04%のかい離。
75日線は20017円でマイナス1.40%のかい離。
1月16日以来今年2回目の割れ込みとなった。
200日線は18242円で8.20%のプラスかい離。
一目均衡の雲の下限は19791円、上限は20261円。
勝手雲の上限は20082円。
7月20日までの上限は20478円。
21日に下限が20194円まで下がっている。
アベノミクススタート以来日経平均の安値は3月月中平均水準。
2013年の3月月中平均は12244円、安値は6月13日の12445円。
2014年の3月月中平均は14694円、安値は8月8日14778円、10月17日14532円。
因みに今年の3月月中平均は19197円。
目途があればそんなにむやみに恐れる必要もなかろう。
荒れるSQ週通過。
今年のSQ前3日間の動きを見てみると・・・。
6月火曜大幅安、水曜小幅高、木曜大幅高。
5月木曜大幅安。
4月火曜大幅高、水曜小幅高、木曜小幅高。
3月火曜小幅安、水曜小幅安、木曜大幅高。
2月火曜小幅安、水曜休場、木曜大幅高。
1月火曜大幅安、水曜小幅高、木曜大幅高。
つまり、SQ前日の木曜は大幅高が多いということ。
ギリシャで大幅安の月曜、なんということはなく下げ止まる火曜みたいなものだろうか。
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