06月2週
【推移】
8日(月):
大騒ぎの米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比28万人増加で着地。事前予想が22万人程度だったら上への多少サプライズ。雇用統計をネタにするFX業界は踊った格好で為替は一時1ドル125.80円台。踊って歌って週末の宴に興するのが楽しめて良かったのかも知れない。余韻でCMEの終値はプラス。対して環境は変わっていないが、今度は週末のメジャーSQに舌舐めずりなのだろうか。
土曜の日経では「外国人持ち株比率最高」の見出し。225採用銘柄では前年比0.3%上昇し35.3%と過去最高の水準になった。ソニー56.6%、TDK46.9%、トヨタ31.1%。しかし神戸鋼32.1%、大成建30.5%、高島屋20.8%。輸出産業だけでなく、完全内需銘柄も保有拡大の対象となっている。IRも海外志向。買ってくれるところ、持ってくれるところを対象とするのであるから間違いではない。しかし足元の日本を置き去りにしての海外詣。いつか見た光景のような気がする。
どこでもいつでも最後に来るのがリテール。確かに同じ努力であれば、機関投資家などの方がロッドは大きく、社内の評価も高い。投資家も担当者も努力の割に報われないリテールではある。しかし、移り気を主役にしておいしいところを持っていかれて情けなくもある。 日経マーケット面では「株、値動き小さく」の見出し。5月12日以来変動率1%以下の日が19日連続しているという。記録は05年8月8日までの29日連続。しかしその8月8日に郵政解散でその後の株高に結びつく「すくみ」だった。これは記憶の片隅にもある出来事。だったら今回のすくみもジャンプの前の静けさと読みたいところ。
日経平均株価は3円安の20457円と続落。伊勢志摩サミットを材料に近鉄、三重交通が上昇、ボルテージ、カナモトが下落。
9日(火):
NYダウは3日続落での戻り。シカゴ225先物は20280円で前日比3ケタ以上の下落。3日続落がない今年の初の3日続落になるのかどうか。あるいは5月12日以来20日間続いている変動率1%未満の記録を継続できるかどうかがポイントだった。連騰記録が12で終わったように記録はどこかで途切れるもの。当然限界がある。1週間前は後場に13連騰の夢が潰えた。とはいえ、記録は途切れればまた挑戦すればいいだけのこと。新たなステージで戦えばいいだけのこと。嘆きの壁に向かう場面ではなく、明日への期待を蓄積したい局面でもあるかも知れない。
振り返ってみればわずか1ヵ月前の5月8日のSQ値は19270円。そこから見れば、多少の下げは蚊に刺されたものなのかも知れない。毎日晴れることは絶対にないし雨が降り続けることも決してない。晴れ続けるとか降り続けるという錯覚が相場の綾を生み出しているだけのこと。14時を境に下落の停滞モードが一変し急落し25日線(20104円)を割り込んでの大引け。これで新高値銘柄100超連続記録も変動率1%以下連続記録も途絶えた。前週の後場は日経平均の続伸記録が途絶えたが、火曜の後場には魔物が棲息しているのだろうか。
日経平均株価は360円安の20096円と3日続落。薬王堂、エコナックが上昇、トヨタ、デサントが下落。
10日(水):
日経1面では「国の税収、上ぶれ2兆円超」の見出し。法人税収は1兆円以上上振れる可能性。賃上げと株式配当増で所得税も1兆円以上の上振れの可能性。合わせて2兆円という計算。一般会計の税収は54兆円で過去最高の60兆円(1990年)をとらえた。アベノミクス効果がプライマリーバランスを好転させてきたということになろうか。
給料と株価が上がれば税収も増えるという簡単な方程式にしか過ぎない。この逆の政策を提唱され実行してきたから日本経済の停滞が長引いたとも言える。構造改革も必要ではあることは間違いないが戦闘口論的緊縮モードでは景気は良くはならない。
先週の軟調局面で信用買い残は1040億円増加し2兆9907億円。売り残は223億円ながら減少し8460億円と4週ぶりの減少。考えておきたいのは日経平均採用銘柄のPER。前日段階でEPSは1242円でPER16.17倍。16倍割れなら19885円だが、この可能性は少ないと見る。
日経平均株価は49円安の20046円と4日続落。一時プラスの場面もあったが国会での黒田日銀総裁の「更に円安にはふれそうもない」発言を嫌気した格好でマイナス展開。丹青社、GMO−PGが上昇、ミサワ、久光が下落。
11日(木):
賑わいを取り戻していた株式市場に「冷や水」という表現が多い。衆議院の委員会での黒田日銀総裁は発言は冷却効果とも言われる。125円を黒田ラインと呼ぶ指摘もある。「実質実効為替レートでは、かなり円安の水準になっている。ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは普通に考えればありそうにない」。このコメントは唐突に出た訳ではなかろう。たぶんG7を通過して周到に準備されたものと考えた方がよいに違いない。表面的には円安トレンドの巻き戻しを惹起したことで投機家からの不満は高まったかも知れない。しかし、投機家が日本経済を牛耳っているわけでもない。自国通貨が売られる悲惨さを予防するためには必要なコメントだったと考えたいところでもある。なんでもねだる投機家に阿ることなく、正論を通した点では評価したいところ。市場が好循環でも、実体経済が弱くなればいずれ市場は停滞する。そもそも自国通貨が売られて繁栄した市場は過去にない。投機家の手前勝手な「円安礼讃論」に迂闊に乗ることへの戒めの方が今は必要だったと考えれば良いだけの事。125円という水準での予防的効果は悪くはないはずである。
一方で「これ以上のドル高の可能性が薄くなった」として米株は大幅反発。しかし「強いドル」で世界を席巻してきた米国という立場は捨てられないだろう。この呪縛が解けるかどうか。なんでも欲しがり声だけやけに大きい為替投機人の言うことだけを聞いていると本質は見失う。
「これまで円安でプラスだったのでどんどん円安になったらもっとプラスになるという訳でもない」。これは正しい認識に他ならない。どこまでも無尽蔵な円安を望むことの方が間違っている。心地よい円安はせいぜい130円までだろう。
騰落レシオは110%。サイコロは6勝6敗でアッと言う間に50%まで低下。
松井証券信用評価損益率速報では売り方マイナス11.939%。買い方マイナス4.017%。Quick調査の信用評価損率(6月5日現在)はマイナス6.31%。大商い株専有率は29.4%まで低下。空売り比率は35.1%まで拡大(今年は1月6日の37.8%が最大)。
面白いのは裁定買い残。東証発表は前週比717億円減少の3兆7640億円。しかし日経朝刊では前週比4538億円減少の3兆2458億円。日経は当限の数字を出しているので差が生じている。因みに翌限以降の数字は3820億円増加の5191億円。
先週も少しロールが進んでいたということになろう。
日経平均株価は336円高の20382円と5日ぶりに反発。ドンキ、フルキャストが上昇。クボテック、Klabが下落。
12日(金):
過去を振り返る習性に戻ってみると日経平均株価は先週の木曜は20488円。前日木曜の終値は20432円。歌って踊って騒いで酔って宿酔から覚めてみれば5日で94円しか動いていなかった。ギリシャも何の変化もなく雇用統計も通過。
黒田日銀総裁の後だしG7の円安冷や水発言もあった。それでも100円は動かなかった。それを毎日ああだこうだ、材料があるとかないとか、きわめて重要だなんてコメントが横行する。長年繰り返されたこの愚行は、きっとまだまだ続くのだろう。本質を見ないままの表面的な観測だけではそのうちに市場は飽きられてしまう恐怖が残る。6月メジャーSQ値は20473円となったが一度も上回ることなく幻のSQ値となった。
日経平均株価は24円高の20407円と続伸。ただFOMCと日銀金融決定会合を控え積極姿勢は見られず。メジャーSQということもあるい東証1部の売買代金は3兆5124億円と拡大。ディップ、寿スピリッツが上昇、イハラケミ、バイリーンが下落。
(2) 欧米動向
気の早い向きから「セル・イン・ジューン」などの声。
目先だけ見ればまた「売りの恐怖」なのかも知れない。
救いは日経朝刊に「下値メド」の取材記事が登場しなかったことだろうか。
あるいはマーケット面で紹介されているシティの「イッツ・バブル・タイム」のレポート。
「過去3回の利上げがないと株価は下げに転じない。
3回目の利上げは2016年7〜9月期までない。
割高な株価がより割高になる形で上昇し続けるだろう」。
これは正鵠を射たコメントと読みたいところ。
もうひとつ登場したのは99年〜2000年、04年〜06年の米利上げ時の世界の株価。
引用されたのはMSCI全世界指数。
どちらも利上げ局面での株高となっているのが歴史。
皮相的な見方で「利上げ=株安」の短絡的結論では救われなかろうか。
(3)アジア・新興国動向
MSCIはベンチマーク指数に中国A株を採用するのを見送った。
もしも中国A株(本土)指数がMSCIエマージングマーケットに採用されると・・・。
ドイツ銀行の試算では当初の指数ウェイト0.6%で200億ドルの資金流入。
最終的には4000億ドルになるという。
一方で台湾・韓国・香港には同額の売り需要が発生することになる。
だからアジア株がやや軟調だったのだが、これはなくなった。
その先にはアジアインデックスも控えており、実はこの結果待ちの相場でもあったといえる。
ここ数年、この時期に話題になるのだが、昨年も見送りで株価は戻った歴史。
実況では「理由はわかりませんが株価は上がっています」だったと記憶する。
その後メジャーSQを通過して株価は7月末まで上昇したのも歴史。
因みにMSCIをベンチマークとして運用されている資産は9.5兆ドル。
影響は大きい。
A株指数の採用見送りの理由は「自由化が必要」。
ただ2016年の見直しリストには残り、定期的な見直し以外でも決定を下す可能性はある。ずるい結論でもある。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
15日(月)米鉱工業生産、NAHB住宅価格指数、NY連銀製造業景気指数
16日(火) 首都圏新規マンション販売、米FOMC(〜17日)、住宅着工件数、独ZEW景況感
17日(水)貿易統計、5月訪日客数、イエレンFRB議長会見
18日(木)日銀金融政策決定会合、米経常収支、CB景気先行総合指数、BBレシオ
19日(金)黒田日銀総裁会見、米メジャーSQ
6月月足陽線基準は20569円(6月1日終値)
12月SQ値は17281円。
3月SQ値は19225円。
4月SQ値は20008円。
5月SQ値は19270円。
勝手雲の下限は19956円。
上限は20353円。
今年25日線を下回ったタイミングは大発会、節分、エープリールフール、GW。
結局そこで買っておけば何度も儲かったというのが今年の相場でもあった。
右肩上がりの相場であるから当然といえば当然なのだが、25日を割れると市場心理が暗くなる。
いい加減このマインドも変化しないものだろうか。
株式市場はいつも踊りたがるもの、舞いたがるもの。
日々動いている相場で踊りたいのに、いつも止められるような印象。
でも踊らなくても相場は前に進んでいくもの。
踊れなかった残念さ、舞えなかった無念さ。
この2年半の思いは過去20年の重さに匹敵するかも知れない。
記憶は過去を美化し、現在を嘆く仕組みのようなもの。
そして相場に対する欲望は、恐怖と一体感を持ったもの。
押し目を待って、押し目らしい押し目が無いと嘆く傍らで、そういう下落局面に遭遇すると「やっぱり株は怖い」。
ところが再騰局面を迎えると「どうしてあそこで動けなかった」の自責の念。
このリズムは遥か昔から繰り返され、教訓がなかなか活かされていない。
雇用統計を待ち望んで踊ったところで、所詮大して局面は変わらず宴の後の空しさだけを残してもの。
それでもまた雇用統計が近づけば、気分は落ち着かなくなるもの。
これはGDPでも日銀短観でも経済指標に一様に言えること。
待つことが目的となり、通過すれば過去のこと。
相場は本来未来を待つだけのものではないのだろう待つことに慣れてしまった不幸というのが少しはあるのかも知れない。
他律ではなく自律は依然求められている。
NISAの購入額は3月末で4兆4109億円。
昨年12月末から48%増加したとの発表。
投信が2兆9154億円。
株式1兆3983億円。
依然として投信が多い傾向。
だから、という訳ではなかろうがゆうちょ銀行は三井住友信託・野村と組んだ。
個人向け投信を郵便局で販売する方向という。
なにしろ日本中に張り巡らされた郵便局は2万4000局。
これは大きい。
考えてみれば住友が四国、三井が伊勢、野村が大阪。
積極的は資金運用は西が圧倒的に多い。
例えば地方金融機関の運用姿勢は静岡あたりを境に変化する。
東は債券運用主体。
西も債券運用が多いものの少しは株式運用もあった。
運用における西高東低は、米の二毛作に起因するなんて声も聞かれる。
1回しか米ができない場所ではリスクはとりにくく、二毛作地帯はリスク許容度が高いという説。
荒唐無稽でもないような気がする。
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