04月4週
【推移】
20日(月):
先週クレディが出したレポート「グローバルエクイティストラテジー」。日経平均の年末時点の目標を19500円→22000円に13%引上げた。理由はカバレッジ対象として日本株はピックアップ。このピックアップは決して行きずりの女性と言う意味ではない。投資対象として選ばれているということだろう。第2の理由は日本の財政拡大と金融緩和は継続し年末までに追加の金融緩和観測。そして主要地域の中で日本企業の業績改善が見込まれる。また企業の財務戦略が変化している。この財務戦略の変化こそ富の再配分を求める声に他ならない。いずれにしても22000円という数字が歩き始めている。一方でUBSが指摘した株価一休みの背景。
(1)2万円の達成感と高値警戒感
(2)決算前の手仕舞いと利食い
(3)2月のリバーサルと動きは似ており原油価格上昇がダメ押し
(4)新年度入りによる公的パッシブ買いの鈍化
(5)クオリティ無視は考えにくい
(6)クオリティ投資の大本山米国投資家からの需要は依然強い。
高ROE・高パフォーマンス銘柄から低PBR・低パフォーマンス銘柄が続くかどうか。このフレーズチェンジ(局面の変化)への対応が必要ということだろう。
日経平均株価は18円安の19634円と小幅続落。クボテック、オークマが上昇。FPG、パルが下落。
21日(火):
「自社株保有、最高の20兆円」の見出し。1年で4割増えて過去最高になったとの観測。企業の保有している金庫株は3月末時点で約19.5兆円。1年で増加したのは5兆円とされる。トヨタ2.5兆円、ファナック1.1兆円。2014年度の自社株買いは前年比7割増加の3.3兆円。この大きさが年間3割の株価上昇の背景の一つでもあった。でも上場企業が持っているお金は約100兆円。3.3兆円で3割上昇するのなら、10兆円とか20兆円が使われたら結構なパフォーマンスになる。日本株の出遅れ感は、むしろ遅きに失した成功例となるのかも知れない。しかも都合の良いタイミングで登場したのがコーポレートガバナンスシップ。官民そろって企業統治に真面目に取り組むというのだからある意味日本株買いの免罪符。オリンパスみたいな事件があると日本株は信頼できないが、スチューワードシップコードがあるのだから、これを信用しての日本株買い。もし失敗したとしても、ファンドマネージャーとしては言い訳のできる世界が登場することになる。遅れていただけに未整備且つ豊穣な日本企業の資本を赤ずきんちゃんとすれば、その資本の再分配に目を付けたオオカミが匂いを嗅ぎつけてすり寄ってきたということなのかも知れない。そこにコモデティの世界で利益を享受できなくなったその裏返しがエクイティの世界だという理由も加わる。イナゴのように先物系指数に群がる集団とそして個別株に群がる鳥みたいな一団。ROEやスチュワードシップなどの課題があれこれの方向に散らばっているのでにくくはなっている。しかしまとめてみれば方向は一緒。出遅れ日本株の味付けを良くして、食中毒に備えた方策を準備し、そして薪に点火。貪欲な世界マネーはそのくらいのことは考えるでしょうし、準備も怠りない筈。今はそんなタイミング。
日経平均株価は274円高の19909円と反発。TOPIXは07年11月以来の1600ポイント回復。岩崎電、メルコが上昇、Klab、レオパレスが下落。
22日(水):
前場寄付きは19999円。数分後に2万円台を一時回復しSQ値20008円も抜けて「幻」脱却。先週までの市場は「グロース・モメンタムの売り/バリュー・リバーサルの買い」。あるいは「食品・薬品・電子部品売り/銀行・証券・不動産買い」。持ち株は下がり持たない下部が上がった現象になったのは海外投資家だった。このアンワインドがあるのかどうか。225が主役なのか、素人機関投資家好みのTOPIXに移行するのか。その分水嶺なのかも知れない。
因みに市場を泳いでいるクジラは5頭。1頭目はGPIF、2頭目はKKR、3頭目はかんぽ、4頭目はゆうちょ銀、そして5頭目は日銀。
3頭目のかんぽ生命は昨年4月に2400億円、5月は1200億円の株買い越し。下半期入りの10月も2200億円の買い越し。かんぽ生命の金銭信託はアベノミクススタート時は1997億円。2月末時点では1兆2085億円。今年も同じような動きになるのだろう。そして、ゆうちょが預け入れ限度額を1300万にすれば4頭目のゆうちょも買いクジラ。 日銀のETF買いもおちおちとはしていられないのかも知れない。
日経平均株価は224円高の20133円と約15年ぶりに終値ベースでの2万円台を回復。日経JASDAQ平均は06年5月以来の高値を更新。ファナック、ソフトバンクが上昇。ソニー、村田が下落。
23日(木):
終値ベースでの2万円。やはり一気に抜き去ることが必要だった印象。ショボショボおっかなビックリ抜くのとは訳が違った。相場における気合は売り方ではなく買い方にあったの感。主役はメガバンクで揃って年初来高値を更新。みずほが5億株を超える出来高となってきた。2013年の5月相場以来のことで多少の多少の過熱感はあろう。しかし冷え性みたいな値動きだったからこれで平熱だろう。背景は4月30日の日銀金融政策決定会合での追加緩和との声。コレは違うような気がする。むしろりそなが政府へのお金を返したことによるフリーハンド化。そして金融行政そのものが「リスクテイク」を求めているからだろう。個別ではソニーが上方修正。全体軟調でも逆行高してきた訳は素人外国人買いと思っていた。実際に世界の資金運用担当者のなかには「日本株はソニーしか知らない」という人もいる。でも、業績が多少ついてきたことは追い風になろうか。東証1部の時価総額は588兆円。あと少しで登場全体の過去最高の611兆円(89年末で日経平均 38915円)。ここに到達するには日経平均が20500円程度までの上昇。GDPをはるかに越える前代未聞の事態に遭遇してみたいものである。89年末の東証1部の時価総額は590兆9088億円。これを抜けるかどうかが一つの課題でもある。その時の高値が38915円。そして09年3月のリーマンショックの時は7054円。その半値戻しが22984円。市場には「半値戻しは全値戻し」という格言がある。3分の1戻りを自立反発とすれば半値戻りはさらに前向きな評価。ただ本来の意味は「下落分の半値を取り戻したら深追いせずその場で利食い売りか投げ」。 ある試算では94%の確率で半値戻りで再度売られたというのもある。
しかし過去の右肩下がりでの試算とすれば役立たないのかも知れない。日経に登場したオリクスのシニアチェアマン氏。結構良いことを言われている。「日本の投資家にもっと株を買って欲しい。日本の個人金融資産の大部分は貯蓄に向かっている。この資産が投資に動き出したとき、ようやく日本市場は健全になったと言える」。寝転んだ福沢先生を起こすのは並大抵ではなかろう。しかし一方通行になりやすい国民性でもある。今はまだ「笛吹けど踊らず」。
日経平均株価は53円高の20187円と3日続伸。野村、物産が上昇。ソニー、JFEが下落。
24日(金):
「NTT、6年ぶり株式分割」の記事。NTTやJT、JR東などの当面の株価上昇、そしてメガバンクの堅調さ。これはゆうせいの上場を睨んだ動きという指摘もあるがそれではない。可能性は1対2の分割で、これによりNISAの対象になるということでもない。「NTTの個人株主数は昨年末時点で76万人。12年3月末時点では90万人。株価の値上がりによる利益確定の売りで減少傾向にある」。これは実は市場のパラドックス。多くの企業は株価の上昇と株主数の増加を望む。しかし現実には株価が上昇すると株主は減少する。株主数の増加は残念ながら株価の下落で実現するのである。時価総額が増加すれば株主数は減少。時価総額が減少すると株主数は増加。この二律背反は永遠の課題だろうか。株価の上昇で株主数が増加するようになると意外と株価は危険地帯なのかも知れない。
東証の1株当たり時価は1460円。一方で売買単価は1061円。2週間ほど前の売買単価は1200円台だったから少し低下してきた。比較感から言えばやや値がさからやや中位の株価が主役になってきたということ。単純平均株価は依然300円台でのスピード感のない展開だからあまり比較の役にたたない。この売買単価が3桁に落ちてくるとTOPIX優勢となろうか。日経平均株価は167円安の20020円と4日ぶりの反落。オービック、ベスト電が上昇。花王、トヨタが下落。
(2) 欧米動向
東京とアジアの株価の堅調さの裏側で目立たないNY株。
しかしNASDAQは過去最高値5048.62(2000年3月10日)を抜けた。
年始から確定申告の納税期限までの約4ヶ月半に他の指数をアウトパフォーム。
因みにダウは1.6%、S&Pが2.3%、NASDAQは5.8%上昇。
アノマリーでは納税期限以降もアウトパフォームする可能性が大とされる。
NASDAQが他の指数を上回ったのは18回。
平均騰落率はダウ7.1%、S&P8.1%、NASDAQ7.1%。
年末まではNASDAQかS&Pということかも知れない。
となると黙っていられのはNYダウだろう。
アップルを組み入れて下値不安を和らげたのは1ヶ月前。
銘柄入れ替えはダウ上昇に寄与しており、ナイキやGS、VISAなどの値がさが該当する。
逆にダウから外れるとパフォーマンスは良くなくなるというのが通説。
そこで話題になるのは次のダウ銘柄採用候補。
グーグル、フェイスブック、アマゾンなどが挙げられている。
一方で除外候補はマクドナルド、シェブロンなど。
実態の見える銘柄から実態の見えない銘柄への移行が更に進むのだろうか。
(3)アジア・新興国動向
週末の上海総合指数は4287ポイント。
過去1年間で約2倍に上昇した。
時価総額は3月末で4兆78311億ドル(約570兆円)。
日本株は4兆8103億ドル。
これもまもなく抜き去られるのだろう。
良くも悪くもパンダが世界を席巻している。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
27日(月)米2年国債入札
28日(火) 商業動態統計、米FOMC、ケースシラー住宅指数、日米首脳会談
29日(水)昭和の日、米1〜3月期GDP、安倍首相議会演説
30日(木)鉱工業生産、日銀金融政策決定会合、黒田日銀総裁会見、展望レポート、米シカゴ購買部協会景気指数、個人所得
1日(金)失業率、消費者物価、新車販売、改正会社法施工 米ISM製造業景況感、ミラノ国際博覧会(〜10月31日)
アメリカのアベノミクスに対する評価が気になる週だろうか。
因みに連休前半のはざまの東証再開以来の上昇確率は75%。
世の中の流れは明らかにシフトしている。
断片は露出しているもののその全体像はなかなか明確ではない。
しかし、変化の波は既に訪れているという。
目に見えているのは、コモデティからエクイティへの資金移動。
ボラ低く利幅の薄い商品の世界は終焉。
行き場を失った巨大マネーは当然エクイティの世界ヘと大移動を始めている。
その最先端で戦場のカナリアのような役割を担っているのが日本株市場。
だからNY主導型の相場ではなく、東京先導型の相場展開に変化したといっても過言ではなかろう。
まさにビッグウェーブが訪れた。
黒船という言い方はしたくはないが、世界マネーが日本企業の資産再分配に群がり始めた。
これが実はアベノミクス以降の相場とラップする。
溜め込まれた企業の資産の再分配を促したのは、言い古された指標のROE。
低成長でROEを伸ばすには自社株買いなどで分母を少なくすればいいこと。
これはEPSにも通用する。
古くから分母を削ってきた欧米企業にとっては一層の削減はもう無理。
しかし、何もやってこなかった日本企業は赤ずきんちゃんの世界。
ここを攻めて略奪しようなどいう思考法は欧米ファンドにとって当たり前だろう。
期を一にして登場したのがコーポレートガバナンスコード。
これが登場したことは、ある意味、日本株による資産再分配の免罪符になる。
欧米のファンドが「日本株を買う理由」のお膳立てが整ったということだ。
で、結論は・・・。
日本企業が溜め込んだ資産の再分配を促すことで、それを享受する外国人。
長いこと手付かずだったために魅力の増した日本株。
島の中で見ていると気がつかないが、海の向こうからの目にすると明らかにご馳走に映る。
そしてそこに群がる日本系アクティビスト。
株価インパクトのないGPIFをクジラと呼ぶよりも主役は残念ながら外国人。
この感覚を持たないと淋しい思いをするような気がする。
この流れは夢ではなく畏怖されるほどの現実になる可能性が高い。
キーワードは「富の再分配」。
ピケティ教授の「21世紀の経済学」が売れたのは理由のないことではない筈。
世界マネーの蠢く舞台と仕掛けは大きい。
まさに「赤ずきんちゃん気をつけて」に他ならない。
2万円という数字はとりあえず2000年のITバブルの記憶を呼び覚ました。
次38915円の記憶は、何をきっかけとして目覚めさせてくれるのだろうか。
JPの上場?
メガバンク・証券・ゼネコン・不動産の乱舞?
銀座の賑わい、兜町への人の戻り?
高額嗜好品の大量消費?
失われたものを取り戻すために必要だった時間はあまりにも長い。
でも心理的には失われた記憶は瞬時に取り戻せそうな気配。
オセロゲームの一気転換のようなものかも知れない。
別名はリバーシだからまさに心理の逆転復活みたいなものだろう。
アメリカ人がNYダウやSP500で行った復活が日本人に出来ない訳はない筈。
※ 株式投資は全て自己責任でお願いします。当サイトの掲載事項において損失をされた場合も当方は一切の責任を負いかねます。