01月4週
【推移】
20日(月):
日曜日経の「風見鶏」。安倍首相の東京五輪を首相として見届けたいという願望。そのための理論構成が紹介されている。
つまり長期政権への方程式である。お手本は、佐藤内閣、中曽根内閣、小泉内閣。佐藤内閣は日経平均を1.6倍、中曽根内閣は1.8倍に上昇させ長期政権を築いた。小泉内閣は日経平均を反転させ1割強上昇させた。
日経平均株価を上昇させて解散すれば議席は増えるというのが今の永田町の常識。となると、昨年11月衆院選挙時の日経平均株価は17357.51円。これを2017年に上回っていれば選挙への道というのがシナリオ。東証1部の売買代金は1月5日大発会以来9日ぶりに2兆円割れ。原油安にECBの動向、そしてスイスフランの動揺と中国上海株価指数の大幅安。懸念材料に欠かない市場オらしい。結構説得力はある。とういうか、17000円台が実は永田町の死命線ということにもなる。
日経平均株価は150円高の17014円と反発。林兼、キッツが上昇、シャープ、トヨタが下落。
21日(火):
変動幅の大きい展開。日経平均の昨年12月26日の日中値幅は74円。翌週の29日の日中値幅389円からはずーと100円超の値幅。「動かない」と嘆くのが市場の常だが、「動く」こともそろそろ止まって欲しいような論調になってきた。市場心理というのは不思議なもの。
フランスのオランド大統領の「ECBは22日の理事会で国債購入を決定」。前日の日経1面下の記事での株高トレンド。EU圏での経済規模2位の国家のトップの異例の言及。巷ではGSなどが5000億ユーロ規模などとの観測。一部では「国債購入を迫った」との声も聞かれる。ドイツのメルケル首相の「見守る」というコメントは本来的なのだろう。しかし市場は「いいとこどり」で動くものでもある。
独フランクフルター・エルゲマイネ紙は「ぬるま湯体質の国は自らの変革で問題を解決する必要」。これが正しい意見なのだろうが、市場というものは時として弱者救済に翻弄される。
中国のGDPや鉱工業生産が市場予想を上回ったことも追い風材料。大体、終わって3週間で結論が出るGDPなんてもともと胡散くさいもの。それでも通過すれば安心感を醸し出すから不思議なもの。そしてその中国の名目GDPは約1200兆円で日本の2倍。この巨大経済を無視はできないことだけは理解できる。一番の好材料はキング牧師の誕生日でのNY市場の休場。IMFの世界経済見通しが3.5%と下方修正されたことなどかき消された格好。余計な雑音がなければ東京だって自立できるものだろう。
日経平均株価は352円高の17366円と大幅続伸。12月SQ値17281を通り越し、25日線17264円を今年初めて上抜けた。おまけは1月SQ値17341円をも上抜けたこと。大寒・新月・ポイントの日らしい動きとなった。NSW、渋谷工が上昇、スカイマーク、ミツミが下落。
22日(水):
多少細かい話だが、昨年12月時点の大卒内定率。女子は81.9%で前年同期比4.7ポイントの増加。12月時点としては1996年以降最高となった。男子を含めた全体でも4年連続の改善で2008年の80.5%に迫っている。立教の女子大生の内定率は100%。となるとこれから始まる人口減少社会では多少使えない学生もいるにせよ学生確保は至上命題となろう。
ここで考えられるのは、IRとPRの変化。上場の動機が優秀な学生の確保という企業も多い。個人投資家育成のIRが学生確保のPRを兼ねるケースも当然登場しよう。やはり「ヒト」がテーマであり、そのビジネスは拡大するに違いない。
日経平均株価は85円安の17280円と3日ぶりの反落。マーベラス、ニチイ学館が上昇、キッツ、東京製鐵が下落。
23日(木):
日銀金融政策決定会合通過。原油安を背景に物価上昇率見通しの2%達成は揺らいできた。「金融政策の現状維持」が事前予想で、そのとおりの着地。本来はイーブンの材料だが、事前にサプライズ期待でのヘッジみたいな買い。これの解消が多少あってのマイナス展開だったということだろうか。
日経では「物価伸び悩み、説明苦慮」という見出し。しかし本当に物価上昇が起こった時に今度は適度に止められる保障はない。そもそも物価なんてコントロール不能なもの。「狂乱物価」なんて死語だが、「物価急騰、説明苦慮」なんて見出しは見たくない。
日経のマーケット面の見出しは「裁定買い残、2年ぶり低さ」。サブタイトルは「底入れサインとの見方も」。
1月16日時点の裁定買い残は前週比2725億円減少し、2兆3185億円。
2013年1月以来の水準まで低下した。今年になって増加した外国人投資家の売りが背景との解釈。この2013年1月〜2月と言うのは興味深い出来事があった時期。あろうことが公表された数字が訂正されたのである。
2月1日時点の裁定買い残は
3兆7505億円→2兆7887億円。
2月8日時点の裁定買い残は5兆9668億円→2兆6138億円に訂正。
裁定買い残が急減した後は相場が出直ることが多い」というグラフまで紹介されている。そもそも裁定買い残の過去最高水準は6兆円、最低水準はわずか2500億円。
しかし裁定業者の最低枠は2兆円程度。2兆円を下回れば確かに売られ過ぎ水準になる。加えれば指数と裁定買い残の相関度合いは90%程度。最低限まで減少したものはいつか増える。その増加に期待感満載というところ。観測は裏切るが数字は裏切らないもの。外部の雑音に惑わされないことがやはり重要だろう。
アジアのコンテンツ市場争奪戦が熱を帯びてきた。「日韓コンテンツ、アジア市場争奪)と言うのが日経の見出し。韓流ブームで先行した韓国勢は大手芸能事務所が中国IT大手テンセントと提携。巨大市場の深堀り狙うという論調。日本勢では松竹(9601)、アミューズ(4301)などが動き始めたとの指摘。2018年のアジアコンテンツ市場は約74兆円との予測。
日経平均株価は48円高の17329円と反発。日中値幅は126円と今年最低。DMG森、アゴーラが上昇、三井住友建、保土谷が下落。
24日(金):
日経1面は「欧州中銀が量的緩和、国債など購入1兆ユーロ超」の記事。事前予想の範囲とはいえ通過したことで各国市場は上昇した。ところで、安値をつけた昨年10月以降の動き。複雑な動きをする市場も簡単に表現されてしまう。
そもそも安値からの反転は
10月17日(14532円)、11月17日(16973円)。12月17日(16689円)。今月は16日(16592円)。
まさに「月の20日に物売るな」の展開だったということ。単純図式にすれば「月の前半安、月の半ばに安値、月後半は上昇」。あれこれと、確認も出来ない「意図的商い」や「利益の確定売り」、あるいは臆病なだけの「見極めたい」という動きの詮索など不要なのだろう。意図的商いが成立するのなら、損失過大なヘッジファンドはいないはず。利益をひとまずでも確定できるのなら、皆が儲かっている筈。そして「損失確定の売りや買戻し」というのが聞かれないのは不自然。「
見極めたい」人たちばかりなら2兆円もの売買代金には達しない。日経平均株価は182円高の17511円と続伸。4週間ぶりに17500円台を回復した。第一生命、中国塗などが上昇、西武、西松屋が下落。
(2) 欧米動向
これか?
と思えたのは事前発表されたオバマ米大統領の一般教書演説の内容。
悪い中身は2つ。
ひとつは富裕層が保有する株式などの資産課税を強化する方針。
世帯収入50万ドル(6000万円)以上の場合。
キャピタルゲイン課税の最高税率を現行も20%→28%へ引き上げの方向。
逆に夫婦で20万ドルの中間層までは課税せずの方向。
相続税の優遇制度なども廃止。
相続でなく投資や消費にお金を回す方向へ導く姿勢という。
明らかに上位1%の富裕層に対する課税の強化は決して吉とでることはなかろう。
中間層を優遇しても、消費や投資にマネーが向かうテンポは早くはない。
レイムダックのこの時期に何を考えているのかが全く理解できない方向ではある。
ポピュリズムと市場は全く相容れないものでもある。
これはアメリカだけでなく東京も同様。
商品券なんてばら撒いたって消費効果が拡大するとは到底思えない。
さらにひどいのは500億ドル以上の資産の金融機関への課税強化。
金融機関の債務残高に0.07%の手数料を徴収するという。
金融機関がレバレッジをかけて「危ない投資」に向かわないようにするのが背景という。
自由な市場を形成できないNY市場なんて、後世から見れば滑稽な世界に映るだろう。
そして・・・。
ウォール街が憎いという心情は理解できなくもないが、どう考えても間違っている。
金融規制当局と金融機関のバトルの代理戦が原油やスイスフラン?
そんなことはないと信じたいが・・・。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25株価指数のうち23指数が上昇。 上昇1位はロシアで週間騰落率6.6%(13年末比騰落率▲43.1%)。2位ギリシャ6,3%(▲27.7%)、3位フランス6.0%(同△8.0%)。昨年ワーストパフォーマンスのロシアやギリシャの上昇上位の示すものは、本質的悪材料に囲まれてはいないということかも知れない。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
26日(月)貿易収支、独IFO景況感、インド・豪休場
27日(火)米FOMC(〜28日)、耐久財受注、ケースシラー住宅指数、消費者信頼感、英GDP
28日(水)米5年国債入札
29日(木)米中古住宅販売仮契約
30日(金)失業率、消費者物価指数、鉱工業生産、米GDP速報値、シカゴ購買部協会景気指数
IEA(国際エネルギー機関)はOPEC非加盟国の今年の生産見通しを引き下げた。
同時に価格の上昇は年後半との予測。
市場は「生産見通し引き下げ」を好感といったところ。
「年後半まで価格は上昇しない」は見えないフリ。
一方でエネルギー分析の専門家であるダニエル・ルーキン氏の分析。
「米原油の増産は続き、15年の上半期まで減少はないと予測。
ただシェールのコストは下がっている。
今後はM&Aでコストを改善する企業も出てくるだろう。
シェール革命は初期の段階。
革命は続く。
原油価格下落での勝者は原油を輸入に頼っていた日本と中国だ。
特に日本はエネルギーの高コストが製造業の競争力を損なっている事実がある。
安倍首相は安いエネルギーで経済を活性化する政策を『4本目の矢』とすべき」。
この後段は見えないフリだろうが、いずれ無視はできなくなる筈。
国富(不動産などの資産から負債を差し引いた正味資産)は6年ぶりに増加した。
13年末の国民総資産は7.2%増の9294.6兆円。
そのうち対外純資産は325兆円で9.7%増加。
住宅などの有形固定資産は1501.2兆円で3.1%増。
家計は2328.3兆円で4.4%の増加。
国や地方の国富は0.4兆円で12年の債務超過からは脱却。
これを見れば、国の借金などさほど問題にはならない。
そして国富自体は兆円というよりは京円単位に迫っている。
数字のゼロが16個の世界となってきた。
バンカメメリルの月例ファンドマネージャー調査。
現金への資産配分1月は、4.5%で0.5%ポイント低下した。
一方、ファンドマネージャーの3分の2以上が今年は株式がアウトパフォームすると予想。
半分以上が株式を「オーバーウェイト」としていると回答。
米国株式をオーバーウェイトとしているとの回答の割合は24%で前月の16%から上昇。
新興国市場は敬遠され、13%がアンダーウェイトとの回答。
そして米大手運用会社PIMCO(パシフィック・インベストメント・マネジメント)。
今年の資産配分見通しで日本や欧州など世界株をオーバーウェイト。
各国国債などの証券をアンダーウェイトとした。
米国株は「かなり評価されている」との見方。
一方で日本・欧州株が米国株をアウトパフォームするという明るい見通し。
「誉め殺し」という可能性も否定は出来ないが・・・。
水曜の日経スクランブルでは「株高誘うか金利ゼロ」の見出し。
「世界の国債市場では利回りが1%以下の比率が5割りを超えている」。
そして「債券運用が意味をなさなくなる現実が『利回りへの渇望』を生むだろう」。
グレートローテーションではなく、金利低下→株価上昇シナリオ。
中央銀行が競ってインフレを模索している現実はいずれバブルの波になるのかも知れない。
その時に制御不能にならないことが肝要だが、それには目をつぶるということなのだろう。
自分の足で立っているか?
というのがゴルフではよく言われる。
クラブを地球に当てて3本の足で立ってしまうのではなく、クラブを浮かせ気味にスタンスするのが意外と極意なんてことも言われる。
株式市場でも問われるのは、この「自分の足で立っているか」。
他人の解釈を気にして、自分で考えなくなるとそれこそ相場シナリオというのは支離滅裂なものと化してしまいそう。
アメリカが金融緩和を縮小すれば、株は下がるという他人の解釈。
いつの間にか「アメリカの金融緩和縮小は足元株高の背景」なんてすり替えられた。
あるいは「消費増税をしなければ世界の投資家は日本株売りに走るので、株安」という多くの市場関係者が唱えたシナリオ。
半年もすると「消費増税は延期しなければ株安」という大多数の意見に集約された。
目先を走る多数意見がしばしば誤った結果となることが多い株式市場。
そんな世界で、信じられるのはたぶん他人に惑わされない自分の思考法なのだろう。
だからこその「自分の足で立っているか」というのは結構重要な文言になってくる。
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