11月第2週
【推移】
4日(火)
:3連休あとのシカゴの日経平均は17000円台。金曜の後場の14時ころまでは15000円台。ハロウィーンプレゼントとか不意打ちの緩和とか、いろいろな表現はあるもののそれでも市場が瞬間変わりしたことは間違いない。驚きこそ市場が求めているもの。それが投資心理の本質なのだろう。下げの驚きも上げの驚きも一緒。その驚きこそが誘蛾灯なのかも知れない。乱世2日目の東証1部の売買代金は5兆4304億円。売買高は52億株。新高値は330銘柄。後場に萎んだものの一時17127円まで上昇。特にJPX400採用銘柄の強さが目立った。日銀ETF購入枠拡大に対するご挨拶だったのだろうか。興味深いのは値上がり1位が兼松日産農林、2位が宇徳。指数選好先物主導型とはいいながら、中身チックには往年の材料株の強さ。相場は理屈では動かないということの証左でもあろうか。日経平均株価は448円高の16862円と4日続伸。一時前日比713円高の17127円まで上昇した場面もあった。東証1部の売買代金は5兆4304億円、売買高は52億株。東日本銀、アイフルが上昇、トクヤマが下落。
5日(水)
:日経朝刊商品欄では「金、4年3ヶ月ぶり安値」の見出し。金の現物も資金が流出してETFの残高は6ねn1ヶ月ぶりの低い水準との指摘。金ETFの代表銘柄SPDRゴールド・シェアの純資産残高は741.2トン。2008年10月以来の低水準まで落ち込んだ。リーマンショック以降マネーの注目を集めてきたのが歴史だが、これも潮目。ようやく金の世界のわが世の春は終焉になるのだろうか。下落を続ける株価を横目に上昇していたのが08年以降の金の歴史。価格の変調は今年になってからとはいえ、もう充分に甘い汁は吸ったであろう。いつまでも金属や非鉄金属の価格を株価が羨むような世界は展開されても困るもの。それにしても08年からの6年は長かった。株と債券と金のそれぞれでのアンワインド。世界の風景は少しずつ変わっていく。次は債券の番であって欲しいところ。市場関係者の言。「生損保・銀行・信金信組に至るまで、火曜までとにかく売り一色でした。売買手数料は今年最高」との話が傍証になろうか。だからこその火曜日の東証1部売買代金5兆4304億円。しかし昨日も3兆5458億円だったからこれで5日連続で2兆円越え。買戻しもあったとはいえ、毎日2兆円以上の買いもあったということ。こちらを重視すべきだろう。業績の下方修正を発表したソフトバンクは反落。日経平均を約22円押し下げた。スプリントでの見込み違いが下方修正の要因とされる。対照的だったのはトヨタの増額修正。今期売上高を25.7兆円→26.5兆円、営業利益を2.3兆円→2.5兆億円、最終利益を1.78兆億円→2兆円に引き上げ。減益見通しから一転、最高益更新見通しは評価できよう。今期の想定為替レートは対ドルで104円、対ユーロで137円。まだ糊しろがありそうな気がする。空売り比率は10月30日36,6%→10月31日29.0%→11月4日29.6%。ようやく30%割れ。東証1部の時価総額。10月30日464兆円→10月31日483兆円→11月4日495兆円。バズーカ第二弾の効果は時価総額で約30兆円の増加。3日で30兆円の富を生み出す力はやはりすごい。因みに10月17日のPERは13.98倍。前日は16.28倍まで拡大。NYダウが15.4倍、S&P500が17倍だからそろそろなんて声もある。日経では07年11月は18.2倍まで行ったとの指摘。日経平均採用銘柄のEPSは1035円。18.2倍は18837円。やはり計算だけは出来る。中間決算が進んでもEPSが伸びないのが気にかかるところ。日経平均株価は74円高の16937円と5日続伸。7年ぶりの高値水準となった。船井電、イチケンが上昇、ツクイ、日ケミコンが下落。
6日(木)
:小さな記事だが見落とせないのが「REITが活況、売買代金626億円」。3日連続で500億円越え。2013年5月の6日連続以来の記録。因みに東証REIT指数は4日に1734ポイントで08年1月以来6年10ヶ月ぶりの水準。前日上昇した日本初のヘルスケア特化型の日本ヘルスケア投資法人、初値は公募売り出し価格の5割高。「個人金融資産を老人ホームなどに有効活用する枠組が整った」とは同社山内社長の言。 130億円の運用資産を3年で1000億円まで増やす方向という。REIT時価総額10兆円への道はそう遠くなさそうな気配。スタートした01年9月は不良債権の受け皿。現在は民間マネーによるインフラ整備の尖兵。まさにREITは国策の歴史という流れは踏襲されている。米中間選挙は共和党勝利で終了。上下院で過半数を握った向こう側にあるものはひとつは政治の混迷であることは間違いない。ただエネルギー・民間の医療、医療保険などのヘルスケア・地銀中心の金融農業・教育などのセクターにとっては追い風が吹いてこようか。その証拠に昨日のNYではエネルギー関連が強い展開だった。明るかったのは共和党のマコネル上院院内総務。連邦債務上限引き上げ問題をめぐり「政府機関の閉鎖やデフォルトは引き起こさない」と明言。これは悪くないことになる筈。ドル円は一時115円台半ばとおよそ7年ぶりの円安・ドル高水準まで下落。円安による輸出関連株の業績拡大よりも物価上昇への警戒感が高まったことで株価は反落。115円台で効かなくなった為替のアクセルといった印象だった。もっとも先物手口を見てみれば外資系商品投資顧問業者御用達証券の大暴れ。類推すれば「ドル高=円安、株高」シナリオに賭けたポートの巻き返しだったのだろう。そしてそのトリガーが1ドル115円且つ日経平均株価17000円。ならば昨日午後の急落の要因としてはもっともらしく聞こえる。それよりも為替の円安で思い起こすのは政府が120兆円以上持っている米国債の評価損。40兆円余りの評価損があるとされていたがずいぶん減ったであろう。日経平均株価は144円安の16792円と6日ぶりの反落。日清紡、古河電池、楽天が上昇、ファーストリテ、ソフトバンクが下落。
7日(金)
:日経1面では「再増税せめぎあい」の見出し。「15年10月の消費税再増税は法律で定められており」は改めて確かにそうである。再増税延期の場合、15年度予算で消費税収は約1.5兆円の減収と言う試算。逆に言えば消費税2%増税で得られる税収は1.5兆円しかないということ。再増税延期で得られるだろう景気拡大及び株価上昇で得られるだろう税収の方がたぶん大きい。となると、差し引き計算すれば、延期の方が利が多く「三方よし」になる筈。近江商人の心得では「売り手、買い手、世間」だが「政府、市場、景気よし」となろうか。たかが1.5兆円のために、また「空恐ろしさ」の時間を迎えるのが得策なのだろうか。10月31日付けのNYタイムズ。「日本への謝罪」と言うコラムを書いたノーベル経済学賞受賞のポール・クルーグマン教授。デフレ・経済危機先進国日本の処方箋を評価しなおす模様と評された。昨日来日してのコメントは「勢いを失いつつあったアベノミクスに日銀は再び息を吹き込んだ。国内経済の打撃は大きく、消費税再増税は急ぐべきでない。1年半〜2年の先送りであれば問題にならない。日本の債務は自国通貨建てギリシャの債務危機のような事態は起きない。本格的な景気回復には「政府が積極的な財政出動に乗り出す必要がある」。矛盾する論理のコメントだが、それでも援軍ではある。1030円前後だった日経平均採用銘柄のEPS(1株当たり利益)。一昨日は1035円だった。昨日は16792円(日経平均株価)÷15.93(PER)=1054円(EPS)。 ようやく上がり始めた。今年3月から低迷したEPSが順調に上昇してくれれば何よりの好材料。フランスとかアメリカの市場関係者のコメントは「日経平均は年末までに18000円。TOPIXは来年9月に1500まで上昇。最大1865の可能性も」。「1ドル120円程度まで円安が進めば日本企業のROEは10%強と欧州に並ぶ」。 これくらいしか根拠のない推論での18000円、1865ポイント」。ないよりはマシかも知れない。日経平均株価は87円高の16880円と反発。東証1部の売買代金は2兆4760億円、売買高は24億株と追加金融緩和発表以降最低水準となった。九電など電力セクターが上昇、スズキが下落。
(2) 欧米動向
1945年以降、NY株のパフォーマンスが最も良かったケース。「大統領が民主党、両議会は共和党が過半数」だったとされる。これまでの「大統領民主党、議会の過半数は異なる政党」(4年)で騰落率13%。これからの「大統領民主党、議会の過半数が同じ政党」(8年)で騰落率15.1%。 一番長かったのは「大統領民主党、議会の過半数が同じ政党」(22年)で騰落率9.8%。それと「大統領が共和党、議会の過半数は民主党」(22年)で4.9%。「大統領が共和党、議会も共和党が過半数」(6年)も騰落率は15.1%。
2年後はここに期待なのだろうか?
米雇用統計通過。非農業部門雇用者数は21.4万人増での着地。市場予想は23.5万人増だったからやや不満足かも知れないがそれでも20万人以上の増加。9月分は24.8万人→25.6万人、8月分は18万人→20.3万人に上方修正。失業率も5.8%と08年7月以来の水準まで低下。リーマンショック後のピークは10%だった。少なくともアメリカの雇用は悪くない。
(3)アジア・新興国動向
ウクライナが騒がしいし、イタリアの国債利回りも上昇。米国が落ち着けば、材料を他に求めたがる傾向は変わらない。
10日(月) APEC首脳会議(〜11日北京)、米3年国債入札、中国生産者物価・消費者物価
11日(火)国際収支、消費者態度指数、景気ウォッチャー調査
12日(水)マネーストック、米卸売在庫、10年国債入札、
13日(木)企業物価、機械受注、米財政収支、中国各種経済指標
14日(金)オプションSQ、米小売売上高、独GDP、ユーロ圏GDP
オプションとはいえ、今週末はSQ。
過去のSQ値を振り返ってみれば・・・。
10月15296円。
9月メジャーSQ15915円、8月15036円、7月15094円。
6月メジャーSQ14807円、5月14104円、4月13892円。
3月メジャーSQ14429円、2月14536円、1月15784円。
昨年は12月メジャーSQ値は15303円。
昨今の16000円台水準のSQ値を探すと・・・。
2007年10月17450円、2007年8月16669円、2007年7月18177円。2007年6月17912円、5月17611円、4月17658円、3月17290円、2月17311円、1月16888円。06〜07年への蘇りが必要となってきた。
第一次安倍政権誕生時の日経平均株価は15557円。終了時の日経平均株価は16401円。7年の時間を経て前回の政権の時の日経平均株価を取り戻した格好。もっとも在任中の高値は07年7月9日の18261円。これがまだ残っています。小泉政権の時の高値が17563円(06年4月7日)でしたから、これはもうすぐそこまで来ています。先週と今週で罫線は大きな窓を空けるでしょうから罫線が追い付いてくるまでは多少の時間が必要な筈。その間は罫線に惑わされなくて済みそうです。「指針がない時ほど自分に忠実になれる」と言っても結構難しいことですが・・。
日経平均株価の17000円台は2008年10月18日以来。
当時と今の経済データを比較してみると・・・。
実質GDP=526兆円VS525兆円
失業率=4.0%VS3.0%
日銀のバランスシート=102兆円VS279兆円
TOPIX=1617VS1371
10年国債利回り=1.635%VS0.44%
ドル円=116.30円VS114,70円
この7年間のセクター別騰落。
上昇=建設38.6%、情報通信37.4%、ゴム36.8%、サービス29.5%
下落=海運79.6%、空運64.1%、鉄鋼61,7%、鉱業55.7%
上昇率上位
富士重工633%、ファーストリテ512%、ソフトバンク204%、GSユアサ133%、京成106%、アサヒ96%、IHI92%、中外薬91%、ミネベア90%、大成建88%。
下落率上位
ミツミ87%、東電85%、トクヤマ85%、シャープ85%、板硝子84%、川船84%、平金82%、商船三井82%、東海カ80%、日製鋼80%。
前回の異例の金融緩和は昨年4月4日。4月3日から5月22日までの上昇率は26.4%。要した日数は1ヶ月半。今回当てはめてみると、12月半ばに19800円という計算にはなる。日経でも「日銀相場に賞味期限」として同様な記事。2001年3月19日が55日。2012年2月14日が53日。そして昨年4月4日の3回が45日。賞味期限はこうなるという。平均して50日だから来年1月中旬までは続くのかどうかが課題ではある。消費税の動向、補正予算の動向などが微妙に関わってこようが基本はカネアリだろうか。
そして・・・。消費増税の問題。確かに延期するに越したことはない。これは自明の理。ただ・・・。見失いがちなことがある。今年4月に消費増税を行い景気は足踏みとなった。しかし株価も足踏みとなったものの、明確に反落した訳ではなく、その後の高値を更新した。要は上昇基調にブレーキがかかって時間がかかったものの吸収したということになる。この論理は誰も使っていないが財務省なんかは使うべきかも知れない。
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