08月2週
今週の相場感
28日(月)
土曜日経では「日経平均半年ぶり高値、市場は徐々に上昇の見方」との記事。ストラテジストたちの9月末までの見通しは「15000円〜17000円」。昨年末の高値が16291円だからこれを上回っている。もっとも17000円と唱えられても根拠は希薄。米長期金利の上昇や国内企業決算期待、公的資金の配分見直しなど茫漠としている。それでも17000円。何回も繰り返しているが、所詮現在値プラス1000〜2000円の世界を脱却してなさそう。土曜日経でのもうひとつ目に付いたのが菅官房長官。「2015年10月に消費税率を8%→10%に引上げるかどうかの判断を12月頃に判断する」と明言したとの記事。GDP速報が11月半ば、確定値が12月上旬だ。だから12月頃だ」とのコメント。「私たちはデフレ脱却最優先の政権だ。状況を慎重に見極めた上で、判断したいというのが首相の思いだ」とも。首相官邸では、株価が喫緊の課題だと言われている。「なぜ、下がるのか」という質問から始まり、「この材料にはなぜ反応しないのか」とも。聞く限りにおいては、まさにかつての証券会社の株式部の会議の様相。だからこそ水素が出てみたり、電線地中化が出てみたり、あるいは品川再開発やカジノ構想。個別材料が業界紙のように経済紙のトップを飾るのかも知れない。
重要なのはココを抑えておくこと。日経平均は15500円台を回復。近くて遠かった14490円を抜けた。それこそ次の窓明け水準は1月23日に15690円。ここを埋めれば昨年末の16320円とつながる。埋めに行くには、右往左往かも知れないが、それでも、夏らしい夏の印象。日経平均株価は71円高の15529円と続伸。イチケン、日立化が上昇、Vコマース、吉野家が下落。

29日(火)
日経では「円ドル取引半減、19年ぶりの低水準」の見出し。何が19年ぶりかというと、1〜6月の銀行間の直物取引。
「取引が細れば経済情勢の変化で相場が乱高下する」が言いたかったのだろうか。一方で、個人のFX取引も減少。店頭FXの上期の取引額は約1000兆円。前年同期からは3割減少したという。「新興企業株などの取引に移っている」という指摘もある。日経平均株価は88円高の15618円と3日続伸。日精線、キーエンス、日産化が上昇。アイフル、ホンダ、野村が下落。

29日(水)
喧騒なく静かな上昇。スルスルと指数は上昇してきた。もっとも指数は合成の誤謬の最たるものでもあり、「だから何」でもある。日経平均株価は15700円台への窓埋めを狙えるところまできた。それでも騰落レシオは106%。一気に指数が上向かなかったのは結局日柄が必要だったのだろう。「山より大きなイノシシは出ない」の裏返しでもある。でも「山より大きな鹿が出るかも知れない」と言う人もいる。例えば東証1部の時価総額は日経ベースで465兆円。6年7ヶ月ぶりの水準を回復した。「中核は内需関連とアジアで稼ぐ製造業」なんて分析もある。「日経平均株価は昨年末高値には届かないが、市場全体は着実に底上げが進展」。これは正しいだろう。松井証券信用評価損益率速報値。売り方マイナス12.54%、買い方マイナス3.08%。カラ売り比率は、25.4%(前日は26.8%)に低下。6月13日(24.8%)以来の低水準。30%割れは6営業日連続となった。3ヶ月連続での月足陽線となれば昨年4月以来のこと。日経平均株価は28円高の15646円と4日続伸。ホンダ、花王が上昇。スカイマーク、エンプラスが下落。

30日(木)
日経では「円、売り勢い欠き膠着」の見出し。「7月の値幅、39年ぶり低水準も」。39年ぶりの中身は7月のドル円の値幅。このままだと高値101.06円、安値102,27円と値幅は1.21円。6月も1.33円で2011年11月以来の狭さだった。今月は1975年8月の0.53円以来。FX業界にとってはある意味大変なことではあろう。しかし実需を担っている企業の財務経理担当にとっては為替の静けさはウェルカム。迂闊に動かれるよりは「為替は動かない方が」よほど心地よいに違いない。木曜の日経というのは記事ではなく裁定買い残や信用評価損率など数字が楽しいもの。 Quick調べの7月25日現在の信用評価損率はマイナス6.53%と2週連続の改善。かなり良い水準で快晴状態となった。信用取引の売りと買いの比率の貸借倍率は5.77倍。7月4日の5.67倍がボトムとなっている。今年4月11日が8.74倍、昨年6月14日が8.06倍だったからまだ余裕。ボトムは2012年12月の2.73倍だった。裁定買い残は1103億円増加し2兆9997億円。昨年末の4兆円までこちらも余裕だし、過去最高水準の6兆円はまだ遠い。東証1部の全銘柄の益回りは6.27%。PERは15.08倍。長期債利回り(0.525%)並みのPERならば190倍だから、むしろ割安感だろうか。騰落レシオも102%と過熱感は薄い。安倍首相の外遊中の株高なんてアノマリーなど必要ないのかもしれない。日経平均株価は25円安の15620円と5日ぶりの反落。ソフトバンク、ファナック、フェリシモ、コロプラが上昇、トヨタ、ワコムが下落。

25日(金)
日経平均の月足は3ヶ月連続で陽線で「赤三兵」。月足陽線3本連続は1999年以降で9回。(1)99年10月〜。
(2)01年10月〜。(3)02年2月〜。(4)03年5月〜。(5)04年2月〜。(6)05年5月〜。(7)09年3月〜。
(8)12年1月〜。(9)12年10月〜。このうち(2)、(5)、(8)は3本だけの陽線で終わった。残り6回はそれぞれ4〜9本の月足陽線を重ねる大相場につながった経緯がある。(9)はアベノミクス相場の初期局面。(6)の05年のケースが今に似ているかもしれない。最終的には陽線が9本連続。相場は結局06年4月の1万7563円まで約6割高となった。日経平均株価は97円安の15523円と続落。NYダウの大幅安の割りには下落は限定的だったという声も聞かれる。ドル円は103円に迫る場面もあった。ダイジェット、エプソンが上昇、島精機、アマノが下落。

(2)欧米動向
アメリカのバンカーや学者というのは、どういう訳かマーケットを語るのが好きなようだ。
昨日はグリーンスパン元FRB議長のブルームバーグTVとのインタビューでのコメント。
「株式市場はかなり長期にわたって相当急激に回復してきた。
いずれ大幅な調整があると想定する必要がある」。
市場では、異例の低金利で資産バブルが発生するのではないかとの懸念が浮上しているという。
それにしても、元中央銀行トップのこのコメント。
何が裏側にあるのだろう。
というか、免罪符?という気がしないでもない。
現FRB議長のイエレン氏も今月言っていた、。
「小型株、バイオテクノロジー株、ソーシャルメディア株などが割高」。
バンカーとか学者さんの相場観が優れているという話は滅多に聞かないのだが・・・。


(3)アジア・新興国動向
上海総合株価指数は年初来高値を更新した。シャドーバンキング問題などは見えないフリなのだろうが相場の巻き返しは結構強い。7日発表予定の中国貿易統計に関心が高いという声も聞かれる。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・。

4日(月)
マネタリーベース、カナダ休場
5日(火)
米ISM非製造業景況感、製造業受注、米アフリカ首脳会議、ASEAN外相会合、
6日(水)
景気動向指数、米貿易収支、BOE金融政策委員会
7日(木)
日銀金融政策決定会合、都心オフィス空室率、米消費者信用残高、ECB定例理事会(ドラギ総裁会見)

8日(金)
失景気ウォッチャー調査、国際収支、黒田日銀総裁会見、オプションSQ、米卸売在庫、中国貿易収支


日本のGDPは約500兆円。
これを越えて時価総額が増加するにはよほどの材料は必要だろう。
因みにリーマンショック後のボトムは2012年6月4日の244兆円。
安倍内閣発足直前は252兆円。
安倍内閣は100兆円の価値創造を行った事になる。
過去を遡れば07年が567兆円、06年が548兆円とまだ上。
ITバブルの2000年が446兆円。
89年のバブル絶頂期が590兆円。
越えられなかった壁はまだ立ちはだかる。
問題はGDPが増えていないこと。
株価の上昇のためにはGDPがせめて600兆円くらいにならなければならない。
ここを忘れてアレコレ論じても意味はない気がする。
少し変化の兆しが見えるのは新興市場。
日経JASDAQ平均は6日続伸で4日連続の年初来高値を更新。
東証マザーズ指数は約半年ぶりの高値水準。
「上昇相場の中で投資余力が拡大していることがうかがえる」との声も聞かれる。
静かな上昇中の中国の株価もようやく気がつかれ始めた。
上海総合指数は6日続伸で約7ヵ月ぶりの高値。
この1週間で6%上昇し今年の下落分一気に埋めた。
不良債権などの悪材料に見えないフリは、市場の得意技でもある。

市場関係者のコメントの聞こえ方を分類してみると・・・。
(1)株価上昇時の強気コメント→勇ましく、あるいは荒唐無稽に聞こえる
(2)株価上昇時の弱気コメント→臆病に、あるいは知的に聞こえる
(3)株価下落時の強気コメント→愚かしく聞こえる且つ縋りたいもの
(4)株価下落時の弱気コメント→賢げに聞こえる且つ聞きたくないもの加えれば・・・。
(5)株価膠着時の強気コメント→根拠なく聞こえる
(6)株価膠着時の弱気コメント→投げやりに聞こえる



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