03月4週
今週の相場感
7日(水)
「日銀が国債の保有額を増やすベースを年75兆円にすると、民間金融機関などが持つ長期国債の残高は3倍以上のスピードで減少する」との指摘。国内銀行の保有額は3年でゼロ、倍増なら2年足らずでなくなるという。日曜日経の「けいざい解読」の「日銀が干上がらせる国債市場」の一節である。そして登場しているのは、囁かれる「ウルトラC」。GPIFが国債を日銀に売却し、その代金で株を購入する。これがダブルバズーカ。まさにサヨナラ債券、コンチワ株式の絵図ではある。まさに典型的グレートローテーション。6月発表予定の成長戦略が昨年のように株安につながらないようにする予防線でもあろうか。そのGPIFの方向性。いずれにしても変更は来年からになるのだろうが、改革の発表は今年6月にあるのかどうか。期待満載になるのかどうか。ここが課題。因みに国内株式比率が20%に引上げられるとGPIFと共済を合わせて7.6兆円の買い需要が発生するという試算は大和のレポート。そして高ROEとROE改善期待銘柄群がターゲットの結論。ネガな報道では「米の石化事業断念。出光・三井物産、建設費高騰で」の土曜日経の記事。1000億円を投じてメキシコ湾沿いの地域にシェールガス由来のエチレンを使って基礎化学品を年33万トン生産する計画だったという。理由は「シェールガス関連の開発が活発になり、米国で人件費や資材価格が上昇」。とはいえ、この中止は必ずしも凶ではなく吉と出るのかも知れない。もうひとつは「ワタミの前期、上場来初の最終赤字」の見出し。14年3月期の連結最終損益が49億円の赤字(前期は35億円の黒字)になったと発表。従来予想は12億円の黒字で、1996年の上場以来、初の最終赤字転落となる。居酒屋そのものが悪いわけでもない。背景は労務環境を改善し慢性的な人手不足を解決する目的もあり不採算店を中心に今期は60店を閉店。これに伴う減損損失など特別損失26億円を計上。繰り延べ税金資産も22億円取り崩すという。外食業界全体では、景況感の改善に伴う「プチぜいたく」の需要が追い風。単価が比較的高い商品を扱うファミリーレストランや回転ずしなどは好調という。一方で低価格だが画一的なメニューが並ぶチェーン居酒屋では客離れ。要は環境の悪化ではなく、変化が出来なかったことの結果。売り手の論理で物事を推し量った誤謬でもある筈。 一方でソフトバンクは「最高益、ドコモ超え」。この時点で微分すれば、大義的にはソフトバンクに軍配が上がったということだろうか。 消費者側の論理が少し目立っただけかもしれない。日経平均株価は424円安の14033円と大幅続落。SQ週の荒れる水曜日を忘れていたのではなかろうが4月オプションSQ値は13892円。これが14400円水準では売り方の負け。連休明けのNY下落に乗じた格好での抵抗だったと考えれば筋は通る。ウクライナでも中国でもなく、獅子身中の虫が蠢いたというところだろうか。東証1部の売買代金は2兆2286億円と15日ぶりに2兆円を越えた。ソフトバンク、ファーストリテなどが下落。TOA、エンプラスが上昇。

8日(木)
日経では「3月期決算集計状況」がスタート。前日までで対象企業の18.2%が発表済みになっている。今のところの2014年3月期。売上高は前期比14,7%増、経常利益は同42,9%増、純利益は同94,5%増。今期見通しは売上高4.6%増、経常利益3%増、純利益5%増の見通し。少し物足りなさは残る。経常利益の2ケタの伸びまで行けるかどうかが課題。因みに前日段階で日経平均株価の予想PERは13.86倍、PBRは1.25倍。配当利回り1.6%、株式益回り6.81%。新発10年国債利回りは0.595%。どちらで運用するかは、一目瞭然なのだが・・・。日経では「日経平均株価は2012年11月以来の前年割れ」との指摘。 「政策期待で上昇してきた株価の勢いが衰えていることの象徴」ともされる。永田町依存の兜町。本石町依存の兜町。兜町そのものの自助努力が見えないことは棚上げ。いつまでも他力本願では救われない。一部の市場関係者は「日本株はまだまだ利益確定売りの対象になりやすい」とのコメント。信用評価損率が20%に近づき利益確定どころではなく投げの準備が一部の現実。現場を離れた空理空論でものごとを解釈するのも限界がある。日経平均株価は130円高の14163円と反発。上場幅は220円をまで拡大した局面もあった。物産、商事が上昇、ゼオン、日製鋼が下落。

9日(金)
「昨今の株価軟調は円安が止まったから」と言う指摘がある。一見理路整然としている。しかし本当にそうなのだろうか。 円安は無制限に喜ぶべきなのだろうか。勿論過度の円高からの脱却は必要だろう。しかし、その円高修正が止まったから外国人も日本株を買わないとでも言うのだろうか。 株価が不変であるならば、ドルやユーロを使う外国人投資家は、円安になれば損になる。円高になれば利益が出る。だったら、円安時に株を買い円高時に株を売るのは自然の行動。為替の安値の極みで仕込もうというなら話は別だか、まだまだ円安に向かおうという局面で株を買うのは得策なのだろうか。何でもかんでも為替動向に理由を求める姿勢はうなずけない。SQ値は14104.82円。4月SQ値13892円は越えたが3月メジャーSQ値14429円は越えられず。因みに昨年3月は12072円、4つきは13608円だったが5月は14601円。 アベノミクスが前年割れとされるが、具体的には昨年4月の黒田バズーカ砲割れ。この方が正しいのだろう。日経平均株価は35円高の14199円と小幅続伸。トヨタ、重工、新日住金が上昇。世紀東急、グリーが下落。

(2)欧米動向
GWにかすんだが、米雇用統計は非農業部門雇用者数28,8万人増で着地。市場予想の20万人を上回った。
2月は19.7万人増→22.2万人、3月は19.2万人→20.3万人に上方修正。
失業率は6,3%と前月比0.4%も低下。相変わらず問題にされているのは労働参加率。本当に職探しを諦めているのかどうかは微妙だろう。
日経の指摘は賃金の伸びの低水準。確かに時間当たり賃金は24.31ドルとこの数ヶ月変わっていない。一方残業時間も3.5時間とこの数ヶ月高止まり。雇用者が伸びているのに残業が減らないと見るか、賃金が上がっていないとみるか。視点によって解釈は変わるが、それにしても数字は悪くない。
もっとも東京が休みの週末週初の相場でほぼ織り込んでおりポンカスみたいなものだが・・・。
もしも今日の相場でアレコレ論じられるのなら、大騒ぎと宴の後の空しさが常駐する米雇用統計にもそれなりの効用はあるということになる。

気になったのはスイスの金融大手クレディスイスの動向。脱税ほう助の疑いで米当局の捜査を受けている。その結果、最大16億ドルを支払い和解する方向で米司法省と協議しているという。この米国民の脱税ほう助疑惑。
スイスのUBSが2009年に7億8000万ドルを支払って米当局と和解。UBSは問題となった顧客の情報も提供することで合意した歴史がある。16億ドルといえば約1600億円。大きいか小さいかと言えば大きな金額。しかもUBSの場合は顧客情報まで提供。スイスのプライベートバンキングの絶対的秘密主義は消えたとも言える。
そんな中で、マネーがこういう場所に向かうかどうか。それでもNY株価が最高値水準にあるというのは凄い上昇パワーでもある。

覚えておきたいのはバークレイズの人員削減の記事。
「英銀行大手バークレイズは、2016年までに全従業員の1割強に相当する19000万人を削減すると発表。このうち不振が続く投資銀行部門で7000人を削減。 商品取引などを大幅に縮小。大規模なリストラで経営を立て直す。低金利やリスクの高い取引への規制強化で同社の債券トレーディングや商品取引の収益は急減している。リスク資産に占める投資銀行部門の比率を現在の50%から30%まで下げる方向」。
債券主体とはいえ投資銀行部門が儲かっていないという現実。そしてリスク資産を減らすという危惧。同社は225先物市場の大きなプレイヤーだが、これも縮小ならば吉なのか凶なのか。 おそらく委託だけで生きていくということなのだろう。儲けられない海外プレイヤーがいるという現実。海外投資家を悪戯に怯えたり敬ったりする必要はまったくないのだが・・・。


(3)アジア・新興国動向
ウクライナ問題の影響が懸念されるロシアのGDPや経常収支赤字幅拡大懸念のトルコなど問題は山積している。ただ市場の視点は新興国よりも欧米の金利動向になろうか。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・。

12日(月
景気ウォッチャー調査、国際収支、米財政収支、TPP参加12国交渉官会合
13日(火)
マネーストック、米小売売上高、独ZEW景況感、中国各種経済指標
14日(水)
国内企業物価指数、米卸売物価、インド休場
15日(木)
1〜3月GDP、消費動向調査、米鉱工業生産、フィラデルフィア連銀指数
ドイツ、ユーロ圏1〜3月GDP
16日(金)
米住宅着工件数、ミシガン大学消費者信頼感、インド総選挙
週末:中国青島でAPEC貿易大臣会合


「日経1面の法則」というのがある。
日経1面に記事が出ると好材料も悪材料も市場はその反対に解釈して動くというシロモノ。例えば5日1面のソフトバンク。見出しは「ソフトバンク最高益、純利益5200億円、初のドコモ越え」と華々しかった。
結果は連休明けの大幅下落。好材料が登場すればさらに好材料を求める修正には逆らいようがない。
金曜はトヨタ。「6期ぶり最高益、前期1,8兆円、今期も高水準を維持」。1日の1面もほぼ同じ場所に「トヨタ最高益2,3兆円、前期営業、今期も高水準を確保へ」の見出し。ほとんど似たような格好で新鮮味がない。
市場の指摘は「今期の売上高はほぼ横ばいの25.7兆円、営業利益が前期比0.3%増の2.3兆円になる見通し。2期連続で最高益を更新するものの、市場予想(2.6522兆円)を下回った。増益率も低下(前期は74%増益)した」。かつてソフトバンクは業容や業績の先行き不透明感や借金大魔王の正確からネガ視された。投資事業から実業に足を踏み入れ、借金は相変わらずだが業績は着いてきた。しかし最高益を捻出しても、株は買われない。むしろもっと借金を増やして拡大方向に走ることを好感しそうな雰囲気。
株価は雰囲気が決めるのではなく業績に裏打ちされたものというのが教科書。しかしこの教科書的動きなど滅多にしないもの。あるいはトヨタ。血の滲むような努力をして、積み上げた最高益。ソフトバンクの孫氏は決算会見で「(営業利益で)いずれトヨタを抜き圧倒的な1位になる」。これが独特の法螺なのかどうかは時間の推移が決めること。しかしトヨタが日本一の企業であることは間違いない。豊田社長の決算会見のコメントは「稼ぐ力は強くなっている」。それでも売られるのならば、どこかが間違っている。因みに外資系のコメントは「本来の稼ぐ力からすればもっと利益が出ておかしくない」。なんでも欲しがる市場の欲望は貪欲である。
加えれば場況のコメント。「先導株比率は25.5%と3週間ぶりの高水準。 ソフトバンクに個人の売買が集中した」。どうしてソフトバンクというと個人投資家という図式なかりが登場するのかが不思議な現象。かつては株価推移に理由付けすることが難しかったし、稟議書も通りにくかった。だから間違いなく個人投資家の銘柄ではあった。
しかし、日経平均寄与度も高くなり、むしろ裁定取引の対象ととしての位置がクローズアップ。確かに日本を代表するような銘柄ではない。しかし、だからといっていつまでも個人投資家の銘柄ではないだろう。 因みに東芝だって25年ぶりの最高営業益と頑張っているが一顧だにされないのだろうか。

「3月決算集計状況」は28.4%を消化。
今期売上高は4.1%増、経常利益は1.9%増、純利益は4.2%増。先細りとなってくるのだろうか?

金曜日経の「スクランブル」では「株変調、陰に米金利低下」のコメント。「8日の日経平均株価は130円高となったものの前日の下げ幅(424円)の半分も埋められなかった。相場変調の発端は米金利の低下にある。米国で債券から株式への資金シフト(グレートローテーション)が陰り、長期金利が予想外に下がったことが原因だ」。そして「日経平均は今年に入り、米国の長期金利に歩調を合わせて下げてきた。明るい経済指標が出始めた米国でなぜ金利が上がらないのか、関係者は首をかしげる。 経済の体温計である金利は、景気が良くなれば上がるのが自然だからだ」。この見方は正鵠を射ている。
因みに「米国10年債利回りが2.7%を下回ると円高・株安となる」。今年米国10年債利回りが2.7%以下になったのは3回。

(1)1月29日〜2月10日の9日間。
この間、ドル円相場の高値は100.76円、日経平均先物の安値は13920円。
(2)4月8日〜16日の7日間。
この間、ドル円相場の高値は101.33円、日経平均先物の安値は13850円。
(3)4月23日〜5月6日の10日間(継続中)。
この間、ドル円相場の高値は101.50円、日経平均先物の安値は14160円。ということは米10年債利回りが2.7%を越えてくれば、円高・株安終了の図式。残念ながら木曜の米10年債利回りは2.614%だった。



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