《マーケットストラテジーメモ》10月4週
【推移】
22日(月):
週末のNY株式市場で主要指数はマチマチの動き。NYダウは64ドル高と反発。ただ金利上昇や貿易摩擦で成長が鈍化するとの懸念は継続。S&P500は小幅安で200日移動平均線を下回った。S&P500採用企業のうちアナリスト予想を上回る売上高を発表したのは61.9%。過去4四半期の平均である73%を下回っている。
NASDQは3日続落。エヌビディア、インテルなど半導体関連やバイオジェンといったバイオ関連が下落。ネットフリックスやアマゾンも軟調。週間ベースではNYダウは0.4%、S&P500は0.02%上昇。NASDAQは0.6%下落。
日経平均株価は82円高の22614円と3日ぶりの反発。前場は一時260円超の下落場面もあったが後場は中国上海総合株価指数が一時4%超の上昇となり買い物優勢の展開に転換した。安川電、スクリンが上昇。ソフトバンク、KYBが下落。
23日(火):
週明けのNYダウは反落。S&P500も下落。中国株高を受けて買い先行だったが欧州株安を受けて昼にかけて下落幅を拡大。金融や石油セクターが足を引っ張った。イタリアの財政懸念が根強く欧州の銀行株が下落したことから金融セクターが売り物優勢の展開。
サウジアラビアの原油増産方向も警戒されNYダウは一時200ドル以上の下落。
一方ハイテクセクターは堅調。インテル、アップル、マイクロソフトなどが上昇しNASDAQ総合指数は4日ぶりの反発。東京は主人公が見えない中での売り一色。「朝方は大口のTOPIX型ファンドの解約っぽい売り物。
しかしその売りを消化した後もダラダラと下げ続けた前場。後場は先物売りから下落は加速。いったい誰が売っているのかとの疑心暗鬼だった」という声が聞こえる。
日経平均先物は22000円を割り込みTOPIXは年初来安値を更新。値下がり2015銘柄で値下がり銘柄数が2000を超える全面安の展開。
日経平均株価は604円安の22010円。下落率2.67%と大幅に反落。決算前の買い見送りの中、終始売り物先行で下落幅を拡大した。日経VIは26.15に上昇。警戒感を高めた。カシオ、キリンが上昇。テルモ、KDDIが下落。
24日(水):
NY株式市場で主要3指数は下落。NYダウは一時500ドル以上下落した場面があったが、引けにかけて「安値拾い」の動きから下落幅を縮小。キャタピラーや3Mが大幅安となった。エネルギーセクターも軟調展開。「マイクロソフト、インテル、アルファベットの決算に期待」という見方がある。
S&P500は5日続落。9月20日の終値ベースでの過去最高値を6.5%下回った。「戻ったといえるほどの幅ではない。下ヒゲが長い陰線。底打ち感やアク抜け感はまだない」との見方だ。
日経平均株価は80円高の22091円と反発。前場は一時マイナスに転じた場面もあったが上海株式相場の反発を好感。上昇幅は200円に迫る場面もあった。10月2日から前日までの3週間で2200円あまり下落したことからの自立反発だった印象。ファストリ、ユニファミマ、KDDIが上昇。信越化、SUBARUが下落。
25日(木):
NY株式市場は急落。NYダウは600ドル超の下落。NASDAQは300ポイント超の大幅下落。4.4%安は1日の下落率としては2011年8月18日以来の大きさだ。8月29日の直近高値からは12.4%の下落率となり「調整局面入り」。S&P500は6日続落。NYダウとS&P500は年初来からの騰落率がマイナスに転じた。「世界的なリスクオフトレード」という見方になってきた。
日経平均株価は822円安の21268円と大幅に反落。3月29日以来ほぼ7カ月ぶりの安値水準。下落幅は11日以来の大きさ。NYダウが2.4%下げたのに対して日経平均は3.7%の急落。マドを空けて始まり、寄りは414円安でほぼ高値、大引けが822円安でほぼ安値。弱々しい展開が終日続いた。値下がり2072銘柄。18日、23日と1日置きの値下がり2000銘柄超。圧倒的な売り優勢だった。
東証1部上場銘柄の時価総額は596兆円。600兆円を割り込むのは昨年9月12日以来およそ1年1カ月ぶり。値上がり34銘柄、値下がり2072銘柄。シーズ、パナが上昇。島精機、冶金工が下落。
26日(金):
NY株式市場は反発。フランス・ドイツの株価は7日ぶりに反発。好決算のマイクロソフトが買われ、ハイテクセクターの上昇に貢献。NASDAQは3月以来の大幅高となった。
売上高と利益が市場予想を上回ったマイクロソフトは5.8%高。前日に年初来マイナスとなったNYダウとS&P500は年初来プラスに転じた。
ただ前日の下落幅を取り戻すまでには至らず。「市場が上昇した日の出来高が下落した日の出来高を下回っており最近の下落局面が終わっていない可能性もある。
3市場の合算出来高は約92億株。急落した前日は約96億株。10月11日の急落時は114.4億株だった」という難癖も聞こえる。
日経平均は84円安の21184円と小幅続落。前日までの大幅安とNY株式の大幅反発を受けて買い物先行の展開。その後前場はマイナスに転換。米国市場の取引終了後に発表されたアマゾンとアルファベットの第3四半期業績が市場予想を下回ったことも投資家心理に負担となったとの解釈。後場は一時3月29日以来の21000円割れもあった。
ただ追証売りなどの一巡感からプラスに転じる場面もありめまぐるしい動きだった。
東証1部の売買代金3兆1857億円。三菱UFJが上昇。コマツ、キャノンが下落。
(2) 欧米動向
1987年10月19日ブラックマンデーの時の下げ幅は508ドル。ただし下げ率は22.6%。
翌日の日経平均の下げ幅は3836円(下落率14.9%)、翌日の戻りは2037円(上昇率9%)でした。
1929年10月24日いわゆる「暗黒の木曜日」の際の下げ幅は12.8%。
今年の10月NYダウが831ドル下げたのが10日。
ブラックマンデーの19日は64ドル高だったが、暗黒の木曜記念日は600ドル安。
なんだ歴史を記憶していただけ?みたいな印象だ。
市場では「ドル不足」という言葉が登場してきた。
背景は運用難に悩む機関投資家のドル建て資産への投資増。
円売りドル買いが進んでいるという。
日本の生損保などばかりでなく新興国も同様。
皆が自国通貨を信じなくなってドル一辺倒の展開。
兌換紙幣でなくなったドルにとっては受難の季節になってきたのかも知れない。
そうすると・・・。
市場は遠い先には通貨ショックの歴史が再現される可能性を見ているのだろうか。
一方で見え隠れする「リスク・パリティ」という言葉。
金額ベースでなく、リスク量ベースで均等に分散投資するという流れ。
最近では株と商品が1、短期金利が3、債券が4割超という。
株の比率が1割程度だから「リスク・パリティ」のウリへの警戒感は薄いという。
しかし高比率の債券が問題でもある。
金利上昇で損失確定の債券売り→金利のさらなる上昇で債券売りが加速という構図。
加えて金利上昇が株の割高感となり、株のボラも上がる。
「株と債券。金利上昇とのリスク・パリティの共振」という表現。
市場はさまざまな考えが渦巻いて形成されている。
しかし、下げ始めてから3週間も経って登場させることはなかろう。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち2指数が上昇。
上位1位中国週間騰落率1.90%、2位ブラジル1.78%、3位インドネシア▲0.90%、
4位フィリピン▲1.22%、15位米国▲2.97%。
下位25位トルコ▲6.13%、24位ベトナム▲6.00%、23位韓国▲5.99%、
22位日本▲5.98%、21位ポーランド▲5.20%。
韓国とシンガポール株が17月1月以来約1年10カ月ぶり、台湾が約1年9カ月ぶりの水準まで下落。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
29日(月):日印首脳会談、米個人所得、変化日
30日(火):日銀金融政策決定会合(〜31日)、失業率、米CB消費者信頼感、株高の日
31日(水):日銀展望レポート、黒田日銀総裁会見、鉱工業生産、消費動向調査、米ADP雇用レポート、シカゴ購買部協会景気指数、中国PMI
1日(木):新車販売、米ISM製造業景況感、英金融政策発表、株安の日
2日(金):マネタリーベース、GPIFの7〜9月運用報告、米貿易収支、雇用統計、製造業受注
11月4日上げの特異日は土曜、12月1日上げの特異日は土曜、
12月22日上げの特異日は土曜。
となると上げの特異日は12月26日までない。
「株高の日」は11月30日(水)、11月14日(水)、21日(水)、22日(木)、28日(水)。
11月は「株は高いぞ水曜日」という並びだ。
11月26日(火)は「11月3連休明けは株高」の日だが・・・。
因みに・・・。
11月7日(水)は下げの特異日。
火曜日経朝刊の「日本株の割安感、再び注目」の見出しはアンチテーゼだった印象。
「市場心理が好転したのが背景だ」なんてことは一夜にして消えた。
PER13.04倍、一時13倍台割れは2012年11月からのアベノミクス相場の下限。
「機関投資家の押し目買いが入りやすい」という解釈も消えた。
200日移動平均も下値の目安とされたがこれも一時的には消えた。
大体、こういう記事が登場すると相場は反転する。
あるいは、秘め事チックでないと、こういう指標は逆に使われやすい。
そこをどう踏まえるかがプロの記者とも言えるのかも知れない。
正直に対応するには相場というのは複雑怪奇すぎる存在ということを忘れてはいけない。
「持たないリスク」も同様だ。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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