《マーケットストラテジーメモ》10月1週
【推移】
1日(月):
週末のNY株式市場は小動き。NYダウとNASDAQは小幅高。S&Pはかすかに反落だった。イタリア政府が示した2019年予算で財政赤字が従来目標よりも大幅に拡大見通し。「これが欧州株の売りにつながり投資家が投資先として米国に目を向ける展開となった」という声も聞こえる。
日経平均株価は125円高の24245円と続伸。1月23日以来の終値ベースの年初来高値を更新となった。また、1991年11月13日以来約27年ぶりの高値水準を回復した。背景は円安・ドル高トレンド。トランプ政権が北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しでカナダと合意したことも追い風となった。
日銀が発表した全国企業短期経済観測調査(短観)は大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス19と市場予想を下回ったが、相場への悪影響は限られた。伊藤忠、ファストリテが上昇。JR東、SUBARUが下落。
2日(火):
週明けのNYダウは192ドル高の26651ドルと3日続伸。NAFTAの見直し交渉で米国とカナダが合意したことを好感。「合意は困難と見られていたことから大きなポジティブサプライズとなった」との見方だ。建設支出が予想を下回る伸びとなりISM製造業景況感59.8に低下したが影響薄。VIX(恐怖)指数は12.00%に低下。
日経平均株価は24円高の24270円と小幅に3日続伸。NAFTA再交渉の妥結を受けたNYダウの続伸とドル円の円安傾向を好感。ただ利益確定売りも散見されシーソーゲームのようにプラスマイナスを往来する相場だった。
TOPIXも3日続伸。出光、小野薬が上昇。ソフトバンク、東エレが下落。「日経平均は8連騰のあと1日休み3連騰。サイコロジカルラインは11勝1敗(91.7%)。相場もお休みしたそうな感覚」という見方もある
3日(水):
NY株式市場でNYダウは終値ベースで9月21日以来の史上最高値更新。4日続伸となった。高配当の公益セクターや消費財セクターが上昇を牽引。NASDAQはセキュリティ上の欠陥が見つかったフェイスブックの下落を受けて大幅続落。パウエル議長の講演内容がタカ派的だったことを受け短期債利回りは上昇。
日経平均株価は159円安の24110円と4日ぶりに反落。下落幅は240円に達した場面もあった。高値警戒感から海外ヘッジファンドなどの利益確定売りが背景との見方だ。イタリア財政不安の後退観測から円の対ドル相場が伸び悩んだのをきっかけに、午前の日経平均は急速に下げ渋る場面もあったが不可解な材料だった。TOPIXも4日ぶりに反落。ファーストリテ、資生堂が上昇。KDDI、ソフトバクが下落。
4日(木):
NY株式市場でNYダウは2日連続で史上最高値を更新。ADP全米雇用報レポートで民間雇用者数が23万人増。市場予想18.5万人増を上回り今年2月以来の大幅な伸びとなった。9月のISM非製造業総合指数も61.6と約21年ぶりの高水準を記録。10年債利回りは3.18%台と2011年6月以来の高水準。「債券から株式」というグレートローテーションの構図だ。
日経平均は135円安の23975円と続落。寄り天となり3日連続日足陰線。TOPIXも下落したが1800ポイント台はキープ。米長期金利の急上昇を嫌気した格好だ。「高値警戒感が根強く、内需・ディフェンシブ系銘柄が利益確定売りに押されているとの声が聞こえる。
円安の一服や香港ハンセン指数の下落などが利益確定売りを誘っているとの見方だ。「前場のTOPIXがプラス圏で引け、日銀のETF買い期待が膨らまなかったことも影響している」という声も聞こえる。 ソフトバンク、トヨタが上昇。三菱UFJ、JXTGが上昇。
5日(金):
NY株式市場は大幅安。NYダウは6日ぶりに反落。S&PとNASDAWQは6月25日以来の大幅な下落となった。背景は「堅調な経済指標を受けてインフレ加速への懸念が拡大。国債利回りが急伸し株売りにつながった」との解釈だ。
金融セクターは上昇したがアップルやアマゾンなど「FANG」銘柄は大幅安。両社のコンピューターシステムに中国の情報機関が悪意あるチップを組み込んだという報道も影響した格好だ。堅調な経済指標を求めるのが市場だが、別のファクターが水を差したという格好。
週間の新規失業保険申請件数が減少し49年ぶりの低水準。
日経平均株価は191円安の23783円と続落。NY株の下落と為替の円高トレンドがマイナス材料。3連休前の手控えモードもあったという。電通、小田急が上昇。ソフトバンク、ファナックが下落。
(2) 欧米動向
「ラッセル2000が7月末以来、2カ月ぶりの安値圏にあることが天井打ちのシグナル。
そんな重箱の隅を突くような弱気指標探しが始まっているようである」との指摘。
「小型株指数のラッセル2000は上げても下げても坑道のカナリヤのようにみられる。
チャートを見る限り、決定的に崩れているようには思えない。
そもそも小型株だけで全体を読むのも無理があろう。
やはりFANGはどうかの方が重要ではないか」と。
電子端末でも同様だ。
「S&P500が9月に0.4%上昇したのにS&P小型株600指数は3.3%下落。
値動きの開きは約4年ぶりの大きさ。
相場全体が最高値を更新するなかで小型株指数は下げるという珍しい現象だ。
過去7回起きたうちの2回(00年〜02年と07年〜09年)はその後に株価が急落した」。
売り手も材料探しに躍起なようだ。
一方で「リパトリ」(資金の米国本国還流)という言葉も再登場してきた。
背景は法人減税だ。
直接投資に関わる配当等の受取額は1〜3月期の2949億ドル。
4〜6月期に1965億ドル。
合計で4644億ドルとなった。昨今はこの時期は700億ドル程度だったから増加。
4000億ドルほど多かったという計算だ。
「向こう半年リパトリはドル高材料」という声も聞こえる。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち1指数が上昇。
上位1位ブラジル週間騰落率3.75%、2位米国▲0.04%、3位オーストラリア▲0.39%、
4位スイス▲0.51%、9位日本▲1.39%。
下位24位インド▲5.11% 、23位トルコ▲5.08%、22位台湾▲4.44%、
21位香港▲4.38%、20位インドネシア▲4.09%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
5日(金):家計調査、景気動向指数、米雇用統計、貿易収支、消費者信用残高
週末:ブラジル選挙
8日(月):体育の日で休場、IMF・世銀年次総会(インドネシア)、カナダ休場
9日(火):国際収支、景気ウォッチャー調査、韓国休場
10日(水):機械受注、米生産者物価、北朝鮮労働党創建記念日、台湾休場
11日(木):企業物価指数、都心オフィス空室率、豊洲市場開場、米消費者物価、財政収支、G20財務相・中央銀行総裁会議(インドネシア)
12日(金):マネーストック、第3次産業活動指数、米輸出入物価、ミシガン大学消費者信頼感、中国貿易収支
火曜日経朝刊の見出しは「日経平均27年ぶり高値」。
そして「日本株、マネーの受け皿」。
そんなに言っている割に昨日の東証アローズの寄り付きにTVクルーはゼロ。
株価が上昇しても、歴史的水準でも全く興味がないのがマスコミだ。
まさに面目躍如だった。
興味深いのは市場関係者の見通し。
「一段の円安に支えられた株高を見込む声が多いが原油高には注意が必要だ」。
一見マトモな意見だが「どう注意が必要なのだろう」。
注意しましょう、警戒しましょうで損を避けられるなら株式投資ほど楽なものはない。
「買い戻しが進むにつれ日本株の持たざるリスクが意識され一段の買いを招く」という声。
しかし「年末までの日経平均の見通しは23000円〜25000円」。
あと500円〜800円程度しか上がらないのが一段の買いの結果なのだろうか。
25000円でも25500円でも志の低さは感じる数字だ。
そもそも安値の22000円とか高値の25500円の根拠というのは何なのだろう。
多分に気分であるような気がする。
しかも「持たざるリスク」を感じるのは誰?
個人投資家にとって持つリスクはあっても持たざるリスクは少ない。
仮想の利益を万が一取りそこねてもそれをリスクと感じるものだろうか。
それはリスクではなく参加機会を失った失敗だ。
機関投資家であれば他人のマネーの運用だから失敗責任を問われる可能性がある。
だから「持たざるリスク」とは機関投資家中心主義の相場観でしかない。
この視点しかないから相場がより無機質になっていくような気がする。
1989年以降の相場に必要だったのは「熱さ」でもある。
日経平均の史上最高値は38915円(89年12月)。
その後の安値は7054円(09年10月)。
下落幅の半値戻しは22985円。
半値戻しは全値戻しという格言を思い出してみたいところだ。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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