《マーケットストラテジーメモ》08月3週
【推移】
13日(月):
週末のNY株式で主要3指数は大幅続落。「トルコ経済を巡る懸念で銀行株が下げ、リスク資産回避につながった。ハイテク株の下落も指数下落に拍車をかけた」との解釈だ。週間ベースでは、NYダウが0.6%、S&P500が0.3%それぞれ下落。
NASDAQは0.3%上昇。7月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は総合指数が前月比0.2%上昇。6月(0.1%上昇)から加速した。「基調的な物価は引き続き底堅く、圧力が徐々に高まっている」との見方だ。
トランプ大統領はトルコからの輸入関税について、アルミニウムを20%、鉄鋼を50%と2倍に引き上げると表明。トルコを震源とする不安が他の新興国市場にも波及しリスク選好が後退。
日経平均株価は440円安の21857円と4日続落。約1ヶ月ぶりの22000円割れ。日中値幅は223円。TOPIXは7月6日以来の1700ポイント割れ。東証1部の値上がり銘柄数は191と全体の9%。値下がりは1884銘柄で全体の89%。
日経平均採用銘柄で上昇したのはわずか9銘柄だった。リクルート、日本郵政が上昇。任天堂、トヨタが下落。
14日(火):
週明けのNY株式市場でNYダウは4日続落。7月下旬以来3週間ぶりの安値水準となった。背景は世界株式の下落要因となったトルコ情勢への懸念。素材やエネルギー、金融など景気敏感株を中心に売りが優勢の展開。
ただ自律反発狙いや値ごろ感からの買いもありNYダウは一時反発した場面もあった。「トルコ情勢が比較的早い時期に落ち着けば米景気や企業業績への悪影響は限られる」という見方もある。
VIX(恐怖)指数は14.76%と上昇。SKEW指数は159.03と昨年3月17日以来の水準に上昇。「国内年金の現物買い」という解説も聞かれたが東証1部の売買代金はようやく2兆円。少し筋妻が合わない。空売り比率は48.%と3月23日のバッケンレコード50.3%に接近。
日経平均採用銘柄のPERは12.87倍(EPSは1698.32円)と13倍割れ。PERの13倍割れと200日線を下回ることが今年の相場反発の条件。加えればボリンジャのマイナス2σ水準の21990円を割れ込んだことも同様。
日経平均株価は498円高の22356円と高値引け。5日ぶりの反発となった。上昇幅は今年3番目。トルコ懸念が抗体し買い戻し中心の展開。TOPIXも5日ぶりの反発。スズキ、村田が上昇。第一生命、りそなが下落。
15日(水):
NY株式市場で主要指数は反発。「企業決算の好調を背景とした市場心理は好転。トルコ問題の波及への懸念が和らいだ」との解釈だ。S&P500種は約3週間ぶりの大幅な上昇。S&P500の主要11セクターはいずれもプラス。
第2四半期決算を発表したS&P500構成企業458社のうち79%が市場予想を上回っての着地だ。
今年の曜日ごとの騰落勝敗。月曜14勝14敗。火曜21勝11敗。水曜10勝21敗。木曜17勝14敗。金曜17勝14敗。水曜だけが負け越しだ。
日経平均株価は151円安の22204円と反落。中国景気の先行きへの警戒の拡大を背景に売り物優勢の展開。
トルコが米国製品の一部に報復関税を課すと伝わり後場は下落幅を拡大。指数先物主導での下落幅は一時200円を超える場面があった。
日経平均は前日に500円近く急反発していたため利益確定売りが出やすかった。リクルートが上昇。ネクソン、任天堂が下落。
16日(木):
NY株式市場は下落。中国のインターネットサービス大手テンセント発表した四半期決算が約13年ぶりの減益。ハイテクセクターを圧迫し中国がNY株を邪魔した構図。トルコのエルドアン大統領が一部の米国製品に対する関税を2倍に引き上げたことも悪材料。
S&P500は6月以来の大幅な下落率となった。
「新興国株式市場の指標であるMSCI新興国株指数の1月からの下落率は20%。弱気相場入りだ」という声もある。気になるのは売買高の急増。
3市場合計の売買高は78.6億株と直近20日間平均の65.3億株を上回った。救いはダウ輸送株指数の落ち着きだろうか。
日経平均株価は12円安の22192円と小幅に続落。「新興国の景気減速懸念を背景に銅など資源価格が大幅に下落。非鉄など景気敏感株に売りが優勢」との解釈だ。一時332円安となり22000円を割れた場面もあったが「中国の商務次官が8月末に貿易交渉のために訪米する」との報道から持ちなおしたことは上出来と言えるだろう。トルコ懸念同様に思惑交錯の日々。
NT倍率は13.15倍まで上昇。JT、三菱UFJが上昇。古河電、資生堂が下落。
17日(金):
NY株式市場で主要3指数は急反発。NYダウの上昇率は約4カ月ぶりの大きさとなった。中国が通商協議のため米国に代表団を派遣すると発表。貿易摩擦を巡る懸念が後退したのは前日の東京市場と一緒。関税の影響を受けやすいボーイングは4.3%高、キャタピラーは3.2%高となった。
小売のウォルマートが発表した5〜7月決算は利益と売上高が市場予想を上回った。米既存店売上高は過去10年で最大の伸び。株価は9.3%の大幅高。シマンテックは6日ぶりに反発。第2四半期の発表を済ませたS&P500採用銘柄463社のうち79.3%が市場予想を上回っての着地。足元の業績を素直に評価できる素地となった印象。
日経平均株価は78円高の22270円と3日ぶりの反発。 大引けで20円ほど上昇幅を縮小した。「週末を控えて上値を買う投資家が不在の状況。ポジション調整売りも出ている」との声が出ている。
日中値幅は約96円。後場は43円。週足は陽線。TOPIXも反発。 任天堂、トヨタ、三菱UFJが上昇。日立、東エレが下落。
(2) 欧米動向
日経平均の予想PERは13倍近辺まで低下。
米国企業の予想PERは17.79倍。
ドイツでも14.07倍だ。
ほぼ出揃った日本企業の4〜6月期の純利益は前年同期比3割増。
好調な業績に対し株価が割安になっている」。
大幅安の翌日の昨日は「冴えぬ米指標、円高懸念」の警鐘記事だったからわかりやすい構想だ。
ちなみに全体の99.9%が通過した4〜6月期決算集計状況。
4〜6月期売上高7.9%増、経常利益16.5%増、純利益27.9%増。
通期売上高3.1%増、経常利益2.1%増、純利益▲0.3%減。
(3)アジア・新興国動向
トルコの名目GDPは約100兆円。
世界では17位。
オランダ(90兆円)やサウジ(70兆円)よりは大きい。
インドネシア(110兆円)やメキシコ(120兆円)よりは小さい。
ブラジル(220兆円)の半分。
日本の5分の1の規模だ。
トランプ大統領に嫌われた、欧州の銀行が貸しこんでいる。
など様々な憶測は漂う。
しかし抑えておくべきは国家の規模ということは変わりない。
改めて見てみればトルコリラはこの1年で約半値。
5年で3分の1。
この10年で5分の1。
日経平均の真逆だ。
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち4指数が上昇。
上位1位米国週間騰落率1.41%、2位 オーストラリア0.93%、3位 インド0.21%
4位 ベトナム0.04%、5位 日本▲0.12%。
下位25位 トルコ▲6.54%、24位 インドネシア▲4.83%、23位 中国▲4.52%、22位 香港▲4.07%、21位 イタリア▲3.20%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
20日(月):米政府2000億ドル分の報復関税公聴会
21日(火):トルコ休場(〜24日)
22日(水):全産業活動指数、米中古住宅販売件数
23日(木):米新築住宅販売、米中関税引き上げ実施(160億ドル分)、ジャクソンホール(〜25日)、テーマは「変化する市場構造と金融政策への影響」
24日(金):消費者物価指数、企業向けサービス価格指数、米耐久財受注
MSCIの銘柄定期見直し。
新規採用は昭和電工(4004),除外はスルガ銀行(8358)。
組入時価総額増加銘柄はパーク24(4666)、日清食品(2897)、
名鉄(9048)、ネクソン(3659)。
8月31日の大引けで反映される。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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