《マーケットストラテジーメモ》05月03週
【推移】
14日(月):
週末のNY株式は堅調展開。トランプ大統領が薬価に関する演説で高額な薬価を非難。ただ価格引き下げへの積極的な対策は示さなかったことから医薬品セクターが上昇。通信のベライゾン・コミュニケーションが大幅高。JPモルガンが投資判断を「ニュートラル」から「オーバーウェート」に引き上げたことが背景。
日経平均は週末金曜に上昇幅を広げ心理的節目の22500円を大きく上回った。5日線や26週線なども大きく上回った。「25日線が75日線を上回った。これで75日線が上向きになれば完成。それも時間の問題だろう」という声も聞こえる。日経平均株価は107円高の22865円と続伸。TOPIXは2月5日以来の1800ポイント台を回復した。3指数揃って3日続伸。
日経平均は後場上昇幅拡大。2万2800円台後半まで強含んだ。朝方軟調だった自動車セクターが下落幅を縮小。東証1部の売買代金は2兆5931億円。資生堂、地所、イーレックス、東電、トヨタ、ソフトバンクが上昇。任天堂、マネパ、ファーストリテが下落。
15日(火):
週明けのNYダウは8日続伸。8日続伸は昨年9月8日〜20日の9日続伸以来の連続上昇記録で約2ヵ月ぶりの高値水準を回復した。トランプ米大統領のツイートが「対中国経済制裁を緩和する方針を示唆した」と解釈され米中の通商摩擦が和らぐとの期待が強まった。主な株価指数はすべて昨年末比で上昇に転じた。
MSCI標準指数の入れ替えで新規追加はサイバー(4751)、小林薬(4967)、SGHD(9143)、東セン(9439)。除外は八十二銀(8359)、九州FG(7180)、ミクシィ(2121)。
4日ぶりの反落で今年の火曜は12勝7敗。高値が9時1分で安値が14時53分。終日冴えない動きだったが救いは47円安と大きく崩れなかったことだろう。新高値は123(前日146)と3日連続3ケタをキープ。新安値は42(前日62)と減少した。
日経平均株価47円安の22818円と4日ぶりの反落。方向感に乏しく日中値幅は1066円と4月16日以来の狭さだった。東証一部の売買代金は2兆7419億円とやや増加。東芝、ファーストリテ、三井住友FGが上昇。武田、ファナックが下落。
16日(水):
NYの主要指数は揃って反落。NYダウは9日ぶり、S&P500は6日ぶりの反落となった。10年国債利回りは前日に3%台に乗せていたが改めて7年ぶりの水準を警戒した格好。
FRBが年内あと3回の利上げを実施する確率は50%を超えてきた。全体の98.6%が通過した3月期決算。今期売上高は8.0%増、経常利益は17.0%増、純利益は34.7%増。今期売上高は2.7%増、経常利益は1.0%増、純利益は2.1%減。2.1%くらいならアッという間に取り返せそうだ。
日経平均株価は100円安の22717円と続落。1〜3月期GDPが市場予想を上回る減少幅となったことが響いた格好。後場寄りに一時下落幅を縮小した場面があったが大引けにかけて下落幅は拡大。「1ドル110円台前半まで円安・ドル高が進んだにもかかわらず株式相場が下げ渋らず、短期視点で取引する海外投資家の利益確定売りを促した」との解釈だ。
東証1部の売買代金2兆6028億円。日新鋼、エーザイ、リクルートが上昇。鹿島、住友鉱が下落。
17日(木):
NY株式市場は小売とハイテクセクター中心に反発。小型株で構成するラッセル2000は過去最高値を更新した。百貨店のメーシーズは10.8%上昇。第1四半期決算で既存店売上高がアナリスト予想を上回ったことと通期利益見通しの上方修正が好感された。
半導体大手マイクロン・テクノロジーは「アウトパフォーム」の投資判断が好感され4.6%高。
一方で10年債利回りは一時2011年7月以来の高水準となる3.10%まで上昇(価格は低下)。株式→債券への資金の流れの分岐点は3.6%とされている。6月のFOMC(12日〜13日)までは、金利動向には神経質となりやすい時間帯だ。
5月11日現在の裁定買い残は3100億円増の2兆4825億円。5週連続増加だ。裁定売り残は224億円増の6619億円。6週ぶりの増加だ。日経平均のEPSは1641円まで低下しPERは13.84倍。利益の成長低下でのPER上昇では何の意味もない。
日経平均株価は121円高の22838円と3日ぶりの反発。もっとも日中値幅は87円と狭いレンジ方向感には欠けた。三菱ケミカル、旭化成、エーザイが上昇。イオン。ユニチャームが下落。
18日(金):
NY株式市場は小幅反落で方向感のない展開。バレル80ドル台を付けた北海ブレント高や米中通商問題への警戒感が台頭した格好。ただ原油先物は一時約3年半ぶり高値を付けエネルギーセクターは1.3%上昇。主要セクターの中で最大の上昇率となった。原油高やドル高の影響を受ける大型株を小型株がアウトパフォームする展開は継続。
ラッセル2000は2日連続で終値ベースの最高値となった。
日経平均株価は91円高の22930円と続伸し2月2日以来約3カ月半ぶりの高値を回復した。
日経平均は週間では171円上昇し8週連続高。昨年9月中旬から11月上旬にかけての9週連続以来の長さとなった。111円台への円安トレンドを好感した買い物と利益確定売りとの交錯。もっとも一進一退の動きについては「急ピッチに上がらなければ問題はなさそう」という声も聞こえる。週末要因もあり商いは低調。
東証1部の売買代金は2兆2800億円と約4週ぶりの低水準だった。東証1部の値上がり銘柄数は1161、値下がりは824銘柄。SOMPO、SMC、エーザイが上昇。任天堂、武田、鹿島 が下落。
(2) 欧米動向
バンクオブアメリカ・メリルリンチの5月の機関投資家調査(4〜10日実施)結果。
投資家の76%が株式相場はまだピークを付けていないと回答。
このうち大半は「2019年かそれ以降」まで株高が続くと予想。
すでに天井を打ったとの回答は19%。
株式から債券へ資金を移す目安となる長期金利の水準は「3.6%」との回答が最も多かった。
一方で「6月の現金比率が4.6%以下に下がると、リスク資産に売りシグナルがともる」ともされた。
最も取引が集中している金融商品は「FAANG」などハイテク株の買い持ち。
投資家は総じて景気敏感株を買い持ちし、債券や高利回り株を売り持ちした。
リスク選好を前提とした持ち高が積み上がっていることも先行きの警戒シグナルになりやすいという。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち7指数が上昇。
上位1位フランス週間騰落率1.31%、2位中国0.95%、3位日本0.76%、
4位英国0.70%、5位ドイツ0.59%。
下位25位ポーランド▲4.25%、24位イタリア▲2.94%、23位インドネシア▲2.91%、
22位ブラジル▲2.51%、12位米国▲0.47%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
21日(月):貿易統計、米シカゴ連銀全米活動指数
22日(火):米韓首脳会談、香港・韓国休場
23日(水):全産業活動指数、米新築住宅販売
24日(木):米中古住宅販売、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(〜26日)
25日(金):米耐久財受注、独IFO景況感、EUが個人データ保護の新規制施行
水曜日経朝刊マーケット面の見出し。
「中小型株投信申し込み停止相次ぐ、人気過熱、新興市場に影響」。
良いパフォーマンスと中小型投信人気を背景に、マネーが集まりすぎているという理由。
痛し痒しといったところでもある。
池の中のクジラほどではない。
しかし「資金流入に投信の運用規模拡大が追いつかない現状」だ。
もっとも・・・。
投信の申込み停止が新興株の上値の重さの背景という解釈はやや我田引水チックだ。
ファンドの規模が大きくなると運良効率が低下しやすいとも言われる。
加えてリサーチが追いつかないという面もあろう。
「中小型株投信の人気は国内に成長力の高い大型株が少ないことの裏返し」。
これは正論だ。
気になる一言は「中小型投信の販売停止はITバブルの直前にも起きた」。
販売停止は特定市場への資金集中のサインと言われれば確かにそうだろうが・・・。
警戒感は免罪符でもある。
(兜町カタリスト 櫻井英明)