英明コラム 1月第2週 マーケットストラテジーメモ
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《マーケットストラテジーメモ》 1月 3週

【推移】
 
6日(月):
年明け初日のNY株式市場で主要株価指数は揃って市場最高値を更新。週末3日のNY株式市場は反落。イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官らを乗せた車列を空爆。「米イランの対立激化懸念から安全資産への買いが強まった」との解釈だ。ただトランプ大統領にしてみれば株価の史上最高値を背景に視点を中国から移すタイミングとも考えられよう。ISM製造業景気指数が09年6月以来10年半ぶりの低水準をつけたことも投資感心理を悪化させた。
週間ではNYダウが0.04%安、S&P500が0.17%安。一方NASDAQは0.16%上昇。
 
大発会の日経平均株価は451円安の23204円と大幅続落。下落幅は昨年8月2日(453円安)以来、約5カ月ぶりの大きさ。視点は米中から米イランに移行。米朝関係の悪化まで懸念され売り一色の展開。米中雪解けモードでうなだれていた商品先物系にとっては干天の慈雨のような格好のネガティブ材料となった。
NY株式は市場最高値を更新し「恐怖と欲望」指数が97まで上昇した直後のイラン空爆。「米国やイランなどが直接的な武力衝突に至る可能性は低い」という声も聞こえる。
昨年の大発会(452円安)を再現したかっただけなのかもしれない。東証1部の売買代金は2兆2246億円。国際帝石、キーエンスが上昇。ファーストリテ、SBGが下落。
 
24日(火):
週明けのNY株式市場で主要3指数は反発に転じて引けた。米国とイランの対立激化を警戒して売り先行。下落幅は一時200ドルを超える場面があった。ただ原油先物相場が一時下げに転じたことかた投資家のリスク回避姿勢が後退。主力ハイテク株を中心とした買いで下げ渋っての上昇。「年初で新規の投資資金が流入しやすいことも相場を押し上げた」という見方もある。日経平均株価は370円高の23575円と4日ぶりの大幅反発。地政学的リスクと警戒感が後退。先物中心に買い物優勢の展開となった。東証一部の売買代金は2兆1251億円。ソニー、オリンパスが上昇。東海カ、川船が下落。23500円台を回復して実体の長い陽線は4日ぶり。9時半過ぎからの先物の上昇の加速は見事だった。まったく意思の感じられない機械的な動きという印象。大発会の下落分の8割を取り戻した格好だ。
 
25日(水):
火曜のNY株式市場で主要株価3指数がいずれも反落。「米国とイランの対立への警戒ムード再燃」との解釈もあるが原油価格は下落。エクソンモービルやシェブロンなどエネルギー株も下落した。一方このところ下落していた半導体セクターは上昇。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)指数は1.8%反発した。「中東問題もさることながら市場は来週から始まる決算発表をにらみ始めた」という声も聞こえる。S&P500採用銘柄の第4四半期業績は0.6%減益の見通しだ。恐怖と欲望指数は93→89に低下。
 
日経平均株価は370円安の23204円と大幅に反落。前日の上昇幅の370円高をほぼ消した格好。一時は600円以上下落。心理節目の2万3000円を下回った場面もあった。寄り付き前に「イランがイラクの米軍基地を攻撃した」と報道されたことで中東地域の緊張が高まるとの警戒感が拡大。一時107円台となった円高・ドル安も重荷となった。東証一部の売買代金は2兆5644億円。ソニー、国際帝石が上昇。ファーストリテ、SBGが下落。
 
26日(木):
NY株式市場は反発。結局イランの米国軍事施設攻撃の影響はアジアだけだったことになる。トランプ大統領は「米軍による革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害に対するイランの報復攻撃で米国人の死傷者は出なかった。必ずしも軍事力を行使する必要はない」とコメント。「危機打開に向けた姿勢をにじませたことを好感」との解釈だ。もっともイラクのバグダッドでの爆発報道を受けて終盤に上昇幅を縮小した。
S&P50はザラバの史上最高値を更新。NASDAQはザラバと終値ベースの史上最高値を更新。12月のADP全米雇用レポートで民間部門雇用者数は20万2000人増。「市場は当初、事態の悪化を懸念していた。
 
しかしトランプ大統領の発言は市場に大きな安心感をもたらした。全ては解決していないが米イランが直接衝突するリスクは低下したと考える」との見方。安全資産の円やスイスフランは売られドル円は109円台前半と約1週間ぶりの水準。
 
日経平均株価は535円高の23739円と大幅反発。米国とイランの対立激化への懸念が後退。昨年末の終値(23656円62銭)を上回り安堵を埋め年初からの下落分を帳消しにした。ドル円相場が1ドル109円台で推移したことやアジア株が軒並み上昇したのも追い風。上昇幅は後場に一時560円を超えた場面もあった。
東証1部の売買代金は2兆1476億円。年初以降4日連続で2兆円の節目を上回った。スクリン、東エレが上昇。国際帝石、出光興産が下落。
 
27日(金):
NY株式市場で主要株価3指数は市場最高値を更新。NYダウは29000ドルにあと一息まで迫った。「イランがイラクの米軍駐留基地にロケット弾を発射したことに対しさらなる軍事行動を望まない」というトランプ大統領の姿勢を好感。イラン外相も司令官殺害を受けた対応を「完了」したとしている。アップルが2.1%上昇し全体をけん引。
同社のiPhoneの中国販売が昨年12月に前年同月比18%超増加。ジェフリーズが目標株価を引き上げたことも支援材料になった。トランプ大統領は「米中の第2段階の通商合意に向けた交渉は間もなく始まる。
 
しかし今年11月の大統領選が終わるまで妥結を見送ることもあり得る」とコメントしたが市場への影響は限定的だった。欧州では英FTが続伸、独DAXが3日続伸、仏CACが続伸で史上最高値を更新した。
 
大引の日経平均株価は110円高の23850円と今年初の続伸。オプションSQ値23857円19銭には終値ベースで届かなかった。
東証1部の売買代金は2兆1678億円。ソニー、ファナックが上昇。ソニーは5日続伸で一時2000年9月29日以来の時価総額10兆円乗せ。ファーストリテ、トヨタが下落。週末の米雇用統計への楽観が勝った格好だろうか。
 
(2) 欧米動向
 
35回目の「バイロン・ウィーン氏のびっくり予想」
 
ブラックストーン・グループ副会長の知られるバイロン・ウィーン氏の年初恒例の「びっくり10大予想」2020年版。
主な予想は以下の通り。
(1)「S&P500株価指数は20年中に3500ポイント超に上昇するが、5%を超える調整局面に度々見舞われる」
(2)「米景気は市場予想よりは弱いが後退はしない。FRBは政策金利を1%まで下げる」
(3)「需給の緩みから米10年物国債利回りは2.5%近辺まで上昇する」
(4)「米中貿易交渉で中国による知的財産権侵害を抑制する第2段階の包括的な合意はない」
(5)「米議会選挙で民主党が上院の議席の過半数を取る」
(6)「原油価格が1バレル70ドルを超える水準に上昇する」
(7)「英国が有利なブレグジットに成功し、英株高とポンド高を招く」
(8)「ハイテク大手に対する政治的、社会的な風当たりが強まりFAANG(フェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)は相場全体に劣後する」
(9)「ボーイングの小型機『737MAX』の出荷が再開され、同社株が相場のけん引役となる」
(10)「主要企業が開発を取りやめ、自動運転の実現が先送りになる」
 
(3)アジア・新興国動向
 
世界銀行の経済見通しは下方修正。
2020年の世界全体の成長率予測は2.5%。
昨年6月時点の2.7%から引き下げた。
2019年の成長率予測も0.2%ポイント引き下げ2.4%。
10年前の金融危機以降で最も低い成長率となる。
経済見通しは米中通商交渉のいわゆる「第1段階」合意を考慮に入れているという。
世界貿易の伸び率19年は1.4%と金融危機以降で最低となったとみられる。
20年には1.9%に改善するとの見通し。
先進国(米国、ユーロ圏、日本)全体の成長率は20年に1.4%と19年の1.6%から鈍化すると予想。
両年とも従来予想から0.1%ポイント下方修正した。
一方、新興国の成長率は20年に4.3%と19年の4.1%から加速する見通し。
アルゼンチンとイランは20年にリセッション(景気後退)を脱却する見通し。
ブラジル、インド、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、トルコも19年の減速から回復するとの見通し。 
 
【展望】
 
スケジュールを見てみると・・・
 
13日(月):成人の日で休場、米財政収支
14日(火):国際収支、景気ウォッチャー調査、米消費者物価、ウィンドウズ7の延長サポート終了、株高の特異日
15日(水):マネーストック、工作機械受注、自動運転EXPO(ビッグサイト)、米生産者物価、NY連銀製造業景況感、ベージュブック
16日(木):機械受注、国内企業物価指数、米輸出入物価、小売売上高、企業在庫、対米証券投資、フィラデルフィア連銀製造業景況感
17日(金):第三次産業活動指数、米鉱工業生産、住宅着工件数、ミシガン大学消費者信頼感、変化日
 
1950年以降、米大統領選があったのが17回。
そのうち12回は日経平均が年間上昇。
NYダウは同17回中、13回上昇。
1950年以降の米大統領選で共和党候補が勝利した年の日経平均は10回中9回上昇。
一方で民主党候補が勝利した場合の上昇は7回中3回。
また大統領選で政党が変わると、選挙の年と翌年の株価の騰落が逆転するケースが多いという。
 
日銀の生活意識アンケート。
消費増税後に支出を控えたとの回答は全体の33%。
前回2014年の消費増税後の調査では60%だった。
「キャッシュレス決済のポイント還元や軽減税率が背景」との解釈。
そして「消費行動を大きく変えていない個人が多い実態」とも。
迎合論なのか、実態なのかは不明だが・・・。
「消費増税が足かせ」なんて嘆く業界関係者もいる。
しかし過去は変えようがない。
野党ではないのだから「こうすれば良くなる」という未来への指針を持って欲しいものだ。
いつも「いやいやえん」では市場は見放されてしまうかも知れない。
「消費増税後数か月で日経平均は年初来高値を更新した」というのが現実。
むしろ政策の問題ではなく「買いたいものがない」という見方も否定はできないだろう。


(兜町カタリスト 櫻井英明)
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